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【独自解説】「当時からムカついている。“暫定”なのにずっと生き残っている、おかしな税金」元官僚も首をかしげるガソリン税『暫定税率』のカラクリとは?値上げラッシュがさらに加速する2025年は「2024年より物価が上がる」

2025年1月13日 9:00
【独自解説】「当時からムカついている。“暫定”なのにずっと生き残っている、おかしな税金」元官僚も首をかしげるガソリン税『暫定税率』のカラクリとは?値上げラッシュがさらに加速する2025年は「2024年より物価が上がる」
元経産官僚・岸博幸氏

 円安やウクライナ侵攻の影響などで年々物価が高騰する中、2025年はこれまでよりも値上げされる恐れが。ガソリンが2月には185円/Lに?一方で、過去最高の税収を更新見込みのワケは?元経産官僚・岸博幸氏、『読売新聞』特別編集委員・橋本五郎氏のダブル解説です。

■値上げ品目数は2024年を上回る?4月までに食品など6121品目が値上げ

 2024年12月26日、『帝国データバンク』は、「加工食品」2121品目・「酒類・飲料」1834品目・「パン」1227品目など、2025年1~4月に6121品目が値上げされると発表しました。2024年は1年間で1万2520品目が値上がりしましたが、2025年は4月まででその半分に及びます。『帝国データバンク』によると、2025年の値上げ品目数は2024年を上回る恐れがあるということです。

Q.円安や紛争も影響が大きいですか?
(元経産官僚・岸博幸氏)
「紛争もあるし、円安もあるし、国内でも政府が補正予算を逆にばらまきましたから、いろんな要因があって、2025年は2024年より物価が上がると思います」

■ガソリンは185円/Lの時代へ…何重にも課税されているガソリンの仕組みとは?

 また、ガソリン代も上がります。ガソリンの“本来の価格”は原油価格によって変動しますが、2024年12月18日までは補助金が出ていたため、約175円/Lでした。しかし、同月19日に補助金が縮小され、同月23日時点で約180円/Lに。2025年1月16日には、さらに補助金が縮小されるため、同年2月には185円/Lになる恐れがあります。

 ガソリンは本体価格だけではなく、石油石炭税・ガソリン税(本来の税率分)・ガソリン税の暫定税率・消費税といった様々な税金がかかっています。

 その中でも注目なのが、ガソリン税の暫定税率25.1円/Lです。「暫定」と言いながら昭和49年(1974年)から続いてきて、2024年12月11日に、ようやく自民・公明・国民民主が「暫定税率」廃止で合意しました。ただ、時期は未定だということです。

Q.「暫定」と言いながら1974年から続いているのは、どういうことですか?
(岸氏)
「私は資源エネルギー庁にいましたが、当時からムカついています。暫定は本来、時限的なものですよね。元々は、道路を整備する道路財源として作られたものだったのが、財源として安定性もあるし便利だから、道路以外のいろんな用途に使えるようになってしまい、“暫定”なのにずっと生き残っている、おかしな税金です。結果的に何重にも課税され、高くなっています」

Q.いろんな用途というのは、道路だけではなく?
(岸氏)
「他の用途にも使います。だから、かえって暫定の意味がわからなくなっています」

Q.廃止に合意したものの、時期は未定なんですね?
(『読売新聞』特別編集委員・橋本五郎氏)
「僕らが現場にいる時からの大きな問題です。俎上(そじょう)には載るけど、ずっとそのまま暫定が続いています。やはり“取りやすい”というか、一旦手放すと別の財源を探さければいけないので、払う人ではなくて『取る論理』で、ずっと来ているわけです」

Q.裏金問題のような話が出てくると、どうしても国民と乖離していると思ってしまいますよね?
(岸氏)
「国民は、『こういう酷い税金も含めて払っているのに、裏金って何だよ』となります。ただ、時期はわかりませんが、暫定税率は廃止という方向を決めたのは偉いです。ガソリン税など、自動車関係の税全体を見直す一環でやるのかなという気はしますけど」

 補助金縮小は、様々な物の価格に影響する可能性があります。ガソリンは自家用車など、灯油はストーブなどの暖房費、軽油はトラック・バスの燃料費、重油はビニールハウスの暖房費などです。

Q.まだ都会はバスがあったりしていいですが、地方は大変ですよね?
(橋本氏)
「それから、まず寒いでしょう。私は先週秋田にいましたけど、寒くて大変でした。そうすると、灯油代もかかります。車も一人一台の社会だから、一家に何台もあるので、都会よりはずっとお金がかかります。だから本当は、冬になったら地方を少し優遇してほしいです」

Q.高齢者が買い物や病院に行ったりするのに時間を合わせて一斉に行けるライドシェアなど、そういうことを地方はやらなければいけないですね?
(岸氏)
「そういうこともどんどん進めなければいけないけど、その取り組みも遅いです。それで結局、燃料コストでみんなの生活が大変になるという、本末転倒です」

■「海外と比べても、日本はかなり高い水準」補助金再開で電気代575~650円・ガス代約300円値下げへ

 そんな中、再開される補助金もあります。政府は物価高で厳しい状況にある生活者を支援するため、電力使用量の最も多い1~3月使用分の電気代を補助。補助の金額は1・2月使用分=2.5円/kW、3月使用分=1.3円/kWで、標準的な使用料の家庭で575~650円値下げの見通しです。

 また、ガス代も補助されます(1~3月・都市ガス)。経産省・東京電力の資料を基にした試算によると、1・2月使用分(標準的な使用料の家庭)で約300円値下げの見通しです。

Q.補助しないと、相当高くなりますか?
(岸氏)
「海外と比べても、日本はかなり高い水準です。特に今みたいに、なかなか収入・手取りが増えない状況では、補助は必要です」

■税収は過去最高更新も、最大の収入源は物価高騰による『消費税』 専門家指摘「軽減税率をさらに低くしないと生活できない」

 一方、2025年度の一般会計税収は約78兆円を上回る見込みで、過去最高を更新する見通しです。2024年度の一般会計税収(約73兆4000億円)の内訳は、『法人税』約18兆1000億円・『所得税』約20兆1000億円などを上回り、『消費税』が約24兆3000億円と最大の収入源となっています。

Q.これは、物価が上がったからですか?
(岸氏)
「正に、物価が上がった結果として、消費税が増えています。だから、全然楽にならないです」

Q.そろそろ軽減税率を考えなければいけないのでは?
(岸氏)
「本当に消費税は、将来的にどこかで軽減税率を今の8%ではなく、しっかり低くして、『収入の低い人が困らないようにする』というヨーロッパでは当たり前のことをしなければ、生活できません」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年12月26日放送)

最終更新日:2025年1月13日 9:00