【何が】「京都のブランド農産物に汚点残した」京野菜“九条ねぎ”連続窃盗 捜査終結したが“未解決の事件”も 約2.3トン窃盗の背景には、まさかの「猛暑」
京都府南部で栽培されている伝統的な京野菜「九条ねぎ」。この夏、その農家たちの大きな怒りを買った連続窃盗事件が発生した。収穫期を目前に「九条ねぎ」が相次いで盗まれたという事件で、なんと連続して逮捕されたのは、どちらも“同業者”の『ねぎ農家』… この夏の猛暑の影響で九条ねぎがうまく育たず、想定していた刈り取り量を確保できなかったことから、今回の犯行に及んだと言う。逮捕・起訴された男は自身の畑を持っていたが、今は農家をやめて別の仕事に就いているというが…
■窃盗したのは5件…総量は約2.3トン 逮捕されたねぎ農家は去年から経営「うまく育てられず…」
1300年の歴史をもつ京野菜の代表格、甘くて風味のある「九条ねぎ」。京都府南部の久御山町周辺が一大産地で、年間を通して栽培されている。広大な畑の周辺は、夜間は暗闇に包まれ、街灯や民家もない。
警察によると、久御山町と隣の宇治市では今年6月以降、九条ねぎの窃盗被害が8件発生、1回あたり100キロを超える大量のねぎが盗まれていた。被害総量は3.5トンを超え、木津川を挟んだ八幡市でもねぎの窃盗被害が報告されていた。
8月末、久御山町の畑に設置された防犯カメラは、大きなかごを持った男が次々とねぎを刈り取る様子を捉えていた。翌9月、窃盗の疑いで逮捕・起訴されたのは山本英雄被告(28)。久御山町に約10年間も出入りしていた“同業者”の九条ねぎ農家だった。
警察や関係者によると山本被告は高校卒業後、久御山町の九条ねぎ農家のもとで働いたあと、去年からねぎ畑の経営を始めたという。山本被告は取引業者との間で「週800キロを納品する契約」を結んでいたにもかかわらず、不作で収穫が思うようにいかなかったという。
山本被告は、自身のねぎ畑の経営と久御山町にある知人の会社で従業員として勤務していた。元々は週500キロの九条ねぎを納品していたが今年5月以降、週800キロの契約に変わったという。しかし今年の夏、例年よりも気温の上昇が激しく予測していたよりもねぎが育たず、納品が間に合わない状況に陥った。次第に納品量を上げた契約に陰りが出始め、ねぎを盗んだ方が手っ取り早いと思うようになったという。
警察の調べに対し、山本被告は「仕事を全うしなければという思いからお金よりねぎが欲しかった。簡単に取れたから犯行を重ねていった。京都のブランド農産物に汚点を残したことは大変申し訳ない」などと話しているという。
■九条ねぎ窃盗、再び… なぜ保釈? 怒る農家たち
先月、八幡市の畑で再び九条ねぎの窃盗事件が起きた。約150キロの九条ねぎを盗んだとして新たに逮捕されたのも、また“同業者”だった。窃盗の疑いで逮捕された35歳の農業経営者は、京都市内でねぎを栽培していた。警察の調べに対し、「身に覚えがない」と容疑を否認しているが、すでに身柄は解放されているという。また、久御山町で窃盗事件を起こした山本被告は容疑を認めているが、同様に保釈されている。
久御山町、そして八幡市でそれぞれ窃盗事件を起こしたとして逮捕された2人の男はすでに一般人と同じ暮らしを送っている。あるねぎ農家の男性は、「人の畑から散々ねぎを盗んで逮捕されたのにこんなにすぐに釈放するのはなぜなのか?そいつが二度と盗むことはないと断言できるのか?自分たちがまた盗まれるのかもしれないと不安に思った気持ちを全く考慮してくれていない」「窃盗事件を起こした犯人のせいで防犯カメラを買ったり余計な出費がかさんだ。行政が補助金を出してくれるとはいえ結局は農家にばかり負担がかかっている。それなのに犯人は釈放されてのうのうと生きているなんて許せない。もっと罪を重くするべきだ」など怒りの声を上げている。
■警察が認知しているのは8件、残りの3件は…?
久御山町で起きた九条ねぎの連続窃盗事件について、警察は今月6日、山本被告がほかの4件の事件にも関与したとして窃盗の疑いで最終送致をし、捜査は終結した。山本被告が犯行を行ったと自供したのは、警察が今年6月以降に久御山町と宇治市で窃盗事件を把握していた8件のうちの5件だった。警察によると、山本被告は警察が認知していない他の場所でも九条ねぎを盗んだと自供しているという。では、元々警察が把握していた8件のうちの残りの3件は、一体誰がやったのか…?
警察は、久御山町の周辺で今後も夜間のパトロールを実施し、捜査は継続して手は緩めないとしている。また、京都府では防犯カメラなどに対し補助金を給付するなど防犯対策を進めている。
猛暑の影響で栽培がうまくいかず窃盗という犯罪に手を染めたとするならば、来年もまた同様の事件は起きると話す農家が大勢いる。京都のブランド農産物を育てる農家だけではなく行政も一丸となって守る対策がいま、急務となっている。