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松山-大阪間が1時間38分に!「四国新幹線」で未来はどう変わる?実現の先にある“光と影”

2023年9月30日 8:30
松山-大阪間が1時間38分に!「四国新幹線」で未来はどう変わる?実現の先にある“光と影”
9月23日に開業1周年を迎えた「西九州新幹線」

1964年に東京・新大阪間が開業してから59年。去年9月には西九州新幹線が開業するなど、新幹線網は今なお拡大を続けています。

日本で唯一の「新幹線空白地帯」である四国。四国に、愛媛に‟新幹線のある風景”は実現するのか?

中村知事:
「収益事業たる新幹線が四国になければ、鉄道そのものが四国中から消え失せてしまうことも、将来あり得るんじゃないかと危惧をしている」

再開発すすむJR松山駅 線路の「高架化」工事は終盤へ

県中予地方局 鉄道高架課 藤田賢課長:
「足元に注意してください」
和氣アナ:
「すごい。うわあ、これ奥に見えているのが?」
藤田さん:
「奥に見えているのが、あれがホームになる。高架橋本体はもうできていて、高架橋本体に今、レールを敷設する工事をしている」

地上およそ9メートル。現在、建設が進む新しいJR松山駅のプラットホームです。

「JR松山駅付近連続立体交差事業」の中核、駅を中心に全長2.4キロの区間を高架にする工事が、最終段階に近づいていました。

藤田さん:
「初めて。この状態で(取材に)入ったのは」

和氣アナ:
「うわあ、こんな景色になるんだ」
藤田さん:
「ホームを覆う屋根を付けていくが、まずこっちの1番線2番線側のホームで支柱が2本ほど建っていると思うが、今月(9月)に入って、屋根の工事に入っているところ」

県都・松山の陸の玄関口が、もう間もなく生まれ変わろうとしています。

藤田さん:
「来年の秋。秋の高架切り替えを考えていて、もうあと約1年というところまでこぎつけている状況」

四国新幹線の実現を目指し要望や啓発活動を行う、県新幹線導入促進期成同盟会の大澤彰宏事務局長です。

大澤さん:
「一番インパクトが強いのは東の電停の通りからこっちを見たときに、頭上というか地上を新幹線が通るっていうのが、インパクトとしては非常に強いのかな。ここが新幹線の駅になれば、例えば南予への移動とか、今松山市がやっている再開発とかも含めて、まちづくりとの相乗効果っていうのは一番効果があるのかなと。空港も近いし」

国の基本計画決定から50年…4県知事の足並みそろい「明らかに潮目が変わった年」

四国新幹線の構想は、今から50年前、1973年に国が「基本計画」路線と位置付けたことにさかのぼります。

しかし、具体的に着工へと動き出すことを意味する「整備新幹線」への格上げを県などが再三、国に要望するも景気の低迷などで足踏み状態に。

2000年頃になると、線路の幅に合わせて車軸の幅を変更することで、新幹線と在来線が行き来できる「フリーゲージトレイン」の導入を目指しますが、技術的なハードルが高く開発は縮小。

改めて、東海道新幹線や山陽新幹線などと同様、「フル規格」での導入を目指しています。

そんな中…

徳島県・後藤田知事:
「一刻の猶予もない」

これまで淡路島を通るルートを主張してきた徳島県が、瀬戸大橋を渡るルートを容認し、四国四県の足並みが揃ったのです。

中村知事:
「今年は、これまでも活動は続けてきたが、明らかに潮目が変わった年なのかなと」

14年後、2037年の開業を目指している四国新幹線。実現すれば、愛媛にどんな未来が待っているのか…

去年開業した「西九州新幹線」沿線で聞くメリット・デメリットは

和氣アナ:
「去年開業した西九州新幹線の出発駅、武雄温泉駅にやってきました。新しい駅舎とそして駅前広場も芝生が植えられているなどすごく綺麗になってますね」

9月23日に、開業からちょうど1周年を迎えた「西九州新幹線」。長崎から博多までのアクセスは1時間30分と、これまでに比べ30分短縮されました。

四国新幹線が開通すれば、松山から大阪までの所要時間は1時間38分。今と比べておよそ2時間短縮されるといいます。

宿泊客や移住者が増加 沿線への経済効果は年間1736億円に

訪れたのは停車駅のひとつ、武雄温泉駅にほど近い老舗の温泉宿です。

懐石宿 扇屋 山下裕輔社長:
「思った以上。絶大。新幹線効果。新幹線が開通する1年前(去年)からではなくて、その数年前から武雄温泉と長崎駅っていうのが非常に全国区で名前が出た。そこまで知られてない温泉地が全国区で、要するに耳にしたことがあるということで知名度が上がった」

コロナ前の2019年と比べても、宿泊客数が2割から3割増えているといいます。

山下社長:
「以前は市場がやはり福岡、隣の福岡県を中心とした西日本一帯までだった。遠くて大阪くらい。それが新幹線が通りますよという話で、首都圏を中心とした東日本まで伸びている。だからお客様が日本全国という形になっている。もう絶対(新幹線を)呼ばないとだめ。呼んで繋げないとだめ。繋げることによって市場が広がるわけだから」

次に訪れたのは、新幹線の開業効果を活かしたイベントの開催や移住促進を担う、武雄市役所の「ハブ都市・新幹線課」です。

武雄市 ハブ都市・新幹線課 金岩智子主幹:
「こっちの島は移住・定住の担当をしてる部署。こちらは地域おこし協力隊で移住のPVを作成してくれている」

地域おこし協力隊員:
「新幹線開業の後の武雄の魅力を発信していく役割として、YouTubeで発信している」

新幹線開業効果で武雄市に移住する人が増加。開業から10か月間の転入者が転出者を上回り、前の年に比べ大幅な「転入超過」に転じました。市では新幹線の定期券の半額補助も行っていて、長崎で働く人の移住も増えているといいます。

金岩さん:
「(以前は)公共交通機関を利用すると、大体1時間から1時間半くらいかかっていた。わずか30分ということで近くなった。武雄により近い長崎県内の方が移住されたりというのはいらっしゃるみたい。‟生活が変わってる”っていうのが目に見えた」

終着駅の長崎駅では11月に開業する新たな駅ビルの建設が進むなど、駅周辺の再開発が加速しています。

長崎市民:
「街の変わり具合。全然違う。だって多分(新幹線が)来なかったらこんな風に色んな…なんかすごいね。まちの活性化とかにすごくなるんじゃないかな」

九州経済調査協会によると、新幹線開業から1年間の沿線への経済効果は1736億円に上るといいます。

地元市民には不便なだけ?並行在来線の特急便数が激減 4割の企業が「仕事に影響」

しかし、メリットばかりではありません。

佐賀県鹿島市にあるJR長崎本線の肥前鹿島駅です。

鹿島市民:
「(特急が)減ったからずいぶん困るわっていう」

鹿島市民:
「全然いいことない。鹿島、こちら方向は。もう不便なだけ。どうなるんでしょうかね」

西九州新幹線に近いルートを走る「並行在来線」に位置付けられた長崎本線。新幹線が開通したことにより、肥前鹿島駅ではそれまで1日22往復から23往復あった博多方面行きの特急が、わずか7往復に。加えて、長崎方面の特急は経費削減のため電化設備が撤去されたことにより、ゼロとなりました。

タクシーの運転手:
「ちょっとね。新幹線が通ってからここは無人駅みたい」

市内のタクシー会社によると、駅前から利用する客の数は、新幹線開業前と比べ4分の1程度に減っているといいます。

タクシー運転手:
「もう盆正月、盆でもお客さんがいない。何もなかよ」

鹿島商工会議所では、新幹線開業の3か月後、市内の企業に、特急の減少が事業活動に及ぼす影響についてアンケート調査を行いました。回答のあった171の企業のうち4割が、出勤や出張などに「影響が出ている」と答えたのです。中には、非常勤の医師の出勤が間に合わなくなり、診療時間を変更したという病院も。

鹿島商工会議所 有森滋樹専務理事:
「(新幹線開業1年で)変わったと思う。本当はこんなことを言ったらいかんと思うが、元気がない、 なくなってきたのかな。今、佐賀県のほうで肥前鹿島駅周辺整備を行うという計画が上がっている。それに期待をしたい。鉄道を利用される方じゃなくて、わざわざ行ってみたいと思うような駅周辺整備をすると言っているので、そこで少し活気が戻れば」

必要か?それとも不必要か?住民自身が真剣に向き合う時が来ている

松山大学で地域社会学を研究する市川正彦教授は、新幹線導入による光と影に、我々一人一人が真剣に向き合う時が来ていると訴えます。

松山大学人文学部社会学科 市川正彦教授:
「作ったはいいけど赤字がずっと続いて、将来世代の負担になるっていうんだったら何のために作ったのか分からなくなってしまう。新幹線を作るにしろ作らないにしろ、どうしたらいいか住民自身が考えるということが必要。お任せにしないで」

50年の時を経て、新たな局面に入った四国の新幹線。

県新幹線導入促進期成同盟会 大澤彰宏事務局長:
「そこに人口以外の人流ができることによって、地方公共交通機関の活性化を図ることができるし。JR四国に新幹線というものがひとつできれば、新たな大きな収入源にはなる。何とか今の現状の交通機関というのをしっかり守っていきながら、新幹線のほうも早期実現を要望するということに努めたい」

必要か?それとも不必要か?四国新幹線について考えることは、愛媛に生きる子どもたちの未来を考えることなのかもしれません。

女性:
「(新幹線ができたら)47都道府県に行きます」

大阪から移住した夫婦:
「年行ったら運転できなくなるから、新幹線で大阪帰ったりする」

男性:
「赤字になるんじゃないか」

女性:
「過疎化するところも出てくるだろうし。今までの他の地域見ていると。どちらがいいとか私は言えない」

夫婦:
「(子どもたちが)新幹線に乗りたいって言うけど、なかなかそういう機会もないんで、子どもたちは喜ぶかな」