「絆・つながり・助け合い」を手が届く範囲で広げたい 獣医師が「口蹄疫」で失われた人と人とのつながりを取り戻すまで
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今回は、都農町唯一の動物病院「あおき動物病院」を取材。
人と人とのつながりを大切にしようと様々な活動に取り組んでいる夫婦の姿がありました。
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■あおき動物病院(都農町)青木淳一院長
愛媛県で生まれ、幼少期に見たテレビ番組「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」の影響で動物好きに。
獣医師になるため宮崎大学農学部獣医学科に進学。
その後、家畜の診療について勉強するため西都市の動物病院に勤務。
2000年に独立して都農町に「あおき動物病院」を開業しました。
- 【話:あおき動物病院 青木淳一獣医師】
僕らは動物そのものを診るのと飼い主さんから聞いた情報とを比べ、
色んな病気を推測しながら診察していかないといけない。
診療は飼い主さんとのコミュニケーションがうまく取れないとなかなか難しいと思います 。
子牛を産ませて出荷する和牛繁殖農家への往診
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依頼があれば畜産農家の応診も行っている青木獣医師。
この日はなかなか妊娠しない牛の治療を行いました。
現在は病院で行うペットの診療が中心になっていますが、開業後しばらくは応診に力を入れていて、全体のおよそ8割を占めていました。
家畜伝染病「口蹄疫」がきっかけで 状況が変化
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2010年4月に都農町で1例目が確認された口蹄疫は驚くほどのスピードで感染が拡大。
家畜伝染病予防法に基づき、感染が確認された農場のすべての家畜が殺処分され埋却されました。
その数29万7808頭。発生からおよそ4カ月が経った 8月27日、ようやく終息の時を迎えました。
- 【話:あおき動物病院 青木淳一獣医師】
ずっと牛と一緒に生きてきた70~80歳くらいのじいちゃん、ばあちゃんたち、生まれた時から牛と一緒に育ってきたという方がいっぱいいた。そういう人たちが突然、全部の牛がいなくなるというのは、相当なショックだろうと思っていました。口蹄疫によって不要不急の外出が出来ないという状況が続いて、このままだと人と人とがバラバラになってしまって「これはいかん」と思いました。
NPO法人「たわわハートねっと」を設立
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そこで青木さんと妻の青木智美さんご夫婦は、NPO法人「たわわハートねっと」を設立。
ごみ拾いや季節のイベントなど、住民同士の交流の場を作ることで、口蹄疫で失われた人と人とのつながりを取り戻し、互いに助け合える地域を目指して活動しています。
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毎週火曜日は「昼食会」。
高齢者を中心に集まり、用意したおかず(300円)を食べながら楽しい時間を過ごしています。
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- 【話:青木智美さん(青木獣医師の妻)】
みんなで楽しい話やためになる話を聞いたりしながら「お互いに助け合ってできることがあれば 無理なくやりませんか?」というのがここの目的。住民同士つながりを持ちながら過ごせるというのがいいかなと思ってます。
青木獣医師の思い
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- 【話:あおき動物病院 青木淳一獣医師】
本当に大変なことが起こってから絆を作ろうとしてもなかなかできない。
「絆・つながり・助け合い」の3つを目の前の手が届く範囲で一生懸命やっていれば、それがどんどん広がっていって、いろんなところに満ち溢れていく。それを続けていければいいなと思っています。