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【解説】斎藤知事とPR会社の説明食い違い ”公職選挙法違反”の可能性は ポイントを分かりやすく

2024年11月26日 18:50
【解説】斎藤知事とPR会社の説明食い違い ”公職選挙法違反”の可能性は ポイントを分かりやすく

 兵庫県知事選でのSNS戦略をめぐり、公職選挙法違反の疑いが指摘されている問題で、斎藤元彦知事の代理人はPR会社と書面で契約をかわしておらず、「口頭契約」だったことを明らかにしました。

 26日、兵庫県の斎藤知事と県内の市長らが集まり開かれた懇話会。県知事選の終盤、対立候補の支援に回った22市の市長らも同席しました。あの行為が批判された市長の姿も…

 相生市・谷口芳紀市長(11月14日)
 「“悪いやつ”を兵庫県から追い出して、新しい風を入れる人は誰やと言ったら」
 バン!(机叩く)
 谷口市長
 「稲村や!!」

 その相生市の谷口市長が、懇話会の始まる前に待っていたのは…

 谷口市長
 「大変ご迷惑をおかけしました」

 選挙で、ぎくしゃくした市長らとの関係修復が求められる斎藤知事。その知事選をめぐり、PR会社への金銭の支払いが公職選挙法に触れる可能性があるのでは、と指摘されています。

 問題の発端になったのは、PR会社の代表がネット上で発信した内容です。

 (PR会社の投稿より)
 「広報全般を任せていただいた」
 「私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ(などを)、責任を持って行い、少数精鋭のチームで協力しながら運用していました」

 兵庫県のPR会社の代表は、20日付でプロフィール写真の撮影やSNSを活用した選挙戦を紹介する記事を公開。

 (PR会社の投稿より)
 「選挙は広報の総合格闘技」
 「食べる暇も寝る暇もない程でした」

 選挙戦では、代表とみられる女性がスマートフォンで撮影しているような様子も。

 (PR会社の投稿より)
 「私自身も、現場に出て撮影やライブ配信を行うこともありました」

 SNSアカウントを開設したり、選挙戦略を提案するなど、知事選に深く関わっていたことをうかがわせる内容です。公職選挙法では、ポスターやチラシなどの製作費については支払うことは認められています。一方で、インターネットを利用した選挙活動も含む広報活動を「有償」で「主体的」に担った場合については「買収」となる恐れが高いとしています。

 25日、斎藤知事はポスター製作などの報酬を70万円ほど支払ったと説明し、違法性はないと否定。ただ、ネットでの広報については…

 記者
 「70万円以外は一切支払っていない?」
 斎藤知事
 「そうですね」
 記者
 「ネット戦略立案については無償でやってもらった?」
 斎藤知事
 「基本的には、ご意見やアイデアは聞いたが、斎藤陣営として主体的に対応した。SNSに関しては斎藤事務所が主体的にやっている。(PR会社代表は)ボランティアとして個人で参加されたと認識している」

 主体はPR会社ではなく自分達だと主張。「広報を任せていただいた」「企画などを責任を持って行った」などと説明していたPR会社の投稿と異なっています。

 ポスターなどの制作費として、約70万円をPR会社に支払ったと説明した斎藤知事。25日に代理人が その内訳を回答しました。

 支払いは11月4日で、「ポスター・デザイン制作」に5万円。「公約スライド制作」に30万円。他にも「メインビジュアル企画・制作」、「チラシのデザイン」など5つの項目に71万5000円を支払ったということです。(※消費税込み)

 代理人によると、PR会社への報酬は、斎藤氏の後援会名義で支払ったということです。またPR会社とは口頭契約で、契約書としての書面は存在しないと説明。SNSの運用についても「提案は受けたが、依頼したことはない」などとして“公職選挙法違反の指摘”を改めて否定しました。

 代理人は今後、PR会社からの請求書などを公開するとしています。

(中谷しのぶキャスター)
 PR会社と斉藤知事の間で主張が食い違っているわけですが、いま分かっていることをお伝えします。
 
 (高岡達之 特別解説委員)
 テレビをご覧の皆さんも、いろんな思いをお持ちだと思いますが、公職選挙法というのは、いろんな方によって、法の専門家であっても解釈が分かれるということなので、私どもの責任において、事実だけをできるだけ浮き彫りにして材料としてご提供したい。多分とか、もしかしたらとか、可能性という言葉を、私どもの責任において極力削ぎ落として、ご覧いただきます。
 
 (中谷キャスター)
 まず、どのような契約だったのか、代理人弁護士がその内訳を明らかにしました。合計71万5000円の内訳がこのようになっています。

 (中谷キャスター)
 SNS運用を頼んだことは一切ないと主張しています。また、私が把握している限り、口頭契約で、契約書として書面は存在していない。この代理人弁護士曰く、もしかしたら個人的に斉藤とPR会社との間で、メールやLINEなどのやり取りはあったかもしれないが、現時点では把握していないとしています。

 大前提として、清原さん、PR会社が広報を任されても違法ではないんですよね?

(清原博 弁護士)
 そうですね。別段、広報全般を任されたとしても、そのこと自体は違法性はないです。

(中谷キャスター)
 ただネットを利用した広報活動を有償で主体的に担えば買収に当たるということですね。

 (清原博 弁護士)
 そうです。PR会社が報酬をもらって広報全般やったら、報酬をもらったことが買収になるわけですね。
 
 (中谷キャスター)
 今回、この違法性の指摘とは別に、この契約と金額はどうなのか、選挙コンサルタントの藤川晋之助さんに伺いました。

 (中谷キャスター)
 PR会社に支払われた70万円はリーズナブルな額だと。この方は曰くです。今は書面でちゃんとやろうとなってきているので、口頭契約は珍しいということなんです。この口頭契約の中身の、ボランティアとの境目をはっきりさせることが、大切になってくるわけですね?

 (清原 弁護士)
 そうですね。本来であれば契約書でお願いをした仕事の内容は、ここまでですよと。この先は例えばボランティアですよ、ということを契約書ではっきりさせておくべきだけども、今回それがないとおっしゃるから、だから双方で言い分が食い違っているんでしょうね。

 (中谷キャスター)
 その上であす(27日)、この代理人弁護士は、請求書、支払書を公開する予定で調整中だということです。

 (高岡 特別解説委員)
 ただこれも、公的な書類になるかということは、12月になったら選挙管理委員会に収支報告書を提出されます。そこでこの内容と寸分間違いのないものが出て、初めてそれは公的に有効な文書ということになります。

 

 (中谷キャスター)
 またPR会社代表と斉藤知事で食い違っている主張がこちらになります。
 ライブ配信など、会社として手掛けたと投稿しているわけですが、斉藤知事は、ボランティアとして個人で参加されたという認識を示されています。

 兵庫県の選挙管理委員会は、街頭演説の車に乗る行為について、無償ボランティアで腕章していれば可能、それ以外なら一般的に公職選挙法違反の可能性があるということなんです。

 このボランティアであっても違法に当たるケースがあるということで、それがこちらです。

 (中谷キャスター)
 特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄付をしてはならないということで、こういったライブ配信など労務の無償提供(ただ働き)は寄付に当たるのではという指摘があるわけです。

 この特別の利益を伴う契約の当事者であるか、このPR会社の代表はこういったことも担っていらっしゃるということで、清原さんこの関係性どう見ますか?
 
 (清原 弁護士)
 公職選挙法199条の条文ですが、正確に言えば、請け負いとか特別の利益を伴う契約なんですね、だから基本的にこの法律の条文が適用されるのは、県の公共事業を請け負った業者なんですよ。公共事業という大きな金額ですよね。それを請け負った業者などは利害関係が強いから、寄付しちゃいけないというのがルールなんですけども、ここに上がっている会議の委員だとか、公共事業を請け負ったわけじゃないですよね。あくまでも委員になってくださいというふうに、依頼を受けてやっている程度のものであって、私の考えでは、この程度だったら、公職選挙法に違反するような利害関係を持つ当事者ではないと私は思います。

 (中谷キャスター)
 そのあたりが専門家の中でも見解が分かれるところなんですね。
 もう一点確認したいのが、個人と会社という見解なんですけれども、個人はOKでも、会社として手掛けていた。この指摘についてはどうですか?

 (清原 弁護士)
 どういう思いで、この社長が書かれたか分からないけれども、社長さんがネット上で公開した文章は、私の感覚では、会社がこれだけ頑張りました、会社の実績をアピールしたかったと思うんですね。だから社長個人の手柄じゃなくて、会社の手柄ですよということをアピールしたかったから、ライブ配信も会社として手掛けたとおっしゃっているのが、社長側の認識ですけど、斉藤さん側は社長がやったことは会社としてじゃなくて、あくまでも社長個人としてなんですよというふうに認識されていると。だからここも認識の違いが両者であるのかなと思いますよね。

 (中谷キャスター)
 ややこしいですが、今後の展開どうなりそうですか?

 (高岡 特別解説委員)
 まず事実です。これ写真撮られています。私どもの責任において加工しているのは、PR会社の社長のお顔は加工しています。当然のことながら彼女はまだ被告人でも何でもありません、容疑者でもないのでテレビ局としてはそういう配慮をいたします。

 それから斉藤知事のこのボランティアとして個人で参加された認識の発言は、公的な取材、25日の東京での会見で述べておられます。こういったことは、もうこれから変わらないということなんですが、ただ総務省それから兵庫県の選挙管理の見解でも、恐れが高いという答えになってくるんですね。

 そうなりますと最終的には、これまでの選挙違反の事件を全部見たら、検察と警察が決めてるんです。こういった公職選挙法の捜査というのは、告発を受けなくても独自に捜査機関が捜査をすることができます。

 ただこれは裏返せば、やってるかやってないかもわからないということです。1万円違反しただけでも立件されたケースあります。数百万円でも証拠不十分のケースもあります。ですから、今後我々は事実、分かっていることに軸足をおいてお伝えしたいと思います。

最終更新日:2024年11月26日 19:33