救えなかった家族 進まぬ復興 能登半島地震発生から1ヶ月後の被災地の現状は
古川記者「私たちは今回、地震や火災により100人以上が犠牲となった輪島市と石川県内でも住宅の倒壊など建物被害が最も多かった七尾市を取材しました」
間もなく震災から1ヵ月となる1月31日の早朝。
私たちは金沢市から輪島市へと向かいました。国道などを通るおよそ110キロの道のり。通常は2時間ほどで到着します。
しかし輪島市に近づくにつれ道路の至る所にゆがみや崩落が現れます。時折り車も大きく揺れます。
古川記者「輪島市内中心部です市内は至る所で住宅などが大きく崩れています」
輪島市に到着するまでおよそ3時間半。通常より1時間以上長くかかりました。
輪島市内で私たちは、倒壊した自宅で家族の思い出を探す一人の男性と出会いました。楠健二さん(55)、地震で48歳の妻と19歳の長女を亡くしました。地震で倒壊した隣のビルが自宅を押しつぶし、中にいた2人は下敷きに。楠さんはがれきに挟まれた2人を何とか救い出そうとしましたが、助けることは出来ませんでした。
楠健二さん「妻と長女が亡くなってるから本人の物が見つかるとやっぱり悲しくなる。これも亡くなった娘が女房と俺に白と黒のマグカップをくれた」
あの日から、楠さんの時間は止まっています。毎日のように自宅を訪れては、2人との思い出を探しています。
楠さん「発災から何日たったとかそんなのはどうでもいいんです。 2か月たって2人が帰ってくるならいつまでも待つけど、何も変わらないから何も変わってないあの時のまま多分俺はずっと変わらない。だって2人は戻って来ないじゃない」
古川記者「県内でも建物被害の多かった七尾市内です。震災から1ヵ月以上が経過しましたが街の至る所で建物が崩れたままとなっています」
輪島市から60キロ離れた七尾市です。崩落したままの建物、隆起しひび割れた道路、地震の規模の大きさを物語っています。
七尾市内にある本行寺。私たちはこの寺の住職、小崎学円さん(83)に建物の被害を見せてもらいました。
本行寺・小崎学円住職(Q・揺れはどう感じましたか)「体が宙に飛んだ。それで膝を打った観光客もちょうど外に出たときでみんな地面に座っていた」
連日、片付け作業に追われ、寺の中は今も地震当日のままです。崩れた墓石や灯籠、それにお堂の屋根もそのまま。修復のめどは立っていません。
小崎学円さん「完全にここは傾いてる。ここの柱は垂直、まっすぐだったけれど1月1日の地震で傾いている」
寺の修復には数千万円かかかる見込みだといいます。地震発生から1ヵ月。小崎さんは自分自身に言い聞かせている言葉があります。
本行寺・小崎学円住職「被災者の方も『心配するな何とかなる』とそう心に留めていてほしい。私自身もそうだけど何とか一歩一歩それしか方法はない」
小坂アナ「今回の地震によって大きな被害・深い傷を負った方が多い。まだまだ復旧への道のりは長い、そんな状況でしょうか」
古川記者「突然、家族を失ってしまった方、突然、家を失った方。1ヵ月というのは客観的な時間の経過でしかなく整理を付けられない感情を持ちながら、日々、作業にあたっている。そんな風に感じました。石川県内では、今も安否が確認できない人が11人います。
現地の皆さんに話を聞くと、「ようやく家の片付けを本格的に始めた」「何とか作業にあたっているが途方に暮れてしまう」と話す方もいて、まだまだ復旧の入口という印象でした。
山川アナ「人への被害。そして建物への被害。まだ気持ちの整理は付かない状況かと思います。地震から1ヵ月経ち、電気や水などライフラインについてはどういった状況でしょうか?」
古川記者「石川県内では、地震直後最大で4万戸近くで停電が発生しました。現在もおよそ1500戸が停電しています。また、水道については、最大で11万戸で断水が発生。2月5日現在、合わせて3万8000戸以上で断水が続いています。断水の続く七尾市の住民に話を伺うと、停電よりも断水がとてもにストレスだと話していました。顔を洗う・手を洗う、何よりもトイレが流せない。生活用水を日々こんなに使っていたとは想像していなかったなど、早期の復旧を求める声が多く聞かれました。こうしたライフラインや各地を結ぶ道路について、全国各地から多くの専門業者が被災地に入り、連日、復旧作業にあたられています」
小坂アナ「今回の能登半島地震はどういった特徴が挙げられますか?
古川記者「孤立集落の発生です。今回の能登半島地震では、交通網の寸断により、能登半島北部への移動が困難となりました。また、石川県内では、最大で24地区合わせて3345人が長い人で2週間以上孤立状態となりました」
山川アナ「こうした集落の孤立は、山形県内でも発生する可能性はあるんでしょうか」
古川記者「はい、県によりますと、災害時に道路が寸断された場合に孤立する危険性のある集落は県内で441か所。住民は1万1151世帯、2万7599人に上ります。地域別では、最も多いのが村山で175か所、次いで、置賜が122か所、庄内が74か所、最上が70か所となっています。これらのデータは20年以上前の調査をベースに集計されていて、実際にはさらに多い可能性もあるということです」
小坂アナ「交通網が寸断した場合には、支援物資が届かないといったことも想定されますね」
古川記者「はい、国は、最低でも3日分出来れば1週間程度の食料や飲料水の備蓄を呼びかけています。飲料水の場合は少なくとも1人当たり1日1リットル。食料は米であれば2キロ程度としています。更に今回のように上下水道が使用できないなどライフラインの供給が止まる可能性も考えると例えば、体を洗う・トイレを流すなどの生活用水なども追加で必要になるといえます」
「いつ起こるか分からない地震災害。自分自身、そして、家族の命を守るため、出来る限りの備えをすることの重要性を改めて強く感じました」