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法改正で“手作り漬け物”ピンチ 廃業決めた業者も 味継承と安全性の両立課題 山梨県 

2024年5月14日 19:07
法改正で“手作り漬け物”ピンチ 廃業決めた業者も 味継承と安全性の両立課題 山梨県 

 地域で愛され、土産物としても人気の「手作りの漬物」がピンチを迎えています。

 法改正による猶予期間が終わり来月から制度が変更される食品衛生法への対応ができずに廃業を余儀なくされる事業者もあるなど、地域の味の継承と安全性の両立が課題となっています。

 鳴沢村の道の駅なるさわに並ぶたくさんの漬物。こちらの特産品の中でも、売り上げ上位を占めています。

 漬物の多くは地元の人や組合が手作りの製法を守りながら作っていますが、こうした地域の味が衰退していく危機に直面しています。

 道の駅なるさわの開業以来、29年にわたり漬物を卸している磯貝食品の渡辺洲美雄さんです。

 現在、道の駅なるさわの漬物売り場のうち約半数が磯貝食品の漬物で、鳴沢菜やナス、白菜など約30種類の漬物を製造しています。

 これまで46年にわたり漬物の製造を行ってきた渡辺さんですが、5月末をもって漬物製造を廃業することに決めました。

 背景にあるのは6月1日からの食品衛生法の制度変更です。

 食品衛生法は白菜の浅漬けを食べ8人が死亡した北海道の集団食中毒を受けて改正されるもので、これまで許可が必要なかった漬物の製造販売が許可制となります。

 磯貝食品 渡辺洲美雄さん
 「手が汚れているときも(肘で)開け閉めできる。だからこのレバーにしている」

 渡辺さんはこれまで、レバー式の水道など許可条件に合う設備の導入を進めてきましたが、ほかにもシンクを2つにするほかカーテンの取り換えなど多額の費用がかかるため、5月末での廃業を決めました。

 磯貝食品 渡辺洲美雄さん
 「予算的に300~400万円かかる。『跡は継がない』と言われているので、改造してもしょうがないことが(廃業の)一番のきっかけになった」

 廃業の知らせに道の駅なるさわは…

 道の駅なるさわ 小林里恵さん
 「毎年リピーターのお客も多いので、今回廃業になるのはみんなさびしいと思う。安全なものを食べてほしいので、いろいろな事が変わっていくのはしょうがないと思うが、“その人しか作れない味”があるのでちょっと複雑な思い」

 大手のスーパーにはないさまざまな商品を取り揃えていることが魅力の道の駅。地元の味が薄れていく事に危機感を感じています。

 道の駅なるさわ 小林里恵さん
 「できれば美味しいお漬物がずっと食べられるようにいろいろな所が協力して、“誰かの味を守っていけたら”いいなと思う」

    山梨放送