開通50周年の「JR予土線」利用客減少で存続の危機…“路線存続”を願う沿線住民の声
先日、開通50周年を迎えたJR予土線。長年地域の暮らしを支え続ける一方で、利用客の減少により、存続の危機に立たされています。
「予土線でしか味わえない青春を」
路線存続を願う、沿線の声を取材しました。
今月開かれた、予土線の全線開通50周年を記念した感謝祭。
予土線利用促進対策協議会 坂本浩会長:
「この長い歴史の中で予土線は人や物を運んだだけでなく、我々の生活や文化も支えてくれております」
利用者は年々減少…1日の平均乗車数は2021年過去最低に
いまから50年前の1974年。北宇和島駅から高知県・若井駅までのおよそ76キロの区間で、全線が開通したJR予土線。以来半世紀に渡って、沿線に暮らす人たちの暮らしを支え続けてきました。
しかし、交通網の整備や生活様式の変化などが重なり、利用者は年々減少。3年前には1日平均で何人輸送したかを示す「輸送密度」が195人と、民営化以降最低に。
JR四国の西牧 世博社長は去年、予土線を含む管内の3路線・4線区の存廃に向けた議論を周辺の自治体と議論する方針を表明したのです。
「予土線の中でしか味わえない青春を」高校生がメッセージ
宇和島市内の高校に予土線で通学する、松野町の井上弘一朗さん。友人の中尾さんと共に記念式典でメッセージを発表する大役を任されました。
中尾純蓮さん:
「わたしは汽車の中からみる広見川の景色が大好きです。宇和島から帰って来るときに広見川が見えると、やっぱり松野はいいところだなと思えるし安心します」
井上弘一朗さん:
「私たちはそれでも(予土線を)残していきたい、そう思っています。1番大切なのはこれから乗る後輩です。予土線の中でしか味わえない青春を楽しんで欲しい」
井上さん:
「片道50分あるのでその時間に勉強するんですよ。その時間に横に並んで教え合いながら勉強する姿もあるし」
独自の列車も運行 ファン獲得に向けて続ける取り組み
人気の観光列車「伊予灘ものがたり」で予土線を楽しむツアーが開かれたこの日。
午前8時の松丸駅には、宇和島から予土線に乗ってやってきたという2人の若者の姿がありました。
宇和島市から 男性2人:
「高知に行ったりとか四万十川の景色とか見たり、観光目的で行くことが多いですね。土佐大正(駅)とかの途中に鉄橋とかがあるんですけど、そこを渡る様子がきれいでとてもいいと思います」
共に鉄道ファンの2人。自前のカメラとマイクで予土線を走る「伊予灘ものがたり」の姿をおさめるのが目的です。
男性2人:
「もうスタンバイですそろそろ準備しとかないといつ来てもいいように」
「ホーム端で撮ろうかな」
「ああいいと思うよ」
2人が撮影した映像が、こちら!
「いいの撮れましたよ」
「新鮮ですやっぱ。なんか特別感があっていいですね」
予土線ではトロッコ列車やSLしまんと号、ホビートレインといった独自の列車を運行。ファン獲得に向けた取り組みを続けています。
お得な「フリーきっぷ」や「駅前マルシェ」は利用促進の一助となるか
この日松丸駅では、去年スタートした駅前マルシェも開かれました。
沿線に新たな賑わいをもたらし予土線の利用客増加に繋げようと、地域の人たちが主体となって催す月に一度のグルメイベント。
実行委員長を務める新改和也さんです。
新改さん:
「きょうが(参加)20店舗ですね 。第1回目のマルシェから来ていただいてるところも10店舗ぐらいあって、段々みなさんお客さんがついてわざわざ地鶏を食べに日本酒を飲むために予土線を利用したという人が結構いますね」
少しずつお客さんも増えてきたという、駅前マルシェ。
次回は3月10日(日)、お隣り・鬼北町の近永駅で開かれる予定です。
予土線を運行するJR四国でも、利用促進に向けた取り組みを開催中!2月からは、宇和島-窪川間が2300円で2日間乗り降り自由となる「しまんとグリーンラインフリーきっぷ」の販売を始めました。
これには予土線ヘビーユーザーの高校生・井上さんも…
「相当安いと思います。窪川まで行けるし何回も乗り降りできるのはすごくいいなと思います使ってみたいな」
住民に聞く!予土線沿線のおススメスポットは
みなさんに予土線沿線のおススメスポットを教えてもらいました。まずは井上さん!
「ぽっぽ温泉です。日本でもそんなに多くない駅の上に温泉がある」
駅を降りたら、すぐ温泉。松丸駅の2階にある癒しのスポット「ぽっぽ温泉」。肌に優しい弱アルカリ性の冷泉を薪で沸かすところもポイントです。
同じく高校生の中尾さん。
「松野に来たら甘味霧中KAZUっていうかき氷屋さんがあるんですけど」
イチオシは松丸駅から徒歩4分の「甘味霧中」のかき氷!
「友達と学校帰りにおいしいからって2人で行きました。メロンだったと思うんですけど食べた瞬間とろけてめっちゃおいしいです。ぜひ食べてほしいです」
駅前マルシェの責任者、新改さんはちょっと大人な楽しみ方。
「鮎、ウナギ(季節限定)もあるのでそれだけで終わらずついつい地酒に手を出してしまうというのは魅力かとおもいます」
高知の江川崎駅にほど近い、道の駅「よって西土佐」で味わう、四万十の幸。
香ばしく焼いたアユとウナギ…地酒と味わった後は、予土線に乗って帰ってくるというプランです。
たくさんの思いを乗せて50年。先月、存続に向けて活動する「JR予土線圏域の明日を考える会」の総合アドバイザー、隈研吾さんが宇和島市を訪問。沿線自治体のトップと会談し、官民一体で予土線を盛り立てていく方針を確認しました。
利用客数の向上、そして路線の存続へ。節目を迎えた予土線は、未来に向けて走り出します。