「もう一度両親の墓参りをしたい」旧ソ連に抑留された酒田市本籍の男性の娘 遺志受け継ぐ
戦後旧ソ連によって抑留され50年以上帰国できなかった酒田市に本籍のある男性がいます。その男性は、自身の両親が眠る酒田にもう一度墓参りに訪れるのが念願でしたが叶わず、亡くなりました。亡き父の遺志を果たそうと15日、男性の娘が酒田市を訪れました。
酒田市を訪ねたのは、中央アジアの国カザフスタンに住む阿彦イリーナさん(57)です。
阿彦イリーナさんの父・阿彦哲郎さんは1930年に樺太、現在のロシア・サハリン州に生まれました。酒田市は哲郎さんの両親の故郷で、哲郎さんの本籍地でもありました。
哲郎さんは終戦後も樺太で働いていましたが1948年、突然、旧ソ連軍によってシベリアに送られ、強制労働を強いられました。1954年にカザフスタンで解放された後現地で結婚し、家庭を持ちました。
1994年、哲郎さんが63歳のときに初めて日本に帰国した様子を撮影した映像です。酒田市を訪れましたが、当時すでに両親は他界していました。
阿彦哲郎さん【当時】「お父さんお母さんの墓参りをするということになって大変喜んでおりましたが今は悲しいことで胸がいっぱいになります」
哲郎さんは2020年にカザフスタンの自宅で89歳で亡くなりました。生前、「もう一度、酒田市を訪れ両親の墓参りをしたい」と願っていたといいます。
阿彦イリーナさん「非常に性格は優しくて何よりも正直なまっとうな人でした。自分の父親なのでそれ以上言うとこそばゆい感じがします」
哲郎さんの長女のイリーナさんは父の遺志を受け継ぎ、哲郎さんの両親の墓を訪れ手を合わせました。
イリーナさん「お父さんの魂を一緒に連れてきたつもりでお参りしました。喜んでくれていると思います。本当にお父さんは大変な人生を送ってきたのでそのことを皆さんにわかっていただけたらありがたい」
イリーナさんは抑留によって祖国日本と引き離された哲郎さんの半生を広く伝えていきたいと話しています。