×

【独自解説】北朝鮮で放送されたツッコミどころ満載の『ゴルフ番組』 摩訶不思議なボールで“100切り”連発⁉“初プレーでホールインワン11回・34打で回った天才”の息子・金正恩総書記の思惑とは―

2024年7月28日 16:00
【独自解説】北朝鮮で放送されたツッコミどころ満載の『ゴルフ番組』 摩訶不思議なボールで“100切り”連発⁉“初プレーでホールインワン11回・34打で回った天才”の息子・金正恩総書記の思惑とは―
北朝鮮で放送されたゴルフ番組の謎

 2024年6月~7月にかけ、北朝鮮で全5回にわたり放送された“ゴルフ番組”。演出にもこだわり、一見日本と変わらぬ光景ですが、よく見ると映像には違和感が…。番組内で起きた“摩訶不思議な現象”とは?番組を放送した狙いとは?龍谷大学・李相哲教授の解説です。

「ゴルフをすると直射日光を浴びてビタミンDを摂取できる」北朝鮮で日曜午後に放送されたゴルフ番組の全容公開

 北朝鮮国内で5回にわたり放送された、ゴルフを紹介する番組。1回目は1番ホール、2回目は2~6番ホール、3回目は7~9番ホール、4回目は10~15番ホール、そして5回目が最終回で16~18番ホールです。

 番組内では、『朝鮮中央放送委員会』のカン・イルシム記者がゴルフ場の所長らと共に実際に18ホールを回り、細かなルールなどを紹介していきます。

(『朝鮮中央放送委員会』カン・イルシム記者)
「ゴルフは、ゴルフクラブを持つ手と、腕・腰・膝のバランスの調節と、体の中心の移動と、ボールをより遠くへ正確に飛ばすというスポーツです」

 ドローンを使ってコース全体を映し出すシーンや、ゴルフ番組ではお馴染みの『ボールの軌道を追った演出』を盛り込むなど、なかなかの力の入れようです。

 クラブハウス内を捉えた映像には、ジムやシミュレーションゴルフの部屋があり、プレーをしている人の周りにはキャディーが同行するなど、日本と変わらぬ光景が。

 そして、VTRの途中には、ゴルフをする上でのメリットまで紹介。

(ナレーター)
「ゴルフをすると、直射日光を浴びてビタミンDを十分に摂取できるし、脳の機能を高めて、集中力を改善することができ、ストレスを解消するなど、良い点が多いです」

(プレーヤー)
「気分が悪くても、一度だけでも遠くまで飛んだら気分が爽快になるし、5mか7mの距離をシューッと転がって入ったら、それも気分が爽快になる」

「我ら人民たちのための愛のコースです」実は関わりが深いゴルフと北朝鮮 女性記者を起用した金総書記の思惑とは?

 『北朝鮮とゴルフ』といえば、2011年に亡くなった金正日(キムジョンイル)総書記が“初めてのゴルフで11回ホールインワンを達成し、34打で回った”という伝説を持つなど、関りの深いスポーツです。

 しかし、あくまでプレーできるのは一部の上流階級のみ。一般国民には手が届きません。それなのに、日曜日の午後に5回にわたって放送した理由として指摘されているのが、「海外から観光客を呼び、外貨を獲得するため」です。

 また、女性記者を登用したのは、金正恩総書記が“国際社会の仲間入りを果たそうとしているから”だといいます。元エリート外交官の脱北者リ・イルギュ氏によると、「2012年の韓国大統領選挙で、朴槿恵大統領が当選したじゃないですか。金正恩はそれを見て、大変ショックを受けていた。『我々も女性を大々的に起用してこそ、国際社会で正常な国家になれる』と」ということです。

 映像の中で語られたのは、そんな金正恩総書記への感謝でした。

(『平壌ゴルフ場』リ・ギソン所長)
「この全ての競技場の隅々に、私たちの敬愛する総書記同志の愛が根付いていない所はありません。全てのコースは、総書記同志によって作られた、我ら人民たちのための愛のコースです」

ツッコミどころ満載の最終回!全員が“100切り”という記録的プレーは摩訶不思議なボールのおかげ?

 2024年7月14日に迎えた最終回。ここまで15ホールを終え、トップを走るのは、『平壌ゴルフ場』の所長であるリ・ギソン氏。そのあとに、チョン・ギョンヒさん。そして、進行役のカン・イルシム記者が続く形に。番組冒頭、始まったのは、キャディーへのインタビューでした。

Q.勝負は、もう決まったも同然ではないでしょうか?
(キャディー)
「まだ結論を出すのは難しいです」

Q.自信はありますか?
(キャディー)
「はい、あります。私のお客さんは動作が完璧で、ボールが飛ぶ場所も正確です」

 そして、いよいよ勝負の16番ホールが始まる…かと思いきや。

(キャディー)
「お客さんのボールがカッコ良く飛んでいくと、そのお客さんのキャディーとして…」

 再びキャディーのインタビューが始まり、そのまま2つのホールは終了。

 しかも、映像をよく見てみると、このシーンではボールを芯で捉えていないにも関わらず、次のカットでは…。

 なぜかボールは大空へ飛んでいくという、摩訶不思議な状況に!

 そして、ついに始まった最終ホールも、陽気な音楽に乗せたダイジェストシーンが45秒ほど流れ、そのまま3人はホールアウト。

 果たして、勝負の結果は―。

(チョン・ギョンヒさん)
「所長同志が、前半後半にわたり86打。記者同志が94打、私が92打でした。今日の試合では、所長同志が1位、私が2位、そして記者同志が3位になりました」

 経験者でもスコア100を切るのが難しいというゴルフで、80台・90台を出す好記録に!

 それでも、カン・イルシム記者は…。

(カン・イルシム記者)
「今回の試合では、思ったより良いスコアを出すことができませんでした」

 いつもより調子が悪かったようです。

「目的は外貨獲得と国のイメージアップ」ゴルフ番組を放送した狙いは?専門家が分析

Q.この番組の狙いは、『とにかく外国の人に来てもらいたい』ということですか?
(龍谷大学・李相哲教授)
「やはり“中国の金持ち”を狙っているのかな、という印象があります。北朝鮮の人民がゴルフをできる状況ではないです。目的は外貨獲得と国のイメージアップ、“普通の幸せな国なのだ”というイメージを見せたいのでしょう」

Q.一方で“粛清が激化している”といった情報もあり、北朝鮮という国は混迷状態にありますよね?
(李教授)
「特に若い人たちの忠誠心がなくなってしまったので、金正恩は焦っているんだと思います」

Q.アメリカの大統領がトランプ氏になる可能性もある中、中国としては北朝鮮にあまり動いてほしくはないでしょうね?
(李教授)
「だから中国は今、北朝鮮と距離を置いています。アメリカの大統領選が終わったら、北朝鮮問題も大きく動く可能性があります」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年7月24日放送)