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がんサバイバーの私だからできること 「髪の毛のお医者さん」美容師として向き合う

2024年6月13日 16:31
がんサバイバーの私だからできること 「髪の毛のお医者さん」美容師として向き合う

あれから5年が経ちました。

佐藤千草さん「私は乳がんでした。乳がんです」



健康診断で見つかった「がん」。すぐに手術。抗がん剤治療がはじまって、髪の毛がぬけてしまいました。

佐藤千草さん「髪の毛なくなるというのが私美容師とイコールしちゃった。当時は悩みを打ち明けられないで黙々と治療していたので、相談ができるのは、私美容師なのでね」

自分の闘病体験をもとにがん患者むけの美容サポートを行っています。相談者はこの4年間でおよそ400人。
利用者は、彼女の事をこう呼びます。

利用者「私の髪の毛のお医者さんです。ぜひとも末永く、食されないように、そしてお互い健康でいましょうね。

山形市あかねが丘の美容室。「病気による脱毛をサポート」を売り文句にかかげているお店です
オーナーは佐藤千草さん。がんサバイバーです。
千草さんの店では週に一度がん患者むけの美容サポートの時間を設けています。相談のほとんどが抗がん剤治療による脱毛の悩み。ウィッグの注文です。

佐藤千草さん「私たちがカットして形付けますので。スタイルはいくらでも作れるので」


活動のきっかけは5年前の闘病生活。忘れないよう、症状や当時の思いを細かく記録しています。定期健診でみつかった「がん細胞」。ステージ1の乳がんでした。
この時2人の子どもは小学生。

佐藤千草さん「病気からは逃げられないから。前向きな気持ちだったり、闘う姿はしっかり母親としてやっていかなくては」

生きるのに必死だったあの頃、ウィッグ一つ選ぶにも相談するところが少なく苦労しました。

佐藤千草さん「相談できるのは 私美容師なのでね」

病と闘いながら資格をとり、美容サポートを始めました。
おととし、ウィッグを購入したい、と店を訪ねたのは山形市の伊藤恵美さん。病名は「卵巣がん」です。突然みつかったこの時、ステージは3まで進んでいました。
   
伊藤恵美さん「すごく早く進行するがんのタイプだったので、すぐに抗がん剤。信じられないまま抗がん剤治療にはいっちゃった」

抗がん剤治療が始まると髪の毛はみるみる抜け落ちました。千草さん、ある提案をします。

佐藤千草さん「いくよ」
伊藤恵美さん「どうぞ」

残った髪の毛をすべて切り落とします。伊藤さんはその姿も撮影させてくれました。

伊藤恵美さん「会社にももう断髪してきますといってきた。思ったほど動揺はないです。動揺がないっていうか、覚悟してたわけじゃないんですけど、受け入れているので」

抗がん剤の副作用がなくなり髪の毛が生えそろうまでウィッグをかぶっての生活です。

伊藤恵美さん「そんなに違和感ない被りやすいです」

美容師の千草さんはウイッグ選びから、スタイリング、そしてメンテナンスまでサポートしています。
  
佐藤千草さん「大変な時にやっぱりいろいろ相談したって言う安心感でやっぱり来てくれてる方が多いんじゃないかな」

がん患者むけの美容サポートを始めて4年。およそ400人の相談に答えてきました。今は抗ガン剤治療が終わりウィッグをとるため、育毛メニューを受ける利用者が多くいます。「いつも元気を与えられる存在でいたい」と千草さん。

佐藤千草さん「病気には1番笑いがいいんだそうです」

千草さん「まだ短いんだけど、産毛が毛になってきている。これが育つとね」

おととし抗がん剤治療を行った50代の女性「本当に一時期はすっかり抜けてました」
(生えてくる喜びって?)「すごく褒めてくれる。のびましたね」

佐藤千草さん「やっぱり悩みありながらも、それに上書きできるような楽しさがあればちょっと忘れられる。いろんな悩みを解決できるようなところになったらいいなと思っている」

「似てます?」

この日、店の手伝いをしていたのは高校生になった長女の伶那さん。美容師の仕事に興味があるようです。

(お母さんの仕事は時々見たことは?)
伶那さん「時々見てます。興味はありますね。会話が1番すごいなと思って。ずっと続けてられるのはすごい」

笑顔でサポート。でも、利用者の悩みをきいているうちに「再発」の二文字が頭をよぎります。

佐藤千草さん「私22日に検査なんですよ。5年目の検査でCT検査なんですけど。ドキドキ。それでリセットなればいいんだけど」

平日の朝は、5時半。長女・伶那さんの弁当づくりから始まります。

佐藤千草さん「男子の弁当になるともうちょっと茶色が多くなるんでしょうけど、女子なんで」

この日、山形市立病院済世館で年に一度の検査に臨みました。乳がんの再発率はおよそ3割といわれています。
お客さんとの食事会や旅行。やりたいことはこの日を乗り越えてから、と我慢してきました。
結果は…。

担当の医師「順調に経過されて、5月をもって5年。薬は10年なので折り返しよろしいでしょうか?長丁場ですけど」

ほっとひと安心。夜は家族でお祝いです。

佐藤千草さん「心配だった?そうありがとね。残念ですけど。1年長生きしますので」
伶那さん「一年と言わず生きてくださいね」

千草さん、美容師に興味をもつ娘へ、苦労話も少し伝えておきたくて…。

佐藤千草さん「30歳まで店を出そうと思ったの。お金たまんないじゃん、だから内緒であの時スナックで時給800円、でも7年働いた」
伶那さん「やっぱり聞くと難しいなと思うふんだけど、でもそれ以上に見てて憧れるかな」
千草さん「そうなんだー。真面目にやんないとダメだと思う」

この日店を訪ねてきたのは2年前にウィッグを購入。あの時、髪の毛をバッサリ切った伊藤恵美さんです。抗がん剤治療を乗り越え髪はもとの長さにまでもどりましたが…。
  
伊藤恵美さん「髪の毛が2月下旬にこそっと抜けてしまって。なんか抗がん剤とかそういう影響ではなく。もしかしたら新型コロナの後遺症か何かかな」
佐藤千草さん「ちょっとこの辺のホルモン的な問題だけでこの辺が伸びづらい」

抗がん剤治療が終わっても元の様に髪が生えてこないケースはよくあることだといいます。体質の変化にも戸惑います。

伊藤恵美さん「こんなに細くなかったですよね」
佐藤千草さん「許容範囲。髪の毛が徐々に細くなったじゃなく、一旦リセットした。種作りから始まったじゃない。私も女性ホルモンをストップさせる。薬飲んでるから。前髪とトップが伸びない」

薬の処方は10年。がんと闘いはこれからも続きます

伊藤恵美さん「同じ立場の人がいるって言うだけで、私は不安が80%解消される」

      


伊藤さんが2年前に使っていたウィッグ。今は必要ないけれどきれいに保管しておきたいとこの日メンテナンスを依頼しました。

伊藤恵美さん「これがあったおかげで全然普通に出かけられたし、あと出勤もできたし、今となってはほんとにお守り」

お守りにしたいと預かったウィッグ。千草さんは娘の伶那さんと洗いました。
  
佐藤千草さん「コーティング剤が入っているから、洗えば洗うほど長持ちする」

再発の不安を抱えながらも前向きに、おしゃれに生きていく。がんと闘う千草さんの決意です。