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【独自解説】人数減少で多忙な公務…国会で始まった“皇族減少対策”の議論、「2つの案」が出されるものの課題山積…男系天皇・女性天皇・女系天皇については「その議論は時期尚早だということ。いわば、先送り」と専門家が指摘する理由

2024年5月21日 19:15
【独自解説】人数減少で多忙な公務…国会で始まった“皇族減少対策”の議論、「2つの案」が出されるものの課題山積…男系天皇・女性天皇・女系天皇については「その議論は時期尚早だということ。いわば、先送り」と専門家が指摘する理由
皇族減少、今後どうなる―

 現在、未成年の皇族は悠仁さま一人となっている状況の中、国会で皇族減少対策の議論が始まりました。“2つの案”が出ていますが、どちらにも課題が…。果たして、今後どうなるのか?元宮内庁職員・山下晋司氏の解説です。

皇位継承資格を持つ男系男子は3人だが、若い世代は悠仁さま一人…高齢化や結婚後の皇籍離脱で皇族人数は年々減少、残された皇族にのしかかる大きな負担

 皇室は現在17人で構成されていて、男性は上皇さま(90)、天皇陛下の叔父・常陸宮さま(88)、天皇陛下(64)、秋篠宮さま(58)、悠仁さま(17)の5人のみ。若い世代は悠仁さま一人となっています。

 皇室典範によると、皇位継承資格を持つのは『男系男子』で、順序は①皇長子②皇長孫③その他の皇長子の子孫④皇次子及びその子孫⑤その他の皇子孫となっていますが、現在これらに当てはまる方はおらず、秋篠宮さま・悠仁さまは⑥の『皇兄弟及びその子孫』に、常陸宮さまは⑦の『皇伯叔父及びその子孫』に当てはまります。これを踏まえ、現在の皇位継承順位は第1位が秋篠宮さま、第2位が悠仁さま、第3位が常陸宮さまとなっています。

Q.かなり少ない人数ですね?
(元宮内庁職員・山下晋司氏)
「少なくなるのは今に始まったことではなく、ずっと前からわかっていたことですが、それを今後、皇位継承・皇族数の減少という二つの課題をどのように法改正して次に繋げていくか、というところです」

 宮内庁ホームページによると2024年4月の動静件数は100件以上あり、天皇ご一家・約50件、秋篠宮ご一家・30件以上、他の宮家・30件以上と、皇族の人数減少により公務の負担が増えています。

 天皇陛下は2024年2月の記者会見で、皇族の課題について「男性皇族の数が減り、高齢化が進んでいること、女性皇族は結婚により皇籍を離脱することといった事情により、公的活動を担うことができる皇族は、以前に比べ減少してきております。皇室の将来とも関係する問題ですが、制度に関わる事柄については、私から言及することは控えたいと思います」と語りました。

 皇位継承の課題で度々話題に上がるのが、男系天皇・女性天皇・女系天皇です。男系天皇は「父方が天皇の血筋を持つ男性」、(男系)女性天皇は「父方が天皇の血筋を持つ女性」、女系天皇は「母方のみに天皇の血筋を持つ男女」という違いがあります。過去をさかのぼって女性天皇は8人が即位していますが、女系天皇は歴史上いません。

Q.女系天皇は、性別は関係ないということですよね?
(山下氏)
「そうです。男性であれば、“女系の男性の天皇”ということになります。“男系維持派”には、『女系自体を認めない』『それはもう天皇ではない』という考えの人もいます。今まで女性の天皇はいらっしゃいましたが、“男系の女性天皇”しかいらっしゃらなかった、ということです」

これまで何度も議論されるも進まなかった皇族数確保の課題 令和3年にまとめられた“2つの案”も課題が山積み「非常に難しいと思います」

 2024年5月17日、皇族数確保へ国会で議論が始まり、衆参両院の正・副議長、林芳正官房長官、与野党の代表者が参加。「安定的な皇位継承のあり方」について、それぞれの考え方を説明しました。

 皇族の課題については、これまでも何度か国会で議論されてきました。平成17年(2005年)小泉内閣では皇室典範に関する有識者報告書がまとめられ、「女性天皇・女系天皇を容認」「配偶者も皇族とする」などと明記されていましたが、翌年の平成18年(2006年)、悠仁さまの誕生に伴って議論はストップ。

 平成24年(2012年)野田内閣でも「内親王が一代に限って創設する案」「結婚後は皇室を離れるが、国家公務員として皇室活動ができる案」などがまとめられましたが、2か月後に政権交代して安倍内閣となり、またもや議論がストップ。

 平成29年(2017年)6月には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立し、付帯決議として「安定的な皇位継承や女性宮家創設について、天皇陛下の即位後、速やかに検討すること」を求めましたが、しばらく動きがありませんでした。そんな中、令和3年(2021年)に有識者会議で“2つの案”などがまとめられました。

 皇族減少対策として検討されているのが、案①『女性皇族が結婚後も皇室に残る』、案②『旧宮家の男系男子を養子に迎える』という2つの案です。この2案で十分な皇族数が確保できない場合は、「皇統に属する男系の男子を、法律により直接皇族とする案」も検討されています。ただ、2つの案には、どちらも課題があります。

 案①『女性皇族が結婚後も皇室に残る』は、現在の皇室典範には「皇族女子は天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇室の身分を離れる」とあり、法改正・特例法が必要となります。また、これが認められたとしても、「女性皇族の配偶者と子どもの身分がどうなるか」にも課題が残ります。

Q.仮に配偶者が皇室に入らなくても、一般の方としてプライバシーやセキュリティーを守りながら…というのは、なかなか難しそうですね?
(山下氏)
「非常に難しいと思います。特に、お二人の間に生まれたお子さまについて、どうなるのかが非常に心配です。今の時代を考えると、お名前がどうだ学校がどうだ写真がどうだと、普通の子どもであれば守られるわけですけど、非常に中途半端なお子さまというのは、可哀想で仕方がないです」

 案①『女性皇族が結婚後も皇室に』に対する与野党の主張ですが、自民党・公明党は「女性皇族の配偶者と子どもは、皇族の身分を持たないことが適切」と賛成、立憲民主党は「女性皇族の配偶者と子どもの身分をどうするかは、慎重な議論が必要だ」とするも賛成、日本維新の会は「皇位継承資格を女系に拡大することにつながるのではないか」と懸念を示し、共産党は「女系天皇・女性天皇について正面から議論すべきだ」と異論を唱えています。

 山下氏は、「身分の登録が、妻が皇統譜・夫と子が一般の戸籍と家族が分かれるのは、ふさわしくないのでは」との見解を示しています。

Q.家族なのに、籍が分かれてしまうということですね?
(「読売テレビ」高岡達之特別解説委員)
「一般人にはいろんな義務・権利がありますが、天皇陛下は当然のことながら、皇室にお生まれになると選挙には関わらないことが有名です。特に戸籍において、ご家族の中で立場が違うというのは大きいと思います」

“一般の方”が突如皇族になるリスクと課題―「生身の人間を相手にした法律」故に難しい「法改正」

 戦後、昭和22年(1947年)にGHQの指令により皇室財産を国庫に帰属したことにより、経済的に維持できず11宮家51人が皇籍離脱、旧宮家となりました。皇室典範には「天皇及び皇族は養子をすることができない」とあり、案②『旧宮家の男系男子を養子に』についても法改正・特例法が必要です。また、「一般人として過ごしてきた方が突如皇族になることに、国民の理解を得られるのか」という課題もあります。

 この案に対し、自民党・公明党は「養子は皇位継承資格を持たず、後に生まれた男の子が継承資格を持つことが適切」として賛成、立憲民主党は「養子の対象となる人がいるかを意思と共に確認すべきだ」として保留、日本維新の会は「旧宮家の男系男子を養子にする案は高く評価できる」と賛成、共産党は案①と同様の理由で反対としています。

 山下氏は、「対象となる方へのプライバシー侵害、第三者からの圧力などが出てくるのでは?」との見解を示しています。

Q.自民の主張は、“一代はさむ”ということでしょうか?
(山下氏)
「要は、生まれた時から国民が存じ上げているといいますか、“皇室で生まれて育った方が大切だ”という考えです。また、養子の対象になる方が、場合によっては養子に『入れ』とか『入るな』とか、そういった外からの圧力は当然考えられますし、週刊誌を中心にいろいろとプライバシーに踏み込まれるだろうなと。そういうものを乗り越えて養子に入っていただける方がいらっしゃるのか、私は疑問を持っています」

 額賀衆院議長は「各党会派の御意見の調整をした上で、国民的な合意・総意をまとめていく」としていて、今後は毎週木曜日に会議をし、今国会中の取りまとめを目標としています。

Q.「女性天皇」という議論は、現段階では出てきていませんか?
(山下氏)
「有識者会議の報告書も今の議論も、男系が前提といいますか、男系寄りの内容になっています。皇位継承を男系・女系・女性天皇だという議論は、時期尚早だということです。要は、悠仁親王殿下がこれから結婚されて、男のお子さまが生まれるかもしれないので、その状況を見て考えればいいだろうと。いわば、先送りしましょうということです」

Q.安定的な皇位継承の在り方は、我々国民も考えていかないといけないですね?
(山下氏)
「そうですね。あとは、生身の人間を相手にした法律なので、できればご本人たちの意見を何らかの形でお聞きできればいいなと思いますが、法改正なので、その辺りは難しいですね」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年5月20日放送)