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【速報】松山城土砂崩れ 最終報告まとまる「緊急車両道路が斜面変形に影響与えた可能性も」技術検討委員会

2025年1月30日 10:47
【速報】松山城土砂崩れ 最終報告まとまる「緊急車両道路が斜面変形に影響与えた可能性も」技術検討委員会

去年7月12日に松山城の城山で発生した土砂崩れ。

「二度と同じような被害の発生を防止するため」に県が設置し、専門家や国、市などと発生メカニズムの解明を目指して分析を行ってきた技術検討委員会が30日、最終報告を取りまとめた。

それによると、大きなプロセスとして①「斜面変形」(クリープ的変形)、②「土砂流出」(斜面崩壊)、③「土砂流下」の過程を経て発生したと推定。7月12日にはあわせて3回の土砂の流下が起きたとしている。

土砂崩れの“前提条件”ともいえる①「斜面変形」の主たる誘因は「降雨」としつつも、江戸時代以降の軟質な「捨土(すてど)」や巨木をはじめとする「樹木の生長」、そして「緊急車両用道路」の「擁壁・盛土荷重」などが「個別もしくは複合的に影響を与えた可能性がある」と結論づけた。

その上で、松山市が整備した「緊急車両用道路」については、7月12日当日の土砂流出には「起点となるような直接の影響を与えた可能性は低い」としながらも、計算などの結果から「斜面変形に影響を与えた可能性がある」としている。

道路の擁壁・盛土で「安全率が低下」も

「緊急車両用道路」を整備した2015年以降、2017年から去年まで断続的に路面のクラック(亀裂・ひび割れ)や擁壁の傾倒が発生していることが確認されている。

報告書では、これらの現象は「道路施設の荷重による変形の可能性も考えられる」としつつも、「降雨を誘因」とする斜面変形が主たる要因であると考えるとした。

一方、「緊急車両用道路」の荷重が斜面変形に与えた影響を調べるために委員会が実施した試算によると、考え得る複数の条件下いずれにおいても、斜面や現場の安定性を示す「安全率」が「擁壁・盛土があることで低下」したという。

数値的には4.6%から7.9%程度の「安全率」の低下となるが、これが水の影響を受けた場合の安全率はさらに大きくなり、「満水位」という条件下で試算すると52%~57%減少するとしている。

斜面崩壊が起きた“2つの可能性”

斜面変形が進行した結果、7月12日午前3時40分頃、土砂流出(斜面崩壊)が発生し、麓の民家やマンションになだれ込んだ。広く捨土が分布する上流部に位置する35度以上の急傾斜部で、捨土が原形をとどめずに崩落した。

技術検討委員会では、この土砂流出の起点(発生位置)について2つの可能性に絞りんこんだという。

「可能性1」は、上流部の中段部または末端部から流出した土砂が、付近の巨木を巻き込みながら流下した可能性。

「可能性2」は、上流部の末端部で水が集中し、不安定化が進行した斜面で巨木の倒木が発生。崩壊が上方に向けて拡大した可能性である。

いずれも「緊急車両用道路」が直接的に影響した「可能性は低い」としている。

再発防止に向けて

技術検討委員会は、今後も松山城・城山が抱える課題として、①巨木の存在、②軟質な捨土、③降雨による水の流入の3点を挙げている。

その上で、今後新たに道路などを整備する際は、発生メカニズムを踏まえた設置計画や点検方法などに留意が求められるほか、土砂災害警戒区域の見直しなど検討が必要と指摘した。

また、今回土砂崩れが発生した城山の北東部には、少なくとも5つの谷地形が残るという。報告書では、被災した今回の渓流以外の調査や対策が求められるとしている。

3人の尊い命が奪われた今回の土砂災害。

技術検討委員会は「亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方が一日も早く日常を取り戻し、今後同様の土砂災害が発生することがないよう強く願う」としている。

最終更新日:2025年1月30日 10:47