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不正改造の危険 ナットの緩みを見落とす可能性も 女児は依然重体 タイヤ脱落事故1週間

2023年11月22日 14:24
不正改造の危険 ナットの緩みを見落とす可能性も 女児は依然重体 タイヤ脱落事故1週間

札幌市西区で軽乗用車のタイヤが外れ、4歳の女の子に直撃した事故から、21日で1週間です。

悲惨な事故はなぜ起きてしまったのか。

専門業者を取材すると、いきすぎた改造に潜む事故の危険性が見えてきました。

タイヤ脱落事故1週間…女児は依然重体

21日午後1時半ごろの札幌市西区平和です。

近くの幼稚園では帰宅時間になると、保護者が子どもの手を引いたり抱きかかえて帰ったりする様子が見られました。

(百瀬記者)「事故現場は近くに小学校や幼稚園のある住宅街でした。ちょうど1週間前のこの時間帯に痛ましい事故が起きました」

今月14日、札幌市西区平和3条8丁目で軽乗用車のタイヤが外れ、4歳の女の子に直撃する事故が起きました。

事故が起きた直後の映像です。

画面左の白い車が事故を起こした車です。

周辺では消防隊や幼稚園の関係者でしょうか。

慌ただしい様子が映っていました。

(近隣住民)「救急車が2台来たり消防車が1台来たり、そのあと警察が何十人も来て測っていた、どこからタイヤが外れたのか」

(幼稚園の保護者)「すごいびっくりして心臓をつかまれる感じ」

4歳の女の子はタイヤの衝撃で首や頭などを強く打ち、意識不明の重体。

1週間が経ったいまも、意識は戻っていません。

警察は、軽乗用車を運転していた札幌市西区の49歳の男を、過失運転致傷の疑いで逮捕・送検しました。

警察によりますと当時、園児の女の子は父親と5歳とみられる姉と3人で歩道を歩いていました。

すると、およそ70メートル先で軽乗用車の左前のタイヤが外れて、歩道にいた女の子に直撃したということです。

タイヤが直撃するという異例の事故。

取材を進めていくと、今回の事故は特殊な事情が明らかになってきました。

車は知人名義…事故前に不具合を認識か

(百瀬記者)「事故直前、この敷地でタイヤの状況を確認する様子が防犯カメラに映っていました。男は、事故前にハンドルにブレがあったと供述しているということです」

事故を起こすおよそ10分前の映像です。

ぐるぐると敷地を走り回り、このあと外れる左前のタイヤを入念に確認。

一度、公道に出た後…

再び戻り、走り去っていく様子が映っていました。

この場所からは下り坂が続いていて、事故現場まではおよそ200メートル。

この坂道を走った勢いのまま、タイヤが女の子に直撃したことになります。

(男の親族)「車の調子が悪いから、乗ってみてくれと頼まれたようだ」

事故を起こした車は男の知人名義で、知人は不具合を感じて男に車を預けたとみられています。

男の関係先や車の所有者の自宅では家宅捜索が行われ、捜査関係者によりますと、車を整備する工具などを押収しました。

不正改造か…車検時になかった大きなタイヤ

関係者によりますと、事故を起こした車は車検に合格していて、現在も有効期間内でした。

しかし、斉藤国土交通大臣は20日の会見で―

(斉藤鉄夫国交大臣)「国土交通省としましては、本件事故を起こした車は不正改造の疑いが高いと考えております。車検時の写真も我々、自動車局の方で調査しました。それらを見て不正改造の疑いが高いと我々は考えています」

国交省によりますと、事故当時の写真とことし8月24日の車検合格時の写真を比較したところ、事故車には車検合格時にはなかった大きなタイヤが、車体をはみ出すように装着されていたということです。

そもそも市販されている軽乗用車の規格は幅・長さ・高さが決まっています。

タイヤ自体が車体の幅から1センチ以上はみ出したり、車の幅より1センチを超えた「オーバーフェンダー」と呼ばれるパーツを取り付けて公道を走ると、違反になります。

実際の事故車を見てみると、タイヤが外側にはみ出すような改造をしたと思われる形跡があるのがわかります。

しかし、タイヤまわりの「改造」がタイヤが外れる原因につながってしまうのでしょうかー

車の改造などを手掛ける専門業者はー

(VNCジムニーワールド札幌 山北泰史さん)「改造したから、カスタムしたからタイヤが外れるというわけではなくて、しっかりと整備をすれば外れない」

ナットの緩みが原因か 誘発するものは…

では、なぜタイヤが外れたのか。

専門業者が指摘したのは「基本的なナットの締め忘れ」です。

実際の事故現場を見てみると、タイヤを固定していた「ナット」とみられるものが映っていました。

近くでは5個の「ナット」が全て見つかっていることから、5個すべてのナットが緩んでいたとみられています。

(VNCジムニーワールド札幌 山北泰史さん)「ジムニーの場合は5本のナットで(タイヤが)とまるんですけど、そのうち2本くらいナットがなくても、(タイヤが)外れるほどではないです。ナットが残り1本となると、ちぎれるように割れるようにという外れ方はするが、画像でナットじゃない車体側についているボルトも5本、曲がってはいるが残っていたというところで考えると、ナットの緩みが一番の原因なんじゃないかなと」

ナットの緩みを誘発するものとは…

事故車の車軸部分と通常の車軸部分を比較してみると、事故車の方にある部品が取り付けられていることがわかります。

これは「ワイドトレッドスペーサー」といわれるもので、この部品の厚みで車体からタイヤがはみ出るように改造することができるといいます。

このパーツは車軸のボルトを使って装着するもので、装着すると車軸につけたナットがタイヤの中に隠れてしまうことがわかります。

つまり、車軸のナットは外から緩みがないか確認することができないため、緩みを見落とす可能性が高くなるといいます。

(VNCジムニーワールド札幌 山北泰史さん)「スペーサーがまず緩んでくると、ホイールとしっかり締まっていたとしてもガタが出てきてしまうので、ガタがどんどん緩む方に誘発していきますから」

このような「スペーサー」はトラブルの原因にもなることから、正規のカーショップでは販売していないということです。

“いきすぎた改造”で気が付かない異音

そして、もし「ナット」が緩んでいた場合は異音がするといいます。

(VNCジムニーワールド札幌 山北泰史さん)「“パキンッパキンッ”という金属音が出てきます。(ナットが)緩んでいる時はそういう音が出やすいです」

しかし、あらゆるところを改造した結果、ナットが緩んでいた時に聞こえる「パキンッパキンッ」という音がかき消されてしまっていた可能性があるといいます。

(VNCジムニーワールド札幌 山北泰史さん)「“パキンッパキンッ”という音が大きな音ではないので、それよりも大きい音がすると(異音に)気付きづらくなる」

実際に事故前の車を目撃した人は、車が大きな音を立てて走っていたと話します。

(目撃者)「思いっきり(音が)聞こえました。競技用のマフラーが入っていますので、結構音がうるさかった。サーキットで走るような音でした。“ブォーブォー”という音ですね」

“いきすぎた改造”が痛ましい事故へとつながっていったのかー

警察は引き続きタイヤが外れた原因を捜査していますが、再発防止のためにも一刻もはやい原因究明が求められています。

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