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蔵王の樹氷を形作る「アオモリトドマツ」 再生目指し高校生が木を増やす方法を研究

2024年8月29日 18:15
蔵王の樹氷を形作る「アオモリトドマツ」 再生目指し高校生が木を増やす方法を研究

蔵王の樹氷を形作る木「アオモリトドマツ」が枯れて樹氷が消滅の危機になっている問題についてです。いま、高校生たちがアオモリトドマツを再生し、樹氷を後世に残していこうと研究に取り組んでいます。

8月26日ー。村山市にある県立村山産業高校でスライド発表のリハーサルが行われていました。生徒たちが取り組んでいるのは蔵王の樹氷復活に向けた研究です。
蔵王では、2013年から2016年ごろにかけて樹氷を形作るアオモリトドマツをガの幼虫やキクイムシが食い荒らす食害が発生。
山頂付近のおよそ17ヘクタールの範囲でほぼ全てのアオモリトドマツ2万3000本が枯れました。枯れた木は自然による再生ができなくなっています。
アオモリトドマツが枯れ、葉っぱや枝が落ちたことにより、樹氷のサイズは以前より小さくなっていて、木が倒れてしまえば樹氷は無くなってしまいます。

当時の生徒(おととし)「上に行けば行くほど枯れている本数も多くなっていてショックが大きかった」

県内の高校で唯一、林業を学ぶ学科がある村山産業高校。蔵王の樹氷の現状に危機感を抱いた生徒たちはおととし(2022年)から、アオモリトドマツを再生し樹氷を残していこうと、課題研究として木を増やす取り組みを始めました。

当時の生徒「樹氷が少なくなって観光資源もなくなることに危機感を前より持っている。1本の苗から簡単に増やしていけるような研究が出来れば」

高山に生えるアオモリトドマツは、資材用として育てられたり、観賞用として植えられたりすることがないため、木を増やす方法が確立されておらず、種からも発芽しにくいとされています。
生徒たちはアオモリトドマツの植樹活動を行いながら、木を増やす方法を探る研究に取り組んできました。研究は先輩から後輩へと引き継がれながらことしで3年目を迎えました。

2年・山田隼瑛さん「森林関係の学科に進学したのでせっかくなら樹氷をやりたいと思った」
3年・下山こもさん「蔵王で初めて枯れている所を見て、自分が思っている以上に枯れていて、これは誰かが(研究を)つないでいかなければならないものだと思い、それを自分でやりたいと思った」

生徒たちは研究を通して、これまで難しいとされてきた枝を挿し木しての発芽を成功させました。
また、種から発芽させる場合は、水に入れた際に沈む重さがある種が発芽しやすいことを突きとめました。
ことし、生徒たちは、「農業高校の甲子園」とも呼ばれる、「日本学校農業クラブ全国大会」の県予選でこれらの研究成果を発表し、”最優秀賞”を獲得。
そしてきのう、秋田県で開かれた東北大会に出場しました。

発表「樹氷の復活まで多くの課題が存在します。しかし、私たちが継続して活動に取り組み、保全の活動が続いていくことでいつか山頂の樹氷が復活することを願い、今後も研究に励みます!」

審査の結果、最優秀賞は逃したものの、村山産業高校のアオモリトドマツの研究は優秀賞に輝きました。

3年・下山こもさん「自分たちらしく発表できたので満足。全国大会に行けなかったのは悔しいけど後輩たちがまた来年東北大会に来られるように、全国大会に行けるような発表に仕上げていきたい」

村山産業高校・樺沢智教諭「この活動は1年、2年で終わるものではない。後輩に引き継いで、長く、次の年、次の世代へと繋いでいく先に樹氷の再生というゴールがある」

村山産業高校では今後も、生徒たちによるアオモリトドマツの研究に取り組んでいく方針です。これまで発芽させた苗は3年ほど育てた後、県内の小中学校に寄贈し、児童・生徒たちにも樹氷の現状について考えてもらいたいとしています。