【独自解説】著名人になりすます『投資詐欺』が急増!「詐欺の入り口作りを平気でやっている」“ニセ広告”に使われた著名人らがメタ社に憤り 専門家が提言『詐欺を見抜く4つのポイント』
2024年7月9日、実業家・前澤友作氏が米IT大手・メタ社などを訴えた裁判で、第1回口頭弁論が実施されました。“ニセ広告”に勝手に名前や顔などを使われたとして、前澤氏ら多くの著名人が怒りを露わにする“SNS型投資詐欺”。2024年1月~5月までの被害額は、わかっているだけで約430億円といわれています。対面での会話は一切なし、“SNSでのやり取りだけ”で金銭を騙し取る悪徳行為…詐欺を見抜く4つのポイントは?新たな詐欺の手口とは?元経産官僚・岸博幸氏、元埼玉県警捜査1課・佐々木成三氏のダブル解説です。
「本人が『おかしい』と言っているのに削除されない」“ニセ広告”に使われた著名人らはSNSを運営する会社に憤り 騙したのは本物だと思われ、殺害予告や脅迫も…
テレビに出演する著名人たちは、詐欺広告に顔や名前を使われるという被害に。元経産官僚・岸博幸氏は「ニセの広告を削除してほしい」とフェイスブックなどを運営するメタ社に抗議しましたが、「削除はしない」とだけ返答があり、理由については書かれていなかったといいます。
(元経産官僚・岸博幸氏)
「本人が『勝手に写真を使われておかしい』と言っているのに、それだけでは削除されないんだと。こういう詐欺の入り口作りを、インターネットの会社が平気でやっているんだというふうになりますよね。だから、許しがたいと思います」
経済アナリスト・森永康平氏も、詐欺広告に顔や名前を使われていると被害を訴えている一人です。扮装して自身の偽アカウントを悪用する男に接触する様子を動画投稿サイトにアップするなど、詐欺広告に対して注意喚起を行っています。
2024年6月には、父・森永卓郎さんなどを騙った『SNS型投資詐欺』で金を騙し取ったとして、“受け子”とみられる中国籍の男が逮捕されました。
(経済アナリスト・森永康平氏)
「犯人の取り調べの中で、どういう手口だったのか、もしかしたら芋づる式に他の犯人・犯罪グループにも捜査の手が及ぶ可能性があると思いますので、1日でも早く多くの犯人が逮捕されて、この詐欺が少しでも収まってくれればいいなと思っています」
これで、一件落着…かと思いきや。
(森永氏)
「中には、本気で『僕が詐欺をした』『僕にお金を盗られた』と思う方たちもいて。一番良くないパターンだと殺害予告とか、そこまでいかなかったとしても、『いついつまでにいくら払わなかったら、訴えるぞ』ということはたまに来ますし、激しいものになってくると当然“脅迫”みたいな話になってくるんですけど、こちらも身の危険を感じてしまうので、そういうのはやめてください」
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Q.「ニセ広告を削除してください」と企業に訴えても、なかなか削除してくれないんですか?
(元経産官僚・岸博幸氏)
「企業によって濃淡はありますが、自分のこれまでの経験で言えば、やはりメタ社は遅いと思います。ちなみに『X』にも私の偽者がたくさんいるのですが、これはおかしいと言うと、ある程度対応してくれていましたので、明確な差があります」
メタ社の2023年の売り上げは、約1349億ドル(当時のレートで約19兆円)。その内、約98%が広告収入でした。
Q.売り上げの98%が広告収入なんですね?
(岸氏)
「彼らは広告収入が最大ですので、そこに影響があることはあまりやりたくないと。また、アメリカのネット企業の特徴で、アメリカの本社がグローバル・全体をコントロールしますので、日本法人が日本だけ独自の対応をするというのは基本的に難しいです」
Q.プラットフォーム側が整備されていないような印象があるのですが、どう考えますか?
(元埼玉県警捜査1課・佐々木成三氏)
「広告の定義ですが、『テレビの広告・CM』と同等のレベルで考えてしまうユーザーが多いなと感じます。メタ社に関しては、お金を払えば誰でも広告を出せる状態で、チェック体制がかなり弱いというのは明らかだと思います」
メタ社のフェイスブック広報代理は『ミヤネ屋』の取材に対し、「あらゆる角度から非常に踏み込んだ対策と措置を講じており、直近では、かなりの改善が見られています。詐欺広告に関する対策を加速させています(一部抜粋)」と回答。さらに、『分析の強化』『検出技術モデルの規模拡大と自動検出システムの改善』『広告の削除や広告アカウントの停止』を3つの対策としています。
“ニセ広告”については、政府も動いています。2024年6月3日、「著名人を本人の承諾なく広告に掲載することを禁止する法整備を求める」と自民党が政府に提言。同月21日には、総務省が『広告を出す事業者の本人確認を強化すること』『やり取りを第三者が見られないクローズドチャット(LINEなど)に誘導する広告は原則採用しないこと』『なりすまされた被害者から削除の申し出があった場合は速やかに対応すること』をSNS事業者に要請しました。
また、“なりすまし投資詐欺”の主な通信手段は『LINE』です。
Q.会うわけではないので、犯人側としてはリスクが少ないですよね?
(岸氏)
「フェイスブックを入り口にしてLINEのグループに誘導され、サクラを含めて毎日毎日『うまくいっている』と見せられると、だんだん洗脳されたようになってしまいます」
2024年6月、森永卓郎氏などになりすまして詐欺を行ったとして逮捕されたのは、中国籍の男でした。その他、全国で別の中国籍の男らも“なりすまし投資詐欺”で逮捕されているということで、佐々木氏は「中国に、リーダー格の犯行グループがある可能性。受け子は、留学生など切り捨てられる存在ではないか」と指摘しています。
Q.グループの中核が中国本土から指示を出している場合、なかなか捜査ができないのではないですか?
(佐々木氏)
「これは、サイバー攻撃と同等だと思います。ネットやSNSはどこの国でもできて、海外から攻撃ができるため、捜査はかなり難しいというのが現状です。厄介なことに『行動ターゲティング広告』というのがあって、例えば投資に興味がある人がそのワードを検索すると、投資の広告がどんどん届くようになっています。その中で、どんどん著名人のなりすましの広告が入ってくると、騙される方が多くなってしまいます」
Q.投資に興味がある人には投資の広告が、洋服が好きな人には洋服の広告が…など、便利ではありますが、その中に本物と偽物が混じり合っているわけですよね?
(岸氏)
「混じり合って同じようなものがいっぱい出てくると、見分けがつかなくなってやられてしまう、というのが増えていると思います」
岸氏は、“なりすまし投資詐欺”に騙されないための注意喚起として、特に下記4点をあげています。
■著名人による無料の投資教室
■「必ず儲かる」「あなただけ」という文言
■公式アカウントからの発信がない
■個人名義の口座を指定される
Q.「公式アカウントからの発信がない」というのは一つのポイントですか?
(岸氏)
「公式アカウントからの発信がない場合は、おかしいと思ったほうがいいです。何より、著名人が“無料で”やるはずがありません。著名人は大体みんな性格が悪いですから、そんなことはしないと思ってほしいです」
また、森永康平氏によると、「『本を無料で送ります』という書籍絡みの詐欺が、最新の手口。『いつになったら、本は届くんですか?』みたいな問い合わせが、うちの会社に結構来ている」ということです。
具体的な手口としては、“本物の森永卓郎氏の本”が届き、その中に名刺が入っています。その名刺にLINEのQRコードがあって、読み込むと、「森永卓郎です。これから投資のやり取りをしましょう」と投資に誘導されるということですが、もちろんこれは偽者で、詐欺の手口です。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年7月9日放送)