「暮らし」と「観光」の共存は…苦悩の末にシラカバ並木伐採 背景にオーバーツーリズム 北海道
北海道美瑛町にある観光客に人気のシラカバ並木が、1月14日朝に伐採されていたことが分かりました。
「オーバーツーリズム問題」などが理由とされるこの伐採を、町民はどう受け止めているのでしょうか。
観光名所・セブンスターの木のすぐ近くにあるシラカバ並木が、14日朝にすべて伐採されました。
その数30本以上にのぼります。
その場所を訪ねると、切り倒された木々が道路沿いに横たわった状態で残されていました。
なぜこのような事態となったのかー
理由のひとつが近年のオーバーツーリズム問題です。
これは12月に撮影した映像です
シラカバ並木の前には、車の往来があるのも気にせず、車道をふさいで写真を撮る多くの観光客の姿がありました。
観光客がこぞって撮影していたのは、農村にシラカバ並木が立ち並ぶ美しい風景。
並木全体を写真におさめるため、道路上に出て撮影するのがこの場所での定番となり、迷惑行為が問題となっていました。
付近の農家は当時からこんな悩みを口にしていました。
(付近の農家 大西智貴さん)「トラクターとか大型の機械で通行することも結構あるので、本当に危ないですね。一瞬でも操作を間違えたら人に当たってしまったりするんじゃないかという怖さを感じながら通行していますね」
農作物が植えられている畑に勝手に侵入する観光客もあとを絶たず、農家は頭を悩ませていました。
さらに、シラカバ並木が畑に日陰をつくり、農作物の減収につながっているということもあり、付近の農家らが町と協議したうえで、14日朝の伐採へいたりました。
切られたシラカバ並木を前に美瑛町民はー
(美瑛町の写真家)「(私が)美瑛に来て27年ですけど、馴染みの木でしたね。もちろん残念ですし、悲しいですよね。なんで切られなきゃいけないんだっていう」
美瑛町ではこうした苦悩の末の対応は繰り返されています。
2016年には、観光客によって畑が踏み荒らされたことなどを理由に、観光名所だった「哲学の木」を伐採したこともありました。
こうしたオーバーツーリズム問題に対し、美瑛町もただ手をこまねいているだけではありません。
マナー違反する観光客を抑制するための監視カメラの設置や、混雑状況の発信を行っています。
また、12月からは観光名所で交通誘導を行う警備員も新たに配置しています。
しかし、いまだ有効な手立てがないのが現状です。
美瑛町が抱えるのは「農村の暮らし」と「観光」とが共存する難しさです。
(美瑛町観光協会事務局長 細谷侯仁さん)「観光資源としては1つの撮影スポットが少なくなるというところでは残念ではあるが、農業景観をつくられているのは農業者なので、農業を大切にしながら観光も合わせてという考えでいきますと、(今回の伐採は)仕方ない部分なのかなと考えています」
年間200万人もの人が訪れる美瑛町。
増え続ける観光客をどう受け入れていくか、美瑛町は大きな岐路に立たされています。