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【特集】「水とともに」フライフィッシング工房 岩手の自然を体感し釣り竿手づくり 

2024年8月8日 18:52
【特集】「水とともに」フライフィッシング工房 岩手の自然を体感し釣り竿手づくり 

 特集です。今月は「水とともに」生きる人や場所を紹介しています。今回は日本でも数少ない欧米式の毛針、フライを使って行う釣りフライフィッシング用の竿を手づくりしている紫波町の工房の話題です。清流のマイナスイオンと一緒にお届けします。

水とともに。

石川寛樹さん「よし、きたー!また釣れた。ヤマメかな」

きょうは川をフィールドに駆け回る少年のような主人公です。

石川さん
「やっぱり川に入ると、(日常を)みんな忘れちゃって、釣りのことだけ考えてるんで、僕ら子供の頃と大した変わらないですよね。そのくらい楽しいってことですよね」

 紫波町は上平沢。ここを流れている滝名川のすぐそばに…、フライフィッシング用のロッド、いわゆる欧米式の毛ばり釣りの竿のメーカー「カムパネラ」があります。

Q:こちら、どちらからの依頼ですか?
石川さん「これは北海道から(の依頼のオーダーメイド)ですね。南はですね、西表島までありますね」

国内のみならず、海外からも注文が舞い込む人気ぶりです。カムパネラの代表、石川寛樹さん。神奈川県の出身です。23歳のころ、フライフィッシングがしたくて、自然環境に惚れ込んだ岩手に移住しました。そして1999年に「カンパネラ」を立ち上げます。

石川さん
「(フライフィッシングは)もともとがアメリカやヨーロッパから入って来た釣りなので、日本にあった道具があまりなかったんですよね、当時も。それで日本の渓流にあった自分たちが使えるような竿を作りたいねって話で始めたんですけども」

 いわゆる「カムパネラ」の釣り竿は、日本の岩手という環境だからこそ 生まれたフライロッドなのです。それは、カーボンで竿の芯の部分から製作するハンドメイド。芯の金型にカーボンを巻きつけ、一本一本丁寧にロッドの形にしていきます。

石川さん
「完成したのがこちらです。で、これが、うちのロッドの一番元になるシャフトになります」

 グリップのコルクの形状も一本一本削り出していきます。ほとんどの工程が手作業のため、月に製造できるロッド数は、60本ほどにしかなりません。釣り糸を通すガイドリングの取り付けや塗りも、丈夫さはさることながら繊細で美しい仕上げにこだわっています。

石川さん
「(大量生産だと)通常は2層(塗り)くらいで終わってしまうところを、うちは4層かけたりしてますね。ま、手間ではあるんですけども、やっぱりこう一生モノなので、こういうものっていうのは大切に気に入って長く使っていただけるようにと」

 繊細で美しく、そしてしなやかなロッド。豊かな自然環境や文化を持つ地だからこそ、よいロッドが生まれると石川さんは考えています。岩手に育まれたモノづくり、それが川のほとりの工房「カムパネラ」のビジョン(理念)なのです。

 「カムパネラ」には、4人の製作スタッフがいます。皆さん、石川さんのモノづくりのビジョンに共感した人ばかり。岩手の環境や川への思いを伺ってみました。

「きれいな川に横に道がついてるんですよ。岩手の方が森とか自然の中でなりわいづくりしてきたことで保たれていると思うんです、林業とか。だんだん自然から離れた暮らしをしていくと(道に)入らなくなっていくと思うんですけど、それがまだ維持されてずっと今の時代まで続いているというところはすごく頼もしいなっていう感じはします」

「(岩手の川は)すごくきれい。感動しました。(川は)山とか石を削りながら走ってるじゃないですか。そんなすごい力あるものなのに静かな環境で美しい魚を釣れるのがすごい気持いいなと思ってます」

 「カムパネラ」では、フライフィッシングを身近に感じてもらおうと、初心者講習会も開催しています。女性スタッフもいることから女性の参加者も増えてきているそうです。

 この日 石川さんは、ロッドのテストに出かけました。訪れたのは、とある清流です。こちら、虫を模したフライフィッシング用の毛バリ「フライ」。ロッドをうまく操り、魚の居そうなポイントにこのフライを投げ入れ、川面に浮かせて魚を誘います。

石川さん「よし、きた! 小さいけどきた。 はい、ヤマメ。ふふふ(笑)」
「やっぱ夕方なんできますね。 はい、2匹目、ふふふ」

 ロッドのテストのはずなのに、石川さん、釣りに夢中になっています。

石川さん
「少年のようにというか、少年のままにっていう感じじゃないですかね。ま、基本的に魚釣りに来てるんで、魚のことを夢中で考えています。全国からやっぱり岩手の川っていうのを皆さん憧れて来るくらいなので魅力に溢れているというか、川によって様子が全然違うから、いてその先を見るのも楽しみのひとつですよね」

 川のほとりの「カムパネラ」。石川さんはきょうも少年のような心で、川とともに暮らしています。

なお、「カムパネラ」では、フライフィッシング用をメインに、ルアーやテンカラ用という和式毛バリ釣り用の竿なども作るそうです。また、渓流だけでなく、湖や海用のロッドも製作しているとのこと。個人からのカスタムオーダーにも柔軟に対応しています。
 ただ完全受注生産のため、工房には小売店が併設されていますが、フライロッドの小売はしていません。サンプルが置いてあるそうなので、一度足を運んでみてください。
Campanella(カムパネラ)紫波町上平沢字川原田23- 36
019-613-5655 9:00~19:00 定休日 日曜・祝日