「私だって好きでこうなったわけじゃない」社会の中で自分らしく生きていくために…100人に1人がかかる“統合失調症”のリアル
“統合失調症”。100人に1人がかかるといわれている身近な病気です。精神障害を抱える人が社会の中で働き、生活し、自分らしく生きていくための“居場所”とは…
社会の見えないところで苦しんでいる人たちがいます。幻覚や幻聴がある統合失調症の人たちです。
厚生労働省のデータによると、国内の患者数はおよそ80万人。100人に1人がかかる身近な病気です。
愛媛大学医学部 精神科学講座 伊賀淳一准教授:
「統合失調症というのは、精神疾患の中でもごくありふれた病気でして、100人に1人が発症すると言われてます。本当に他人事ではない、誰がかかってもおかしくない、そういうのが統合失調症の特徴になります」
松山市畑寺にある障害者多機能型事業所「きらりの森」。
ここには統合失調症などの精神障害のある、およそ50人が通っています。
きらりの森は、就労継続支援B型の事業所として、カフェやパティスリーの運営やお弁当の製造などを行っています。
ゆかさん:
「ゆかです40歳です。統合失調症です。幻聴があります。幻聴と妄想がありました。早くに母親を亡くしたので、母の所に行きたいとか特に強く思ってしまって。こういう人のご縁に恵まれて、だいぶ母の死に対しても受け入れられるようになって、前向きにきらりの森さんに通って前向きに明るくなっていって、スタッフさんとか周りの人のおかげで今の私があります」
ゆかさんは、「一人暮らしをしたい」「仕事をしたい」など、将来の目標を実現するため苦手なことへの解決方法を学ぶ「生活訓練」に通っています。
この日は、“コミュニケーション”について考えます。
ゆかさん:
「自分がされて嫌なことはせんようにせんといかん」
生活訓練を担当するスタッフで、精神保健福祉士の津野朱音さん。
津野朱音さん:
「料理が出来るようになりたいとかお風呂入れるようになりたいとか、人と仲良く過ごせるようになりたいとか、B型に行きたいなと思いつつちょっとまだ働く自信がないなとか、いろんな目標を持たれた方と一緒に、それが出来るように一緒に練習していく場所」
「私は家族が少し精神的にちょっとしんどい方がいて、その方は鬱だったりで家ではバターンって感じなんですけど。きらりの森に来て、自分の家族と同じ病気抱えてるのにすごい皆さん生き生きされてるじゃないですか。やっぱりそれは支援する場所だったり、自分自身が自分らしくいられる場所。そういう部分で活躍されてるなという所を見て、私もお手伝いが出来たらいいなと思って働かせてもらっています」
きらりの森の厨房でお弁当作りの仕事をしているサボテンさん、43歳。
サボテンさん(仮名):
「僕が統合失調症を発症したのは19、20歳の頃で、どんな症状かというと、頭の中に管やロープのような物が絡まりついて、それがきつく締まったり脳がしびれたりするような「幻触」がある」
「(統合失調症への)偏見は僕にもあったから言えないんですけど、当事者になってみると(周りは)冷たいな」
一日に作るお弁当の数は50個ほど。お弁当は、注文があった施設や個人宅に配達されます。
渡部孝三さん62歳:
「渡部孝三といいます62歳です。一応診断はうつ病となってます。一般の人とは軋轢というか、溝が出来るというかありますよね。難しいとこありますよね。ひとつはやっぱり家を借りる時に男で独り、さらに精神の病気ということで『ちょっと遠慮させて下さい』と断られたことが大分あった」
パティスリーで働く紙川さんはベテランのパティシエです。
「私の名前は紙川多起夫といいます。年齢は52歳です。病名は統合失調症です。幻聴がまずはひどい。20年位ですかね20年以上か。人からなんかちょっと言われているような感じ。一般の就職もしたことあるんですけどね。ちょっと人間関係のことで。周りからちょっと(病気のことを)色々言われて(辞めた)」
3月下旬、この日、きらりの森にとって特別なイベントが開かれました。
きらりの森スタッフ 鈴木有香さん:
「今日はレガーレマーケットといって地域の方が(精神障害者と)繋がれるような機会を持つためのバザー」
鈴木さん:
「精神障害に理解がまだまだないと思ってて。地域の方と交流する場を持てることで知ってもらうこと。精神障害って誰でもなる可能性のある病気やと思っているので。少しでも知ってもらうことで障害を持っている方が過ごしやすくなったり、支える側も何か出来るんじゃないかというきっかけが作れたらいいかなと思ってます」
統合失調の方の言葉のひとつです。
「私だって好きでこうなったわけじゃない」
「きっかけは、ささいなタイミング」
「生きて 生きて 生きていく」
「これからもずっと生きていく」
「どうしてこうなったんだろう」
「私が悪かったのか」
「どうして なんで」
ただ病気にかかってしまっただけ。病気はその人の全てではないはず。
津野さん:
「障害のある〇〇さんというよりかは、〇〇さんという人がいて、その人は例えば調理が上手かったりとかダジャレが好きとか、何かしらしんどさを抱えているその人ぐらいの気持ちでおろうかなとは思ったりしております。障害が全部じゃないですからね」