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【海街リポート】横浜から震災被災地の陸前高田に移住 地域おこし協力隊員に その理由とは 岩手

2024年6月21日 18:51
【海街リポート】横浜から震災被災地の陸前高田に移住 地域おこし協力隊員に その理由とは 岩手

月に一度、東日本大震災の被災地のいまを伝える「海街リポート」です。神奈川県横浜市出身の女性が、大学を卒業した去年、ある強い思いを持って、岩手県陸前高田市の地域おこし協力隊員になりました。彼女が移住した理由とは。

「気仙大工左官伝承館って行かれたことありますか?」

陸前高田市の観光案内をしている、菅野 睦子さん(23)。神奈川県横浜市からこのまちに移り住みました。菅野さんは、「陸前高田市観光物産協会」に所属し、観光案内に海水浴場の運営。広報としてまちの魅力も発信しています。

東京の青山学院大学を卒業した去年、ある思いを持って縁もゆかりもない陸前高田市の地域おこし協力隊員になりました。

菅野さん「ずっともうここで暮らしていきたいなと思って」

震災の津波による大きな被害が人口の減少を加速させた街で、菅野さんは特に人を呼び込む取り組みが大事だと思っています。

菅野さん「おでかけとか観光の選択肢になるように、そこに力をいれて」

ここは震災の津波で家を流された人のために整備された団地です。その1階に2022年オープンした喫茶店を菅野さんは訪れました。この店は、震災後に地元に戻った店主の熊谷久美子さんが、被災した人たちの憩いの場になればと始めた、昭和レトロな雰囲気が漂う喫茶店です。

菅野さんは、注文したランチが届いたとたんに動画を撮り始めました。実は半年前、菅野さんは先輩と観光物産協会のインスタグラムのページを立ち上げました。主に菅野さんは、市内のグルメや観光情報を発信しています。(インスタ画面みせる菅野さん)こだわりは、目を引く見出しです。2300人以上がフォローしてくれました。

この日は、2時間じっくり煮込んだロールキャベツが食欲をそそる店の一番人気のランチの取材です。

菅野さん「ごはんのできたての感じが伝わったらいいなと思うので時間との勝負です」

見出しは「心、温まるロールキャベツ」。実際に食べて感じた、ほっと一息つけるあったかい雰囲気を言葉に込めました。これまで市内の観光情報を定期的に発信してくれる人は、あまりいなかったため。

umineco店主/熊谷久美子さん
「中(陸前高田)にいると思いつかないことをやってくださって、すごく反響があってただただありがたいと思いますね」「こちらこそすごくお世話になっていますし、こうやって美味しいお料理とかをつくってくださっているからこそ私たちが広報できるので、本当に逆にいつもありがとうございます」


江口アナウンサー
「海までは車で10分。田園風景が広がるこの場所、横浜出身の菅野さんは移住してきました」

菅野さんは、なぜふるさとの横浜を離れて陸前高田に移住したのでしょうか。

菅野さん
「その時には何か力になりたいと は思っていたんですけど」「ただただ祈るというか、無事を願うことしかその当時は できなかったですね」

菅野さんが小学4年生の時に東日本大震災が起きました。東北が津波で大きな被害を受ける様子をテレビで見て涙が止まりませんでした。

高校3年生の時、自分の目で被災地をみようと、企業が主催する防災学習ツアーに参加し、初めて陸前高田を訪れました。伝統の祭りを守る姿など、震災にくじけない街の人の姿が目に焼き付き、力になりたいと思いました。

そして、大学生になってからは陸前高田のにぎわいづくりに取り組むNPO法人に所属して、街の人が喜ぶ催しを開くため、横浜から何度も足を運びました。

活動を続けるうちに、孫のように接してくれる人や何でも相談できる人ができ、気付けば街の人に会いたくて30回以上ここに来ました。地元での就職も考えましたが…。

菅野さん
「どうしてもいままでお世話になっていた陸前高田の方の顔が浮かんできて、そういう方々のためにお仕事したいなというのを思って移住することにしました」

冷蔵庫の中には、都会にはない「あたたかさ」が詰まっていました。

菅野さん
「今年とれたてのわかめです」「これは地元の漁師さんからいつもいただいているわかめですね」「いま昆布系がたくさんあって」「冷凍しておけばずっと使えるよっておばちゃんが」

今も続く街の人との交流が毎日の原動力です。ふるさとを離れて働く菅野さんをいつも励ましてくれる人がいます。

「いいお天気ね」「うんいいお天気よ」

横浜に暮らす母の佐知子さんです。いつもお兄ちゃんおねえちゃんが面倒をみてくれていた4人きょうだいの末っ子が、遠い街で1人で暮らせるのか、心配したこともありました。

母「すごく周りの方にお世話になってよくしていただいているのでいまは安心して」「睦子自身が受け取っているものがとても大きいので何倍にもして返してほしいなと思っています」

菅野さん、家族の応援を受け、体力が求められるある資格の取得に挑みました。

菅野さん
「ここの砂浜を100メートル走って、そのあとに、海を100メートル泳いで砂浜を100メートル走るっていうのを8分以内でやるっていう最後の最終試験で、 すごいきつかったんですけど、 みごと取れて(ライフセーバーに)なりましたね。」

陸前高田がもっとにぎわうように。安心して海水浴を楽しんでもらうため、海の安全を守ります。第二の故郷に恩返しを。これからも自分にできることに力を尽くします。

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