【注目】長年愛されるご当地パン その地で愛され、さまざまな人の思いによって広がりを見せる 鳥取県・島根県
子どもから大人まで幅広い世代に愛される「ご当地パン」。山陰を代表する人気パンは、ファンの手で新たな広がりを見せています。今年3月には一度販売が終了した境港のご当地パン『ブドーパン』が2年ぶりに復活し、長蛇の列を作りました。
そんな山陰を代表するご当地パンの数々。今、改めて注目されているんです。
■鳥取のご当地パンといえば?
Q.鳥取を代表するご当地パンといえば?
街の人
「亀井堂のパン。食べてました!」
「お父さんめっちゃ食べます。学食で売られてました」
「亀井堂の・・・あんこが入ってる揚げたパン、マイフライ!」
名前が多く挙がったのが、亀井堂の「マイフライ」。亀井堂は1903年に創業し、今年で121年目を迎える、老舗パンメーカー。いちごジャムやピーナッツクリームが入ったサンドイッチ、食パンにこしあんをたっぷり挟んであげた「マイフライ」は、小さな子どもから大人まで愛されるロングセラー商品です。
■マイフライはライダーの義務?
そんなマイフライ、ライダーの聖地と呼ばれる鳥取県八頭町の道の駅はっとうにも沢山並んでいました。そこには、『ライダーの義務』という文字が。このポップを描いたのは 道の駅・副駅長の山村さん。
道の駅はっとう 山村俊太 副駅長
「バイク乗りにとっては良い栄養補給かなと思いますし、持ち歩きにも大変便利、おなかも満たせるということで、形も崩れにくいので運びやすい.。ライダーの方におすすめ、ということで『ライダーの義務』とさせてもらったら、皆さんもそのように楽しんでもらっています」
〝マイフライはライダーの義務〟
その言葉の通り、取材中にも次々とライダーたちがマイフライを買って行く姿が見られました。
ライダー
「よく買ってます。数えきれないぐらい」
「マイフライ、この道の駅に来るたびに買って行ってますね。県外のライダーさんも結構お土産として持って帰ることが多いので、『ライダーの義務』で正解なのかな」
こちらの道の駅には、ライダーが多く立ち寄るため手軽に食べられる軽食を提供できないかと考え、2019年から販売を開始したといいます。当時500個だった年間販売個数は、販売開始から3年たった今、約8倍の4000個に。
更にー。
道の駅はっとう 山村俊太 副駅長
「マイフライ、フライ、フライデー・・・みたいな発想からTwitter(X)とかで『#マイフライデー』というのを作ったら、皆さんノってきてくださる方が多くて、金曜日はマイフライを買いに来るという謎のブームが出来上がりまして」
『金曜日はマイフライデー』というハッシュタグを作り、マイフライの魅力を発信。それを見たライダーたちが自分の愛車などの前でマイフライの写真を撮り、SNSに投稿するプチブームが起こっているんです。この盛り上がりに、亀井堂の社長は・・・。
亀井堂 地原忠実 社長
「ライダーさんがマイフライで盛り上がっていただきまして想定外です。言い方は変ですけど、本当にうれしい悲鳴を上げております。どんどん盛り上がっていただいて、どんどん注文が来ればありがたいと思います」
亀井堂から飛び立ち、あっという間にライダーの心をつかんだ「マイフライ」。道の駅はっとうの山村副駅長はこれからもマイフライを盛り上げてさらなる『飛躍』を狙うといいます。
■島根のご当地パンといえば?
続いて、島根のご当地パンといえばなんでしょう。街の人に聞きました。
街の人
「バラパンとかコンビニとかでもすぐ買えるので。美味しいですよ」
「バラパンは学生の時におやつに食べた。授業疲れてたので、その時にバーッて食べたりだとか」
美しいバラの花びらの形をした「バラパン」。1949年に出雲市に設立した「なんぽうパン」の看板商品として、世代を超えて愛され続けています。当時の花好きだった職人が通勤途中にバラの花を見かけ、パンに落とし込んでできたのが特徴的なこの形。
その作り方を特別に見せてもらうことに。クリームをのせて素早く手でくるくるっとまくと可憐なバラの花の形をした「バラパン」が完成です。一つを巻くのにかかる時間は・・・なんと3秒。目にもとまらぬ職人技です。
職人
「コツはやっているうちに覚えていくしかないので、とにかくつまらないように柔らかく」
「多い時で一日5000個作りますので」
なんぽうパン 営業部部長 森山英一さん
「やっぱりこのまま味は変えずに、ずっと100年先まで、ずっと続くように心を込めて作るようには心掛けております」
そんな出雲市を代表するソウルフード・バラパンをこよなく愛し、PRを続ける喫茶店があります。取材班がやってきたのは『ふじひろ珈琲』。店長の伊藤さんは、なんぽうパンからバラパンの生地を直接買い付け、イチゴクリームやたまごペーストなどオリジナルのクリームを乗せて作る『バラパンセット』を提供しています。
雲の名所・日御碕灯台をイメージし、オレンジ色のカボチャクリームを使用した夕日バラパンもここでしか食べられないメニューの一つです。
伊藤さんがバラパンを喫茶店で提供し始めたのには、ある理由がありました。
ふじひろ珈琲 伊藤博人さん
「東日本の震災があって、何か私たちにできないかなと思いがあって、(バラパンメニューの)売り上げの一部を我々の被災地支援活動資金にできないかなと思いましてはじめました」
出雲のバラパンで被災地を元気づけたい。そんな思いから売り上げの一部を被災地支援に充て、伊藤さん自身もバラパンを持って被災地を訪れたといいます。
ふじひろ珈琲 伊藤博人さん
「まだ保育園や幼稚園の方もいらしゃった。その子がパッと(バラパンを)見て、『え、これなに!」』ってものすごく物珍しそうに見ていただいて、食べて『美味しい!』って言っていただいたのが、こっちとしては持ってきてよかったな、食べていただいてよかったなと思いがすごくあって、これは続けていかなければいけないなとすごく思いました」
バラパンを通してつながった常連客30人と共に、片道18時間の距離を運転して東北に向かった伊藤さん。更に、今年1月に発生した能登半島地震の被災者を支援するために何かできないかと、今年3月には喫茶店でチャリティーコンサートを開催しました。入場料を無料にし、バラパンセットの売り上げとお客さんからの募金の全額を日本赤十字社に送りました。
長年にわたり被災地支援を続ける伊藤さんには、ある願いがー。
ふじひろ珈琲 伊藤博人さん
「やっぱり持っていくことによって、自分たちが元気になったら出雲に寄ってバラパンでも食べてみようかなと思ってほしい。出来るだけ、これからも続けていこうかなと」
昔から愛されるご当地パン。香ばしい香りの向こうにはさまざまな笑顔がありました。ご当地パンを食べて育った人々によって、その輪は広がり続けています。