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【特集】コメの商談会で「譲ってもらわんなら帰りません」すでに争奪戦 コメの価格の高止まり 今後の見通しは? 《新潟》

2024年12月6日 20:22
【特集】コメの商談会で「譲ってもらわんなら帰りません」すでに争奪戦 コメの価格の高止まり 今後の見通しは? 《新潟》

2024年はコメを取りまく状況が決して安定しているとは言えない年となりました。
12月現在、スーパーでは価格が高止まりしています。
この価格はいつまで続くのか……
今後の見通しを取材しました。

■店頭価格は1年で1.5倍に

買い物客でにぎわう新潟市西区にあるスーパーを訪ねました。

〈斎藤 久美子 キャスター〉
「一時は店頭から姿を消したコメ。新米の流通と共に店頭には種類豊富に並ぶようになりました。ただ、価格を見てみると、5キロ2000円台で推移していた物が、3000円から4000円ほどで販売されています」

総務省によると、コシヒカリの販売価格は1年前は5キロ2400円ほどでしたが、2024年春ごろから価格が上がり始め11月は4000円に迫ろうとしています。

さらに……

〈いちまん 高井栄二朗 店長〉
「11月ぐらいから、業者さんが供給できる量が決まってるというので、1か月にこれ以上は出荷できませんという連絡が来ている。だからもらえる量の範囲内で販売させてもらう感じにはなります。出荷制限ですね」

卸売業者から出荷制限がかかっているというのです。
新米は前倒して出荷されましたが、年間の出荷量は決まっているため、2025年の夏に再び品薄とならないようすでに調整が始まっているといいます。

■「粒ぞろいでも、収穫量は上がらない……」

2024年のコメの出来はどうだったのか。
魚沼市の関隆さんです。
従業員とともに80ヘクタール以上の田んぼでコメ作りをしています。
出荷作業も一段落し、新米の味を確かめます。

「うまいな」「粒がしっかりしてる」

2024年のコメの出来栄えは上々です。
しかし、収穫量については満足とはいかなかったようです。
10月、関さんは稲刈りを進めた時に違和感を覚えたと話していました。

〈魚沼市のコメ農家 関 隆さん〉
「稲刈り始まって検査したら品質も等級も悪くない、『ことしはいけるな、去年の借りを返せるな』と思って、稲刈りを始めました。ところが、どんどんイネを刈っていっても収量が上がらない」

コメの収穫量が上がらない…そんな違和感は県内全体で起きていました。
11月、北陸農政局が発表した2024年の新潟県の収穫量は「やや不良」。
2023年に続き2年連続です。

そうした中、県は2025年の主食用のコメの目標生産量を引き上げることを発表。
2024年の目標生産量を1万6400トン上回る56万2400トンとしました。

〈花角知事〉
「昨年とことしと、作柄は“やや不良”ということで目標数量を確保できておりませんでした。適正な在庫量を少し見直して、年間を通して消費者の需要にこたえられるようにしていこうと」

■「譲ってもらわんなら帰りません」商談でも争奪戦

より多くの人にコメが届くように。
県は11月、東京で業務用米の商談会を開きました。

県内の生産者や卸売業者、JAなどが構えたおよそ30のブースに自慢のコメが並びます。
やって来たのは卸売業者や商社、弁当などを提供する中食業者など様々……
赤いIDカードを首から下げ商談にのぞみます。

JA佐渡のブースで話していたのは兵庫の卸売業者です。

〈兵庫の卸売業者〉
「安定的にいただけるかどうか。このご時世、情勢ですんで、入ってこない可能性もあるってすでに言われたりとか。なので、できたら直接の農協さんと契約出来たら1番ありがたいなとは思って」

上越市にある集荷業者のブースでは……

〈熊本の卸売業者〉
「ちょっと譲ってもらわんなら帰りませんくらいの勢いで(笑) 何かしら爪痕残して帰らんとダメかなというところで(笑) ちなみにですけど、コメはあるでしょうか?」

〈集荷業者・大黒屋商店の担当者〉
「モノは正直言って非常に少ないです」

すでに始まっているコメの争奪戦。
全国各地の業者が少しでも多く買い付けようと交渉していました。

〈熊本の卸売業者・ミヤタ 川口 信弘 部長〉
Q.爪痕は残せたか
「はい残せました。ありがとうございます。少しは熊本に持って帰れると思うので大変良かったです」

コメの価格については……

〈熊本の卸売業者・ミヤタ 川口 信弘 部長〉
「あんまり上がってほしくないというのはあるが、仕方ないところもあるので、これはもう流れにお任せするような感じですかね」

〈兵庫の卸売業者・トウバン 戸田和志 専務取締役〉
「争奪戦の結果、値段が上がっている状態が続いているような感じ。来年の秋口以降までコメを確保する必要があるので、そうすると高いおコメでも無理にでも買ってしまって、私どもの在庫として確保する必要がありますんで」

■先物取引も“高止まり”

コメの価格はこの先どうなるのか……

2024年8月、大阪にある堂島取引所でコメの先物取引が本格的にスタートしました。
先物取引とは、将来取り引きする際の価格をあらかじめ決めてしまう仕組みです。
将来の市場価格の変動に左右されず利益の見通しを立てやすくなります。

〈大阪府 吉村 洋文 知事 (あいさつ)〉
「日本のコメってすばらしいので、おそらくこれからどんどん海外の需要も増えてくると思います。需要が増えてくる中で、この生産と取引の安定、リスクヘッジ。そういった機能を果たすことになるんだろうと。いわゆる一つの世界的な指標にこの堂島コメ平均がなればいいなと思っています」

ことしの卸売業者の取引価格では2月から8月までは60キロ1万6000円前後です。
新米が出回った10月以降、2万3000円余りに跳ねあがっています。
そして、先物取引によると、来年はそのまま2万円台で推移しています。

11月、新潟市で開かれたセミナーでマイクを握ったのは、堂島取引所の有我渉社長です。
コメの価格について今後の見通しを聞くことができました。

〈堂島取引所 有我 渉 社長〉
「取引所なので価格に関して予見を与えるようなことは申し上げられないが、いま10月限の数字を見てみると、ことしの高いといわれている新米の値段とほぼ同じ水準なので、高止まりするのかなと今は見ています」

急激な価格の高騰に戸惑う声も聞かれる中、これが適正価格として定着していくのか。
この1年はその狭間の年となりそうです。

最終更新日:2024年12月6日 20:23