【特集】柏崎刈羽原発と経済 電源交付金と固定資産税で38億円、経済団体は再稼働に期待 一方で安全対策の面からから否定の声も 「推進」と「反対」で揺れるまち《新潟》
柏崎市の海沿いにある民宿「たや」。
東京電力・柏崎刈羽原発の近くで50年以上、営業を続けてきました。
かつては原発の作業員が1~2か間滞在し、この宿から働きに出かけていました。
しかし、「今はほとんどゼロ」(経営/須田聖子さん)だといいます。
■「東電があって生活できた」
2011年の東日本大震災後に原発の全号機が停止。
以来、宿に泊まる作業員は減ってしまいました。
それでも…。須田さんはこう話します。
【民宿たや 須田聖子さん】
「反対意見を言われても、うちは推進ですよ。義理と人情じゃないですけれど、やっぱりうちも東電さんがあってこうやって生活ができた。急に手のひらを返すのは人としてどうなのって思いますし」
■経済波及効果は
ことし4月、県は柏崎刈羽原発の6・7号機が再稼働した場合について10年間で4396億円の経済波及効果があると試算。
柏崎市の桜井雅浩市長はさらに大きな効果があるはずだと強調しました。
(桜井市長)
「10年間で約4400億円は下限を見積もったのではないか。雇用、税、交付金等を含めても再稼働の意味はある」
原発が立地する自治体には「電源交付金」が交付されます。
■財政力指数トップの刈羽村
刈羽村には12億円が交付され、原発関連の固定資産税は26億5000万円。村の歳入74億円のうち半分以上が原発に関連しています(いずれも2023年度)。
財政力指数は刈羽村が県内の市町村でトップです。
【刈羽村・品田宏夫村長】
「7号機が運転を開始すると交付金の額が約8500万円増えます。インフラに使いますよ。下水道、農業集落排水設備など、そういったものの維持・修繕、いろんなところに使いますよ」
原発の立地により、村は変わりました。
【刈羽村・品田宏夫村長】
「昔は村が疲弊をしていてお金が本当になかった。行政にもお金がない。無医村。そういう状況を脱するための財源になった。刈羽村はお金がありますよ。お金はあるけれども、無駄遣いは一切していません」
■商工会議所は
柏崎市の商工会議所などは市議会に「原発の早期再稼働を求める請願」を提出。
賛成多数で採択されました。
柏崎商工会議所の副会頭・石坂泰男さん。
原発の停止は特に建設業に影響を与えたといいます。
【柏崎商工会議所・石坂泰男 副会頭】
「原子力発電関連の仕事をする事業所の撤退はこの10数年間で相当起きた。事業所の数が減ったのは事実だと思います」
■反対の立場も
ただ、再稼働を求める請願をきっかけに商工会議所を脱会した人もいます。
柏崎市でカフェ「et cetera(えとせとら)」を営む阿部由美子さんです。
【阿部由美子さん】
「私も請願の一部になるのが嫌だった。それが商工会議所の総意だとしたら、私も総意の一部になってしまう」
阿部さんは柏崎刈羽原発の再稼働には反対の立場です。
しかし、そう公言できるまで葛藤もありました。
【阿部由美子さん】
「商売だからっていうのはあったかな。3.11の前までは前には出ないでいたんだけど、3.11の後は言うしかないなって。柏崎刈和原発に事故が起きた時、ここに住めなくなるんですよ。福島と同じことが起きたら。そこに向き合わないで、原発を動かすことの経済効果って何?って思うんです」
相次ぐ災害のたびに問われる原発の安全対策。
柏崎刈羽原発7号機はことし6月、再稼働に向けた技術的な準備が整いました。
再稼働を目指す国は15日から県民説明会を始めました。
原発の安全性と必要性について理解を求めていますが、説明を聞いた人からは「全然納得できない。福島事故の知見が生かされていない」、「再稼働について住民が同意できるような材料を示してくれていない」といった声が聞かれました。
原発と経済、切り離せない課題が県民の目の前で揺れています。
(2024年7月16日放送「夕方ワイド新潟一番」県内ニュースより)