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【特別トーク】愛媛県・中村知事が語る「ゆく年くる年」きりたんぽ&じゃこ天を囲んで

2023年12月30日 19:53
【特別トーク】愛媛県・中村知事が語る「ゆく年くる年」きりたんぽ&じゃこ天を囲んで
愛媛県・中村時広知事

グツグツと煮立ったきりたんぽ鍋とじゃこ天。

だしの香りが立ち込める道後プリンスホテルの一室で、愛媛県・中村時広知事に2023年の回顧と2024年の展望を聞いた。

初公開となる“じゃこ天騒動”の裏話から県産品の国内外へのトップセールスまで。愛媛の「ゆく年くる年」は。

「最初聞いた時は『ん!?』と思った」

-きりたんぽとじゃこ天の鍋は初めて?
「いや、実はあの騒動の後、一回家でやってみたんですよ。そしたら思ったよりも美味かった(笑)。きりたんぽはお米だから満足感もあるんですね」

-率直に「じゃこ天」騒動を振り返って
「初めて佐竹知事(秋田県)の『貧乏くさい』という発言を聞いたときは、『ん!?』という思いは当然あった。『何を!?』『何だと!?』みたいな(笑)。でも、佐竹知事は以前は秋田市長だった。僕も松山市長でその時から面識もあって、とてもいい人なんですよ。とても悪気はないんですね。発言後にすぐ電話したんですけど、佐竹さんは『すまん、すまん』と謝ってばかりで。『もう気にされんでください』と。そこから、お互いに宣伝してコラボしましょうっていうよう流れになった」

-佐竹知事と愛媛もゆかりがある
「家柄が本当にお殿様で、佐竹藩のお姫様は第9代宇和島藩主に嫁いでいるんですね。だから騒動後に佐竹さんにお会いしたときに、『佐竹さんのご先祖もまさにじゃこ天の産地・宇和島に嫁いでこられてて、本当にそういう意味では近い関係なんですよ』と。『歴史の記録上、じゃこ天が美味しくなかったという記述は残ってませんけど』って伝えておきましたよ」

-秋田からじゃこ天の注文も増加
「うれしいですよね。なんとなくギスギスした世の中じゃないですか。何があっても“大人の対応”というのが、意外な結果をもたらすと僕は思ってます。本当に、ウィンウィンになってよかったなと思ってますね」

-愛媛の食が全国的に知られてない?
「愛媛県の最大の強みは柑橘。それから養殖業も全国一位です。愛媛は食材が豊富なので恵まれすぎているあまり、焦点が絞れないところもある。それくらい豊富。柑橘と養殖魚を前面に出しつつ、これもあれもって誘っていくという風な戦略を基本に置くのが一番いいのかなと。全国区になるポテンシャルを持つ食材はたくさんあります」

“柑橘王国”の野望inフランス

-知事自らフランスへ飛んだ
「5月に河内晩柑のEU向けの輸出、トップセールスのために2泊4日の強行スケジュールで行きました。エッフェル塔の前で写真を撮る暇もなく、朝5時から夜までぎっちりと仕事だらけ」

-なぜ河内晩柑をEUに?
「営業本部の職員が動き回った。①は、EU最大市場がフランスのランジス市場というところで、ここしかないんだろうと。市場の中に鉄道が走っているくらい巨大。ここをヨーロッパの拠点にしようと。②の何が好まれるか。実はフランスの最高峰のシェフの方を招いて、色んな柑橘を食べてもらった。その国によって好まれる味覚が違うんで。その中で『これだ!』と選ばれたのが河内晩柑だったんです。ただ、その時にシェフに言われたのが『名前が長すぎる』『ヨーロッパの人は覚えられない』と。それで考えたのが『misho』(ミショー)というネーミングだった」

-成果は
「マクロン大統領の盟友でランジス市場のトップ・ラヤニ氏と市場で面会できた。ラヤニ氏と雑談する中で柑橘以外の商談も取り付けて、養殖魚のテスト輸出も決まった。河内晩柑の販路拡大への道筋を作った」

-今年は西日本豪雨から5年
「ミカン園地の復旧は9割は来たかなと思います。5年から10年の長い期間かけて園地を新しくする再編復旧も、いよいよ植栽が始まる。ただ、植栽して数年はかかりますから、再開するときにはより作業のしやすい、そしてとびきりの“新品種”を生み出せるように結びつけていきたいです。絶対に前よりも良くなったと言われるような結果を残したい」

-「新品種」と言うと
「紅プリンセスですね。10年前に県職員に『さすがにもう、紅まどんなを超えるのはできないよね』って何気なく言ったら、『作ってみます』と火を付けてしまった。数年経って報告があって『いけそうです』と。 どんなもの?って聞いたら、紅まどんなと甘平の子どもですと。『すごい!よくやった』って。それが南予の園地にいっぱい実ると復興の象徴になりますね」

「オランウータンの奥さんを探してる」

-“とべもり”エリアに新たな動き
「これまでは、とべ動物園や県の運動公園、こどもの城が同じエリアにあるけどもバラバラだった。そこで『とべもりエリア』として一つにした。西日本最大級のジップラインは県庁職員のアイデアです。そして、ここでしか食べられないスイーツとかあったらいいねって話になって、鎧塚俊彦さん監修の新たなスイーツも生まれた」

-公約で「とべもり」をアートの森にしたいと
「広大な空間をどう活用するか。生まれたのが子ども芸術祭。本当に面白い作品がいっぱいで。ここから先、プロフェッショナルなアイデアが欲しいので、東京藝術大学と協定を結びました。とべもりエリアのアートを使った空間への道筋を、藝大の学生が考えてくれることになっているのでどんどん広げたい」

-とべもりエリアは自然が豊富
「エリアにふさわしい取り組みとして、ゼロカーボンエリアを構想している。5、6年はかかると思うんですけど、全てのエネルギーを自然エネルギーで賄う環境問題を考える象徴的なゾーンにしたい。そしてこのタイミングで、全国植樹祭の誘致に成功した。令和8年に天皇・皇后両陛下をお招きして『とべもり』で植樹をしていただく。最高のシチュエーションです」

-とべ動物園の展望は
「僕が勝手に動き回っているのが実は人気者のオランウータンのこと。この子はインドネシアから北海道の動物園がレンタルで借りて、ちょっと手に負えなくなったのでとべ動物園が預かることになった。とても可愛いんですよ。結婚適齢期で『種の保存』のためにも奥さんを探そうとしています」

-知事が奥さん探しを
「今年の1月にインドネシアをビジネス交流で訪問した。たまたま動物を管理する副大臣と会う機会があったので『オランウータンの奥さんが欲しい』って言ったら『法律的な問題もあって…』と言ってきた。『なに!?』と。『そもそもあなたの国から“子孫を作ってほしい”と言われて日本がレンタルした経緯がある。あなたたちに責任があるんですよ!』って言ったんです。予定を1時間を超えて議論しました。すると副大臣も本気になってくれて。今必死になってお嫁さん探しと法律問題のクリアをやってもらっています」

国際線拡充で世界へ「ダイレクトに」

-松山空港の国際線が本格始動
「LCCの登場で業界の様相も変わってきた。地方空港からダイレクトにつながる路線が増えてきた。早く、安くつながると、交流人口や観光客を増やせるだけでなくビジネスチャンスも拡大する。これからの世の中はより一層、国際化が済むと思うんです。特に学生や若者、彼らの時代にはもっともっと国際競争していかないと いけない時代になる。地方でもそれは同じ。異国、異文化、異言語を若い時期に一度でも体験しておくことは長い人生考えた時に必ずいい経験になると思う」

-来年3月には国際線ターミナルも改築
「国際線が増えるにはいいんだけども、松山空港の場合スポットの数が少ない。国に掛け合って力を借りてOKが取れたので一気にスポット増設となった。そしてその次も考えているのですが、国際線のカウンターと国内線のカウンターをセパレートします。さらに将来は第二期工事で、もう一棟ビルを新しく建てて完全セパレートというところまで描いておきたいなと思っています」

-インバウンド需要で街づくりが重要に
「県下の市長さんや町長さんには、空港から自分の街に引っ張り込む準備をぜひしてほしいとお願いしています。街づくりは市や町が主役ですから。例えば最近ですごいなと思ったのは 大洲ですね。大洲が生き残りをかけて、お城の宿泊や町並みの整備を民間の力でやっている。大洲が世界から注目されているように、ビジョン、プランを作るということが大事だと思います」

-人口減少対策も喫緊の課題
「そう簡単に出口は見つからない。考えられることはどんどんやるしかない。目標がはっきりしていれば効果は出始めるんだなと思ったのが、『移住施策』です。6年前は256人になった愛媛への移住者が去年は7200人まで増えた。県庁職員言ってるのは、『次は8500人だ』と(笑)」

-人手不足、働き手の確保を海外に
「いよいよ世界最大人口・インドにチャレンジします。県内企業もインドでのビジネスにすごく関心がある。経済成長を考えると放置できない。ところがインドは東南アジアの感覚とは全く違った国です。私も商社時代にインドで一杯地にまみれたことがあり本当に難しい。インドをよく知っている人に知恵を借りて開拓してもらい、インドの南、チェンナイをターゲットに考えています。交流派遣、技能実習生等々を含めた駆け橋ができないかなと」

-2024年はどういう年に
「100項目を超える公約を皆さんにお約束しました。それを実施に移すというのが最大の責任。県庁の職員にも、公約をしっかり受け止めてほしいと。この公約の中でどういう政策にしたら実現できるか、それを実現するための工程、目標設定を強く浸透させて、責任を持って事業を展開する体質強化に結びつける最初の年なんです。来年の予算編成はすごく大事だと思っています」