愛媛発祥の「芦原カラテ」チャンピオンは“女子大学生”と“新米パパ”それぞれの思い胸に挑む世界の頂点
先週、国内初の“世界大会”が松山市で開催されました。この大会に、地元から特別な想いで挑んだ2人のチャンピオン。それぞれの物語です。
大学での講義を熱心に受ける学生。
今治市出身の大学生、濱田暖香(はまだ・はるか)さんです。
濱田さん:
「覚えることが多くて一個一個の病気に対してどの薬とか薬の名前まで覚えないといけないので大変です。(卒業後は)病院で働きたいなというのは考えてて、病院は割と忙しいイメージがあるんで、そこでバリバリやれたらなと思っています」
友人・平岡詩捺さん:
「(濱田さんは)頑張って勉強しているんですけどたまにコクってなっちゃうときがね。お茶目で可愛いんですよ」
濱田さん:
「詩捺よりは寝てない(笑)」
一見、ふつうの女子大学生に思える濱田さん。
実は、門下生2万人を数える「芦原カラテ」の日本チャンピオンなんです!
愛媛発祥の「芦原カラテ」日本チャンピオンとして 目指すは“世界の頂点”
1980年、極真会館から独立して創設された「新国際空手道連盟 芦原会館」。愛媛発祥の芦原カラテは松山市内に総本部を構え、国内180、海外220支部を数える流派です。
その芦原カラテの頂点を決める世界大会が日本で初めて、松山市で開催されることになったのです。
今から13年前、2歳年上の兄と一緒に空手を始めた濱田さん。
最大の強みでもある、男子選手相手の厳しい稽古で身に付けた“フィジカルの強さ”を武器に、日本チャンピオンとして世界に挑みます。
濱田選手:
「外国の選手と組手をするというのが初めてなので、経験を積めたらいいかなと。その中で学ぶことがあって勝てて結果もついてきたら嬉しいかな」
一度は立った世界の頂点 父となって再び挑む大会で新たに芽生えた夢
そしてもうひとり。
普段は松山市内の機械整備の会社で、現場監督を務める紺堂巧唯(こんどう・たくい)選手。2018年のカザフスタン大会で頂点に立った世界チャンピオンが、今回の大会に出場します。
自宅では、2021年に結婚した妻・朱里さんと…2023年5月に生まれた娘の茉絋ちゃんとの3人暮らし。まさに“幸せの絶頂”にある紺堂選手ですが、週6日の稽古はいまも欠かさないといいます。
紺堂選手:
「仕事終わりの練習はしんどいけど、大会も近いので結構ガンガン追い込まないといけないので」
妻・朱里さん:
「(紺堂選手の帰りは)水曜日と金曜日はだいたい11時前になることもあるんですけど、それ以外は8時半とか」
父となった今、2度目の世界チャンピオンを目指して挑む世界大会。紺堂選手は“一つの区切り”だと考えています。
紺堂選手:
「優勝してトロフィーを持って写真を撮って(娘が)大きくなったときに『昔優勝したよ』と伝えられたらなと思っています」
濱田選手と紺堂選手。それぞれの想いを胸に、地元で初の世界大会に挑みます。
世界12か国から325人が松山に集結!2分間にかける勝負の行方は…
11月4日。
穴井記者:
「会場となる県武道館前ですが、世界各国からきた屈強な体つきの選手たちが続々と集まっています」
予選を勝ち抜いた、世界12か国、325人の猛者が、松山に集結!年齢や性別、体重など、43のカテゴリーごとに頂点を決める、“武の祭典”が、幕を開けました。
濱田選手:
「コンディションはわりと大丈夫かなっていう感じで。とりあえずきょう初日は勝って明日の決勝に絶対残りたいなと思います」
今治市出身の現役大学生、濱田暖香選手の出番がやってきました。
相手は、長身から繰り出す膝蹴りが武器のデンマーク、ブライティング選手です。
アナウンス:
「白、139、Japan、ハルカ・ハマダ」
初めて挑む世界の舞台。勝負の2分間が始まります。
審判:
「はじめ!」
蹴りと突きで積極的に攻めて出る濱田選手。ブライティング選手も負けじと応戦します。
すると開始13秒、ブライティング選手が得意とする膝蹴りが濱田選手の顔面にヒット。濱田選手、先にポイントを奪われてしまいます。
濱田選手:
「1年以上こういうしんどい練習をしてきたら(体力面が)全然変わったなと思うし、技術面もちょっとずつ良くなっていってるなというのは実感できます」
男子選手を相手に重ねてきた厳しい稽古の日々…
濱田選手、フィジカルの強さを前面に押し出すスタイルで、相手に攻め込みます。
「普段とはちょっと違う感覚でした」初戦敗退で…初めて感じた世界の壁
しかし、まさかの敗退となった、濱田選手。
父・濱田英吉さん:
「悔しいな、本当に悔しい。でも大丈夫。そんなに甘くなかったということとまだ伸びしろがある。まだいけるんやけん」
濱田選手:
「すごい悔しい…悔しいです。普段だったら圧力をかけたら相手が女子選手だったら押し切れることも多いんですけど、普段とはちょっと違う感覚でした」
敗れたことで初めて感じた、世界の壁。
濱田選手:
「毎日頑張って練習してフィジカル面以外でも精神面とかでも、もうちょっと成長できたらなと思います」
紺堂選手:
「前々回の大会で優勝しているということで今度は追われる側ということなのでいい感じに緊張感はありますね」
2度目の世界チャンピオンを目指す紺堂選手の初戦が迫っていました。
アナウンス:
「赤、10、Japan、タクイ・コンドウ」
相手はルーマニアのクリスティアン選手。
審判:
「はじめ!」
間合いを取りながら、互いの出方をうかがう両選手。互いに譲らず、延長までもつれ込んだハイレベルな戦い…
先にポイントを奪ったのは…
審判:
「1・2・3・4・5、中段突き・技あり!」
紺堂選手、中段突きで技あり!
さらに…!
審判:
「中段突き・技あり、合わせて一本!」
2本の中段突きが決まり、紺堂選手、見事な一本勝ちです!!
紺堂選手:
「海外独特の手足の長さ、掴みの力の強さで相手のペースにもっていかれたところがありましたね。反省点を活かしていい動きで勝てるように頑張りたいと思います」
その後も順調に勝ち上がり、決勝戦に駒を進めた、紺堂選手。
アナウンス:
「ファイナルマッチ、赤、10、Japan、タクイ・コンドウ」
相手は、去年の全日本トーナメントで高校生チャンピオンに上り詰めた、勢いのある入江奏人選手です。
審判:
「はじめ!」
互いに譲らぬ激しい攻防。
結果は…紺堂選手が、見事、2度目の世界チャンピオンの座を手にしました!
アナウンス:
「チャンピオン、タクイ・コンドウ、from Japan」
2度目の世界チャンピオンの座を手にした紺堂選手
紺堂選手:
「当時目標にしていた子どもと一緒に表彰台に上がって写真を撮ることができて、5年前と同じ景色がまた見れてよかったなと思っています」
様々なドラマが生まれた、松山で初めての芦原カラテ、世界大会。スタンドには、表彰式を見つめる濱田選手の姿がありました。
濱田選手:
「決勝戦を観に来たら出たかったなっていう悔しい気持ちも結構出てきたんですけど(大会を通して)すごくいい経験ができて楽しかったです。次は3週間後のインカレで勝ちにいきます。頑張ります」