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【なぜ】「大義ない」選挙の行方は…「自分に非はない」岸和田市長VS選挙戦に突入する前市議のホンネ 女性との性的関係めぐり“不信任決議”と年の瀬の“議会解散”

2025年1月12日 12:00
【なぜ】「大義ない」選挙の行方は…「自分に非はない」岸和田市長VS選挙戦に突入する前市議のホンネ 女性との性的関係めぐり“不信任決議”と年の瀬の“議会解散”
市議会解散を表明した永野耕平市長(2024年12月24日)

 自身の不倫をきっかけに、1か月のうちに所属していた「大阪維新の会」を離党、議会による不信任案決議、その後の「議会解散」と目まぐるしく動いた岸和田市の永野耕平市長と市議会議員たち。市長が繰り返し訴えたのは「自分に非はない」との主張。議会解散の大義とは何か、解散にともなう市議選の争点とは何か―。選挙の告示が2週間後に迫る中、前市議らのホンネに迫った。(報告:加藤沙織)

■「心休まらない正月だった」前市議らは年明け早々選挙モードに

 1月10日、岸和田市役所には、26日に告示される市議選の立候補予定者たちが集まり、議会で市長を厳しく追及した前議員たちが一堂に介する場となった。

 年の瀬に市長が表明した「議会解散」により、議員の職を失うこととなった前議員たち。人によっては、心なしか疲れた様子で、選挙の注意点などを聞いていた。

 ある前市議は、「心休まらない正月だった」とこぼす。一体誰がこのような2025年の幕開けを予想しただろうか。

■「本心では和解したくなかった」女性との性的関係めぐり疑念広がる

 事の発端は、去年11月末、ある一人の女性の代理人弁護士が開いた記者会見。

 弁護士曰く、女性は永野市長と政治活動で知り合い、2019年から約2年にわたり、性的な関係を強いられたという。精神的な苦痛を受けたとして、約2300万円の賠償を求めて提訴した。

 この裁判は、市長が解決金500万円を支払うことなどで和解が成立しているが、女性が「私は本心では和解などしたくはありませんでした。諦めたのが実情です」などとコメント。和解調書では、「公人であるとともに配偶者を有する身であることも考慮すると、性的関係を持つことはよくよく自制すべきであった」などと指摘され、市長に対する疑念の声が一気に広がった。

■市長「罪の認識は全くございません」議会との溝は埋まらず

 去年12月、岸和田市議会は、永野市長に経緯の説明を求め、会議を開いた。市議と市長との間では、次のような問答が繰り返された。

 市議
「罪の意識はあるのかないのか、お答えください」

 市長
「罪の意識は全くございませんし、人の道を外れるようなことはしておりません」
「元々の裁判の発生の事由(性加害)については責任がないと裁判のなかで至っています。これまでの経緯のなかで秘匿することとなっている裁判でありますから、内容についてはみなさまがたに申し上げることは難しい」

 性加害は認められなかったことなど、裁判の内容を一部明かす一方で、そのほかの説明については「話せない」との回答に終始したのだ。後に、一般女性と不倫関係にあったことは認め、謝罪したが、市議らとの溝は埋まらなかった。

 ほどなくして、永野市長への不信任案が提出され、出席議員の4分の3を超える賛成を受けて可決された。

■『議会解散』表明 会見に妻も同席「悪いことはまったくしていない」

 「個人的な生活の中での失態であり、自分で反省すればいい話と思っているし、不信任決議も要らなければ、自分が辞める必要もないと思っている」

 不信任案の可決した12月20日、永野市長が言い放った言葉だ。可決後10日以内に、議会を解散するか、失職するかの決断を迫られた際、記者らにこう説明し、4日後のクリスマス・イブの日に議会の解散を決めた。

 直後に開いた会見には、永野市長の妻も出席し、「とにかく悪いこと(性加害)はまったくしていないというのはずっと思っていました。(市長の職を)続けていってほしい」とコメントし、夫婦そろって“不信任決議に大義はない”と主張した。

■議長は「解散の大義はない」 所属していた維新からは「離党勧告」も「除名」は見送り

 一方で、自身も不信任案に賛成した当時の議長は、解散を受けて、「(議員は)不信任案を出す覚悟と信念を持ってやってるので、今回の解散はなかなか大義はないのかなと思います」と主張し、水掛け論となっていった。

 永野市長が所属していた大阪維新の会は、除名に次いで2番目に重い「離党勧告」処分に決めたが、ある党幹部によると、市長の処分を巡っては意見が割れたという。決定について党幹事長は、「女性の主張がすべて真実であれば『除名』相当だと思うが、相手方と永野さんの主張が食い違っていて、除名まではできない。一緒にやっていくのは難しいという中で離党勧告」と説明した。

 永野市長は「除名となれば辞職する」と繰り返していたが、党の処分は「離党勧告」にとどまった。辞職の判断は、あくまで市長の意思に委ねられ、結果的に“不倫関係までなら市長続投”という形になった。ほとんど、倫理観の違いによって議会の将来が左右されたに近かった。

■「もう一度ここに戻って不信任を出そう」前回の市議選費用は約7300万円

 市の選挙管理委員会によると、直近の市議選では約7300万円かかったという。4年に一度の定期的な選挙とは違い、急に実施が決まったことから、今回の選挙では費用はさらに膨らむことが想定される。

 この選挙をいかにして意義あるものにするか―。

 ある前市議は、選挙戦で「市長の一連の不倫問題については、詳しく触れないつもりだ」と話す。一方で、市長個人の問題に端を発し、多額の税金を用いて選挙が行われることや、これまでの市政については厳しく追及したいという。実際、可決された不信任案では、不倫問題とは関係のない市政運営についても触れられ、不信任の理由の一つとされていた。

 不信任案には、市議24人のうち20人が賛成した。別の前市議は、議会が解散されたとき、「もう一度ここ(議会)に戻ってきてまた(不信任案を)出しましょうと誓って別れた」と明かした。

 新しい議会で再び不信任案が可決された場合、市長は失職することになっている。直近の市長選の費用は約4400万円だ。一方で、永野市長の対抗馬選びも簡単なことはではない。

 最大2つの選挙を経て、岸和田市の将来には何を残すことができるのか…。市議選は1月26日に告示、2月2日に投開票が行われる。

最終更新日:2025年1月12日 12:00