【年収103万円の壁引き上げ】県や市から 地方税大幅減収への懸念噴き出す「地方は死活問題」(静岡)
衆院選で躍進した国民民主党が看板政策として掲げる「年収103万円の壁」の見直し。14日、自民党と国民民主党は、政調会長と税制調査会長による初の協議を開催しました。
今回の会談では、具体的な協議は行われなかったものの、来週から公明党を含めた3党の税調会長で協議することが決定しました。
(自民・小野寺政調会長)
「自民、国民との税制についての協議会がスタートし、きょうは顔合わせと今後の日程感の協議をした。私どもとして、宮沢税制調査会長を中心に、これから国民との協議をするわけだが、次回は自公と国民ということで、税の担当者同士の協議をすることで合意した」
(記者)
Q。年収の壁を引き上げ 178万まで引き上げるのは可能か?
(自民・小野寺政調会長)
「それはこれからの議論次第だと思う」
次回の会合で国民民主党は、衆院選で掲げた所得税などが非課税となる「年収103万円の壁」の見直しのため、非課税枠を年収178万円まで引き上げることや、実質賃金が持続的にプラスになるまで消費税を5パーセントに引き下げることなどを求める方針です。
(国民・古川税調会長)
「この前の衆議院選挙で掲げた税制の項目についての税制要望を、自民党・公明党に示したい」
国民民主党の主張通り、基礎控除などを178万円まで引き上げた場合、政府の試算では、地方への影響は4兆円程度で、国と合わせると7兆6000億円の税収減になるとされています。与野党での協議の中でどこまで政策を実現できるのか注目が集まります。
“年収の壁”の見直しに向けた議論が本格化する中、民間調査会社の帝国データバンクは、11月8日から12日にかけて、全国およそ1700社に「103万円の壁」の引き上げについて、アンケートを実施しました。その結果、「引き上げに賛成」が67.8%「反対」は3.9%で、およそ7割の企業が「103万円の壁」について、見直しを求めている事が分かりました。
賛成する企業からは、「103万円の壁を意識するパートの方が多く、引き上げれば働き控えが解消される」「減税効果により消費活動が活発化する」といった意見など、働き控えの解消に一定の効果や減税効果によって手取り収入が増えることに、期待する企業が多い結果となりました。
見直しへ期待の声が高まる中、県内からは、税収が減ることについて懸念する声も… 現在、県では、「年収の壁」を178万円まで引き上げた場合の減収額を算出していますが、地方自治体の税収に大きな影響が見込まれるため、鈴木知事は「死活問題になる」と危機感を募らせました。
(鈴木知事)
「財源は非常に重要。特に地方にとっては死活問題になるので、不足する部分にどのような財源措置をしていただけるのか、その部分含めてしっかりと議論してほしい」「大変懸念をしている」
浜松市の中野市長は、15日、“年収の壁”が178万円まで引き上げられた場合、住民税など年間200億円以上の減収が見込まれることを明らかにしました。その上で、地方税が含まれる「年収の壁」の見直しではなく、地方税が含まれない社会保険料が課税される「130万円の壁」から見直すべきだと指摘しました。
(浜松市・中野市長)
「そこじゃない、それじゃないというのが正直なところです」「社会保険料の仕組みを“働き控え”という観点からは、そこからまず手を付けるべきだと思うし、所得の再分配機能を果たすべき国税で考えるべきで、地方税も含めて巻き込んだ税制でやるのは筋が違うのではないか」
中野市長は「地方税を巻き込んだ対応はやめてほしい」と訴えました。
地方の税収が減ることへの不安について、県内選出で国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、先ほど「地方財政に悪影響を与えるようなことはしない」と強く主張しました。
(国民・榛葉賀津也 幹事長)
「色々な数字が出てきている。地方の財源が4兆円減る。だからやるなって論法。そうではない。」「私も地方の議会出身なので、いま地方がどういう状況か、極めて財源的にも厳しい。地方財政に悪影響を与えることは絶対にさせない。ぜひ安心してほしい。」「これは自民党や公明党も同じだと思うので、地方財源に悪影響を与えないように、手取りを増やして積極財政をやっていくことになると思う」
また、榛葉幹事長は、「国の責任で年収の壁を引き上げるとともに、国民の手取りを増やしていくことが重要だ」と説明しました。