「漁師は死んでしまうわい」しまなみ海道開通から25年…島にもたらした恩恵と避けて通れない切実な問題
先日開通25年を迎えたしまなみ海道。県内の観光や物流業界に大きな恩恵をもたらした一方、島に暮らす人にとって避けては通れない切実な問題もあります。次の25年へ、夢の懸け橋の未来は…?
最大10連休となった今年のGW。しまなみ海道沿いの今治市伯方島、道の駅・伯方S・Cパークは、大勢の観光客で賑わっていました。
いまから25年前の、1999年。愛媛と本州をつなぐ3番目のルートとして「しまなみ海道」が開通しました。
1975年の大三島橋起工以来、半世紀以上を費やしようやく完成した、“夢の懸け橋”。
橋の上や島内では大渋滞が発生し…道後温泉をはじめとした県内の観光スポットに大行列ができるなど、愛媛が“しまなみブーム”に沸きました!
今では世界中の人が訪れる愛媛を代表する観光スポットとなった、しまなみ海道。2年に1度開催される国際サイクリング大会の経済効果は、9億円といわれています。
大三島の住民:
「ものすごく強烈に役に立っています。間違いないです」
大島の住民:
「自分が思う市場に、直接車で行けるようになった」
島に恩恵をもたらした、夢の懸け橋。
しかし、その一方で…
宗方の住民:
「大三島の表玄関だったのが、裏になってしまった」
大三島の住民:
「北地域だったらすぐインターにのれるしバスにも乗れるし非常に便利がいい。この地域(宗方)はフェリー便も船便も減った」
今治市内と島しょ部を結ぶ航路はしまなみ海道の開通前と比べ、およそ6割に減少。穏やかな海を小さなフェリーが行き交う、慣れ親しんだ光景もずいぶん減ったといいます。
大三島の住民:
「車で走るのは高齢になったら危ない。だからできるだけ避ける。そうするとやっぱり船便がいいんですよ」
そして開通以来、島民の負担となっているのが…通行料です。
橋の建設費によって、一般的な高速道路と比べ割高に設定されている、しまなみ海道の通行料。県は広島県などと連携して、ETC車に限って通行料を引き下げる暫定措置をとっていますが…
県漁業協同組合宮窪支所 関洋二運営委員長:
「(通行料が)これ以上高くなったら、漁師は死んでしまうわい。ここらの若い子らはみんな街に出ていくんやない」
宮窪町の漁師、関さんです。
橋の開通によって販路が一気に拡大したといいますが、通行料金分が上乗せる分、魚の価格は上昇。ここ数年はコロナ禍も重なり、魚の売れ行きは芳しくないといいます。
関さん:
「魚がちょっとしか獲れなかった時に橋代を計算していたら、魚を捨てるといったらもったいないけど…捨てる方がマシ」
県内でも指折りの品質を誇る、来島海峡育ちの鯛。
関さん:
「なんとか漁師さんに100円でも200円でも高値で買えるよう、東京がなんでも中心やから東京しかないと思って」
漁協では去年1月、最大18キロ、10ノットの潮流にもまれて育った、宮窪一帯で水揚げされたタイを「10kt真鯛」と名付けブランド化。
豊洲市場や東京の百貨店が運営するスーパーに出荷するなど、首都圏での知名度アップを図っています。
先月には大手回転寿司チェーン、「くら寿司」とのコラボ販売も実現するなど、橋を活用した新たな販路開拓に活路を見出そうとしています。
くら寿司 天然魚バイヤー 大濱喬王さん:
「ブランド名が消費者に非常にキャッチー。魚だから身が引き締まっておいしいという印象につながると思う。一度手にとっていただきやすい商品ではないかと思います」
関さん:
「いろんな魚をこれから使ってもらいたいです」
観光の目玉と、暮らしを支えるインフラの両立。
今治市では先月、しまなみ海道の通行料負担軽減と利用促進の拡充を目指し、推進会議を設置しました。
今治市 地域振興課 越智良和課長:
「住民のみなさんの声もお伺いしながら、これまで実施してきた取り組みの総点検に加えて、分野を広げた新しい取り組みの検討を市役所全体で行っていきます」
妊婦の検診や子どもの救急医療などに対し、通行料を補助している今治市。
一方で、高齢者や市内に通う島の高校生など、誰もが受けられる補助制度はないといいます。
橋の開通で大きく変わった沿線の風景。次の25年、しまなみ海道が向かう未来には、どんな景色が広がっているのでしょうか。