【解説】「103万円の壁」撤廃とは? メリットやデメリットも 市民の受け止めは《長崎》
先日の衆議院選挙では、国民民主党が、103万円の「壁」の撤廃、引き上げを公約に掲げて戦い、躍進しました。
これを受けて、自民・公明でも見直しに向けた議論が始まっています。
「103万円の壁」とは何なのか。
年収がこの「103万円」を超えると税金が課されるというものです。
例えば、親子のケースでは…
子どもが学生で、アルバイトしていて、その収入が年間103万円以下だと、この所得に対する税金はかからず、親も扶養控除を受けられます。
しかし、アルバイトの収入が103万円を超えると、自分で所得税を払うことになり、
親も、子どもが扶養家族ではなくなるので扶養控除が受けられず、税負担は上がります。
世帯としての年収は減ってしまうため、「103万円の壁」を超えたくないアルバイトなどは、働くのを年末を前にストップする人も多いようです。
(学生)
「私は103万ギリギリ。(親に)超えないでねと言われる。働く量を店長に言って調整してもらっている」
(学生)
「103万円超えてしまうと(税金で)引かれる分も大きいので超えないようには意識している」
(学生)
「(年収は)今110万円くらい。親に連絡して親の税金も変わるので相談している」
( 精肉店)
「税金がかからないように103万円いかないように働く、うちのパートは。だからきょうも休んでいる」
(美容室)
「入ってもらいたいときに入ってもらえないことが出てくるので困る部分はある。そういう部分では(引き上げは)店側も助かる」
長崎でも多くの人が影響を受けている「103万円の壁」。
この年収103万円という上限は実は、30年前から変わっていません。
当時の最低賃金は県内で「554円」でしたが、現在は「953円」でおよそ1.7倍になっています。
その分、「壁」も引き上げるべきだということで、国民民主党は「103万円」を「178万円」に上げるべきだと主張しています。
今まで「壁」を気にしていた人たちが働けるようになり収入が上がります。お店にとっても人を確保できるようになります。
しかし、デメリットも。
現在、議論になっているのが「壁」を引き上げると自治体の税収が減るということ。
大石知事は22日の記者会見で、国民民主党の主張通り178万円まで引き上げた場合、およそ240億円の減収が見込まれると明らかにし、地方財政に影響が出ないよう、丁寧な議論を求めました。
国全体では、毎年7.6兆円を超える税収減が見込まれていて、自治体の予算が少なくなれば市民サービスへの影響が出てくる可能性もあります。
街の声は
(学生)
「自分が使いたいだけお金を稼げるようになるからありがたい」
「家賃とかも全部自分で払っているので(引き上げで)余裕が出るならうれしい」
(40代会社員)
「自分も昔103万円以内で働いていたので負担も無くなりながら手取りが増えるメリットはある」
(40代会社員)
「103万円の壁を取り払って税収が減ると言っているけど(行政が)節約するところもあるのでは」
自民党・公明党は103万円の壁の見直しを含めた来年度の税制改正の議論を始めています。
今年は国民民主党も加わることになっていて、「壁」をどれくらいまで引き上げるのかなどの面で協議は難航することも予想されていますが、例年通り来月中旬の取りまとめを目指しているということです。
また、石破総理は29日、国会で行う所信表明演説で「年収103万円の壁の引き上げ」について述べる見通しです。