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1日で往復550キロ トラックドライバーに密着 迫る「2024年問題」

2023年10月24日 10:51
1日で往復550キロ トラックドライバーに密着 迫る「2024年問題」

トラックドライバーなどの時間外労働を規制する「2024年問題」。

懸念されているのがドライバー不足です。

物流を担う現場はどう乗り切ろうとしているのか、1人のトラックドライバーに密着しました。

迫る「2024年問題」 物流を担う現場は…

大型トラックのハンドルを握るのは渥美衛さん。

トラックドライバー歴は10年。

社内では中堅どころです。

あす未明の出発を前に準備を進める渥美さん。

荷物をトラックに積み込むのはドライバーの仕事。

額にも汗が光ります。

いま物流業界が抱えているのが「2024年問題」。

来年4月からトラックドライバーの時間外労働が規制されることにともない、今までのような物流体制が維持できなくなる懸念がでています。

(渥美衛さん)「いろんなメーカーを取り扱って問屋さんに運ぶという仕事をしています。2024年問題に向けて、あまり他社ではみられない」

「2024年問題」の切り札となる共同配送

そこで渥美さんの会社がとっている対策。

積み荷を見るとさまざまな企業の商品が並んでいます。

これが2024年問題の切り札になっているといいます。

実はこれ、同じトラックに違うメーカーの商品を積み、同じエリアに一緒に運ぶ「共同配送」という仕組みです。

荷主にとっては1台ずつトラックをチャーターする必要がなくなるほか、運送会社にとっても無駄なく荷物を引き受けられ、利益が確保できるといいます。

「2024年問題」は、これまで制限がなかったトラックドライバーの残業時間が年960時間に制限されるため、効率的にモノを運べる「共同配送」の動きが始まっているといいます。

(渥美衛さん)「あしたは釧路まで配達に行きます。往復で550キロオーバー」

恵庭⇔釧路 往復550キロ ドライバーに密着

午前2時。

トラックの出発時間です。

この日の勤務は恵庭から釧路に向かい、その日のうちに恵庭に戻るスケジュール。

働く時間を抑えるため当日戻りになっているといいます。

エンジンをかけておよそ250キロ先の釧路へと出発します。

夜間は道も空いているためスムーズに進みます。

(渥美衛さん)「日中に比べて車が少ないので走りやすくていいですね」

しかし、時には通行止めなどどんなトラブルがあるかわからないため、進めるうちにどんどん進むようにしているといいます。

空もだんだんと白んできました。

恵庭から150キロほど進んだ、十勝の芽室町にあるサービスエリアで最初の休憩です。

(渥美衛さん)「いまで大体2時間ちょっと。釧路まで半分くらい。仮眠もとろうかなと。若干疲れましたね」

カーテンを閉めてちょっと一息。

会社では安全のため、一定の時間ごとに休憩をとることが決まっています。

釧路に到着 休む間もなく荷下ろし作業も

そして休憩後、釧路までトラックを進めたとき、時刻は午前7時をまわっていました。

休む間もなく市内にある配送先に向かいます。

(渥美衛さん)「暑いときはきついですね。釧路はまだ涼しいですね」

そして自らフォークリフトを運転し、手際よく荷物を運びます。

トラックドライバー歴10年の渥美さんですが、やはり体調管理がとても重要だと話します。

(渥美衛さん)「いろんな景色が見られたり知識が増えたりして楽しい仕事ですね。地方運行だと眠気との戦いなので、そこがやっぱりきついところというか」

すべての配送先を回り終わったのは正午前。

この日初めて落ち着いて食事をとることができました。

(記者)「急いで帰るのですか?」

(渥美衛さん)「労働時間もあるのであんまり長くはいられないので。ぱぱっと昼飯を食べて、ぱぱっと帰ろうかと思いますね。忙しいときはとれないときもあるので」

荷物を届ける責任 やりがいある仕事

手早く昼食を済ませ、すぐに恵庭の事務所まで250キロの道のりを戻ります。

実は、渥美さんの父もトラックドライバー。

ハードな仕事であることは知っていましたが、責任をもって荷物を届けることにやりがいを感じているといいます。

(渥美衛さん)「(父の)仕事をしている所を見るとかっこいいなっていつも見て思っていました。やりがいがあるというか大変な仕事ではありますけど、家族もいるので頑張ってやっていきたいなと思います」

恵庭に戻ってきた渥美さん。

時刻は午後4時。

太陽も傾きかけていました。

(渥美衛さん) 「14時間ちょっとですね。身体がちょっと重たいというかバキバキですね。辛いときは辛いですけどね。みなさんが自分たちの運んだ荷物を買ってくれて、生活が成り立っているのなら、こちらとしてはありがたいです」

渥美さんのある週のスケジュールです。

長距離となる函館や釧路に1回ずつ、比較的近い札幌に3回配送しています。

すでに残業時間を抑えているため、「2024年問題」を迎えても勤務状況はあまり変わらないといいます。

渥美さんが所属する会社の社長・伊藤功一郎さんです。

ドライバーの働きを可視化して残業を抑えつつ、待遇を維持し経営が成り立つよう努力してきました。

(シズナイロゴス 伊藤功一郎社長)「全体の問題で労働者の総数が少なくなってきているのと、若年層が少なくなっているのは当社の業界も同じで。24年問題も絡めて特に中小企業はかなり(ドライバーの)採用が難しくなっていると思います。業界全体としてはかなりしんどい。しんどいと思います」

「2024年問題」を懸念するドライバーも

待遇改善などを目指した「2024年問題」ですが、別の会社のドライバーからは冷ややかな声も聞かれます。

(ドライバー)「(残業規制で)遠く走るのも無理だし、生活できるくらいもらえるならそりゃいいかな」

(ドライバー)「やっている人たちからしたらね。時間短くなった分給料が下がったというなら誰もよく思わない」

来年の残業規制を前に、業界で懸念されているドライバー不足。

野村総合研究所が先月公表したデータでは、2030年に道内の荷物の27%が運べなくなる可能性があり、特に地方では荷物を運ぶ頻度が減る懸念もあるといいます。

物流のあり方が問われている「2024年問題」

「届くはずのモノが届かない」

専門家も近い将来そんなことが起こりかねないと指摘します。

(北海商科大学 相浦宣徳教授)「2024年問題は運んでいる皆さんだけの問題ではなく、生活している我々全体の問題であることを強く認識する必要があります」

ドライバーの努力に支えられてきた物流。

「2024年問題」をきっかけに、物流のあり方そのものを見直さなければならない状況になっています。