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出荷できなくなったサクランボを活用 山形県産佐藤錦がクラフトビールに

2024年9月13日 16:28
出荷できなくなったサクランボを活用 山形県産佐藤錦がクラフトビールに

国連とYBCを含む全国100以上の放送局などが「何もしないともっと暑くなる」をテーマに行っているキャンペーン「1.5℃の約束」。気候変動防止に向けた取り組みを進めている山形県内の企業などを紹介します。1回目は、高温障害によって出荷できなくなったサクランボを活用しようと新たな挑戦を始めた山辺町の生産者に注目します。

グラスに注がれるのは、県産サクランボ佐藤錦をぜいたくに使ったクラフトビール。その名も、「GOHOBISATONISHIKIIPA」です。

客の感想「ほんのり甘い感じでおいしいですね」「けっこう味わい深いフルーティーな感じ。サクランボの味がほのかにして飲みやすい」

使われている佐藤錦はすべて暑さの影響で完熟が早まったため収穫が間に合わず、味に問題はないのに出荷できなかったものです。「廃棄食品を減らす」、「環境に配慮した製品を選ぶ」といった気候変動防止につながる取り組みです。
山辺町で13代続くサクランボ園地を営む沼尻淳さん。

沼尻農園 沼尻淳さん「5月からの暑さで色づきが早く、実も大きくならず。去年は1トンくらいの収穫量があったが、ことしは3分の1くらいの300キロ」

今シーズンは高温が続いたため、周りの園地でも収穫が間に合わず、熟してしまった実が多くみられたといいます。これまで、こうした実は廃棄せざるを得ませんでした。

沼尻農園沼尻淳さん「この現象は続くのかなと思っていて、農家さんの収益自体もかなり落ち込むんじゃないかと思う。その一端でもいいから、少しは貢献出来たらなと」ー

県によりますと、ことしのサクランボ収穫量は推定でおよそ8700トンと記録的な凶作となりました。高温が続いたことが理由で、平成以降では1994年に次いで2番目に少なく、30年ぶりに8000トン台に落ち込みました。ことしは3000トン余りが収穫が間に合わないなどの理由で廃棄されたとみられています。
沼尻さんは出荷できないサクランボを活用できないかと5年前からこうしたサクランボを買い取り、活用方法を模索してきました。
そしてことし挑戦したのがクラフトビール造りです。

「ピューレなどはコストが見合わなかった。今回は丸ごと使えてクラフトビールにできるということで、チャレンジの第一歩」

ビール造りは米沢市内のクラフトビール醸造所に協力を仰ぎました。
使用したのは買い取った佐藤錦合わせて55キロ分。およそ600リットル分のクラフトビールを仕込みました。
仕込みから一か月後の9月4日。

沼尻農園沼尻淳さん「私もまだ見ていないので、 楽しみです」「(Qこちらが完成した)GOHOBISATONISHIKIIPA」
「どうやったらいい形で商品化になるかという構想を10年くらいやっていた。最初の思い入れのある商品になると思います」

その日の夜、山形市で開催されたクラフトビールのお披露目会。飲食業界の関係者が集まりました。沼尻さんにとってもこれが初めての試飲です。

沼尻農園沼尻淳さん「…おいしい!あざっす!」
BALLADE鈴木秀晴店長「良い感じの酸味もあるし、飲みやすくておいしい。(Qお店の方に置くのは)ちょっと検討してみたい」

価格は330ミリリットル1本当たり税込みで1650円。この価格設定には協力してくれたサクランボ生産者への強い思いがあります。

沼尻農園沼尻淳さん「サクランボの買い取り価格を高くしていきたいので、今回の販売価格を高めに設定した」

「サクランボの香りづけがあって、かなり飲みやすい。スパークリングっぽいからカクテルビールっぽく売った方がいいかなと。女性向けに幅広く売り出せば」「シャンパングラスみたいなものに注いで出せれば、1杯2000円でも売れると思う」

沼尻農園沼尻淳さん「マーケティングのプロの人の話は大変勉強になった。具体的にうちのお店ではこういう風に売りたいという話まで言ってもらえたので、やってみようと思う」

このクラフトビールは沼尻さんの農園のネットショップで販売中で、今後、およそ7000本分のビールを新たに製造する予定です。近年、サクランボ生産者の深刻な悩みとなっている高温。丹精込めて育てた実を余すことなく農家の収入につなげるー。沼尻さんの挑戦は続きます。