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【特集】村民の新たな移動手段は「自動運転バス」 公共交通の空白地帯を解消へ 地方が抱える問題の解決は 《新潟・弥彦村》

2024年3月17日 18:01
【特集】村民の新たな移動手段は「自動運転バス」 公共交通の空白地帯を解消へ 地方が抱える問題の解決は 《新潟・弥彦村》

ことし2月、弥彦村で自動運転バスの実証実験がスタートしました。

3月、およそ1ヶ月の実証実験を終えて、自動運転バスの本格運行が始まりました。
新たな移動手段としての成果と課題。 そして今後の展望について取材しました。

◆村民の新しい移動手段「自動運転バス」

弥彦村の自動運転バス。
いま、村民の新しい移動手段として注目が集まっています。

まずはどんなバスなのか、詳しく見ていきます。

弥彦村に導入されたのは電気自動車のEVバスで「ミコぴょん号」と名付けられています。
車体はピンク色で、“ミコぴょん”が描かれているのが特徴です。

前後左右に大きな窓がついているので、車窓からの眺めも楽しめます。
ヨーロッパのバルト三国の1つであるエストニア製の車で、「ミカ」という車両で、定員は8名。
現在は 緊急時の対応などのために専属のオペレーターが1名、常に乗車しています。

運行は週3日、 月曜・火曜・金曜で、運賃は無料です。
弥彦村の村民はもちろんですが、それ以外の人も現時点では無料で乗車できるということです。

運行区間は弥彦村役場とJR北吉田駅の間で、1日に4往復しています。

◆実証実験で得られた成果と課題

本格運行を前に実証実験が行われた弥彦村の自動運転バス。
車内に運転席はなく、3DマップやGPSなどの情報で走行できます。
弥彦村は2月まで実証実験で安全性や利便性を確認していました。

およそ1ヶ月の実証実験でどのような 成果が得られたのでしょうか。

〈弥彦村デジタル行政推進課 宇野誠課長〉
「自動運転バスを導入したいというのは、去年からタイミングを見て各集落の区長さんなどに話をさせて頂きました。 自動運転というものがこのエリアにとって新しくて、どういったものかを、なかなか皆さんイメージができないので。自動運転そのものというよりも、新規路線で自分たちが今まで使えなかったサービスが使えるようになるという点で非常に評価して頂いたと思っています」

2月に稼働した日の輸送人数は、 当初1日10人程度の利用を見込んでいましたが、結果はおよそ2倍。 まずまずの結果だと宇野さんは話します。

〈弥彦村デジタル行政推進課 宇野誠課長〉
「実際にはもうちょっと増えた方が・・・公共交通ですので、空気を運んでいるというのが1番怖いです。 もっと(乗車人数を)増やしていきたいという気持ちはあります」

〈弥彦村 本間芳之村長〉
「今までは、“やひこ号”というある特定の地域を結んだバスが運行されていたのですが、それ以外の地区において、公共交通の空白地帯が発生していまして」

2003年に地元のバス会社が撤退して以降、燕市と連携した広域循環バス「やひこ号」が村民の足となっていた弥彦村。

弥彦村役場や、近隣の吉田病院などをつないでいますが、路線から外れた空地帯が存在していました。

この空白地帯に住む高齢者の移動手段を確保するため、今回自動運転バスという最新のテクノロジーの導入に踏み切りました。

◆公共交通の空白地帯

空白地帯の1つ、えび穴集落。
およそ50世帯が住む集落ですが、特に65歳以上の高齢者が多く住んでいます。

この集落に住む男性は、自動運転バスの導入について・・・。

〈集落に住む男性〉
「(自動運転バスに)乗ったことある。ありがたいね、だんだん高齢化してきているから。家族が核家族化しているから、移動を頼める若い人もいないし、自動運転バスが通ってもらえれば助かるよね。 これからは、もう少し路線を伸ばして停留所を増やして欲しいです。 スーパーの周辺までできればと思っています」

このような意見について弥彦村の宇野さんは、より村民のニーズに合わせていくことが今後の課題だと話します。

〈弥彦村デジタル行政推進課 宇野誠課長〉
「今後、どのバス停から・どの便で・何人乗っているかというデータをしっかり見極めていくことで、実際のニーズとマッチしているのかどうか、ここから実際に利用者の声を反映して、よりあるべき形に変えていく仕事が始まるというところですね」

◆見附市の職員が視察に

取材をしたこの日、見附市の職員が自動運転バスの視察に来ていました。

〈見附市の職員〉
「ここ(一旦停止)も自動で行けるのですか。(停留所に)人が待っているとかは判断できない?」

〈自動運転バスのオペレーター〉
「現状ではオペレーターが乗車しているので、停留所にお客様がいたら扉を開をけます」

〈見附市の職員〉
「自動運転のオペレーターさんは資格が必要なんですか?」

〈自動運転バスのオペレーター〉
「普通免許と、その他には民間のライセンスが必要になります」

熱心にオペレーターに話を聞く職員。 初めての自動運転に興味深々です。

4年前、茨城県境町で全国初の自動運転バスが導入されて以降、地方の自治体が境町をモデルケースとした自動運転バスの導入を検討し始めました。

どの地方も同じような課題を抱えているということです。

Q)見附市も導入を検討しているということですか?

〈見附市の職員〉
「そうですね。行政課題としてはバスの運転手不足や、公共交通のランニングコストが高いのを減らしていきたいですし。利便性は向上させたいので 自動運転バスは先にはなりますけど導入していかなければいけないと思います。雪道でもどれくらい走れるのかなと思いましたが、意外と走れますね。 雪が降らない地域では運転できているという話もありますが、やはりそういう所とは違うので、来てみて乗せてもらいながらどんな感じか体験できてよかったです」

◆住民も期待 生活ニーズを反映して

県内初の本格運行となった弥彦村の自動運転バス。
住民も期待を寄せていました。

〈弥彦村 住民〉
「改良の余地はあるけれど、やるべきでしょうね。 しばらく時間はかかるでしょうが、是非やってもらいたい。 僕もそろそろ免許返納しなきゃいけない年齢なので・・・」

〈弥彦村 住民〉
「(自動運転は)不安だと思うので、試乗みたいな、体験会みたいなのがあると乗りやすいかなと思います。 両親が高齢で、車の運転がすごく心配なので、自動運転バスを勧めたいと思います。 こういうのがあるから良いよ、使いなって」

乗客からの意見などを踏まえ、より利便性の高い移動手段としてレベルアップさせていきたいと弥彦村の宇野さんは話します。

〈弥彦村デジタル行政推進課 宇野誠課長〉
「今後は自治体として弥彦村民の生活ニーズをきちんと反映して、そこから先、この自動運転バスをどのように弥彦村の街づくりに使っていくかという大きい課題が待っています」

◆今後は観光ルートにも 

県内で初めての本格運行となった弥彦村の自動運転バス「ミコぴょん号」ですが、現在走っているのは1台のみで、 4月に新たにもう1台導入したいということです。

「ミコぴょん号」は時速20kmという低速走行で、1日に4往復しています。
弥彦村役場とJR北吉田駅の間の片道は30分ほどになるということです。

そして 4月からは新規路線も導入予定ということなので、どんどん「ミコぴょん号」が範囲拡大していきそうです。
弥彦村は今後、観光客向けのルートも拡大して観光にも使っていきたいということです。

◆佐渡でも自動運転バスの実証実験

県内ではもう1つ自動運転バスの実証実験に取り組んでいるところがあります。
それが佐渡市です。

佐渡市では、相川から尖閣湾と、相川から岩谷口のルートにおいて、リース車両を使用した自動運転バスの実証実験を行いました。

この時は自動運転レベルでは「4」。
オペレーターが乗車した状態での実証実験を行いました。
弥彦の「ミコぴょん号」と同じです。

この実証実験を行った背景ですが、佐渡はバスやタクシーの運転手の高齢化が加速していて、それに伴い、担い手不足も深刻になっています。

それをどうやってカバーしていくかが課題となっている中で、実証実験に踏み切りました。

実験を終えて、今後は専門家と意見を交えながら自動運転の「レベル4」、 つまり限定地域での無人化運転に向けて取り組んでいきたいということです。

地方が抱える問題の解決に向けて、自動運転バスがどう活用されるのか・・・。
大きな課題が待ちうけています。