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【独自解説】なぜ74歳の女性は7000万円を支払ってしまったのか?「信じて応援していたんですが…」急増する『ロマンス詐欺』被害 “なりすまし”されたGACKTさんも怒りの注意喚起「このツイート見せてお母さん守って」

2024年10月6日 20:00
【独自解説】なぜ74歳の女性は7000万円を支払ってしまったのか?「信じて応援していたんですが…」急増する『ロマンス詐欺』被害 “なりすまし”されたGACKTさんも怒りの注意喚起「このツイート見せてお母さん守って」
急増する“なりすまし”によるロマンス詐欺の実態

 アーティスト・GACKTさん(51)が公式Xで、なりすましによるロマンス詐欺に注意喚起を行いました。著名人などになりすまし大金を振り込ませる『ロマンス詐欺』の新たな実態とは?元埼玉県警捜査1課・佐々木成三氏の解説です。

■「お母さんを守ってやってくれ」GACKTさん本人が怒りの注意喚起 被害訴える息子に“神対応”

 2024年9月2日、公式Xで「ボクのプロフィールにあるアカウント以外は全部ウソ。そのGACKTはGACKTじゃない」と、悪質な“なりすまし行為”に怒りの注意喚起を行ったGACKTさん。きっかけは、ある男性からのDM(ダイレクトメッセージ)でした。その男性によると、還暦間近の母親がGACKTさんを名乗る人物に騙され、ロマンス詐欺に遭っているというのです。

 男性の母親とGACKTさんを名乗る人物はXとは別のSNSで繋がり、母親はその偽アカウントがGACKTさんだと信じ込み、聞く耳を持たないといいます。ついには「結婚する」「一緒に暮らす」と言いだし、家を引き払って貯蓄がない状態で引っ越そうとしているとして、男性は「家族崩壊の一歩手前」だと悲痛な声をあげています。

 このDMに対しGACKTさんは、「何も関係無いにしても、ボクの名前を使って人を騙すのはマジで迷惑だ。悪質ななりすましに気をつけてくれ。」と公式Xで注意喚起。さらに、「DMをくれた君へ。このツイートを見せて、お母さんを守ってやってくれ。」と“神対応”をしました。

 また、GACKTさんは公式Xで、「変わり映えの無い毎日に、いきなり芸能人や美男美女から連絡がくれば、その出来事が日常を変えてくれるんじゃないかと期待する。怪しむ気持ちを持っていたとしても、日常に刺激をくれるその出来事が、頭から離れなくなる。騙されない為には周りとの関わりや、寂しさと退屈を埋める趣味や、熱中できるものが必要なんだ。(一部抜粋)」と、自身の見解を示しました。

Q.最初は「嘘」と思っても、何回も連絡が来て、いかにもGACKTさんらしいことを言われると、信じ込んでいくものですか?
(元埼玉県警捜査1課・警部補 佐々木成三氏)
「この手口は、最初は結婚やお金の話は一切せず、何気ない会話から始めて、それを長期間行います。GACKTさんはSNSを多くやっていますので、そこに上がっている写真を偽者が取り込んで、あたかもGACKTさんから送ったような写真を被害者に送ります。そのやり取りの期間が“洗脳期間”となりますので、徐々に好意を持たせて、徐々にお金の話をしていき…というのが、ロマンス詐欺の手口です」

Q.SNSで繋がってからすごく時間をかけて、マインドコントロールに近いことをしてくるんですね?
(佐々木氏)
「そうです。甘い言葉や、ときには突き放す言葉などを使いながら、どんどん洗脳させていくという手口です」

■「『自分は選ばれた人間』という錯覚が起こる」被害額は半年で約200億円、ロマンス詐欺の実態

 警察庁による、2024年1月~7月のロマンス詐欺の実態です。被害者のうち男性の約72%・女性の約75%が、50代~80代以上。認知件数は1868件(前年同月比+1066件)で、被害額は約198億8000万円(前年同期比+約113.9億円)にのぼります。

(佐々木氏)
「警察で、特殊詐欺に騙された人にアンケートを取ると、『私は騙されない・私には関係ないと思っていた』と答える人が8割です。つまり、犯罪組織は、どんな人が騙されやすいかを良く知っているということです。頑固で意思を変えない人や周りに相談しない人は、犯罪組織にとっては騙しやすい人だと認識しています」

Q.『認知件数』とありますが、騙されたことが恥ずかしくて言えない人なども入れると、もっとすごい数字になりますよね?
(佐々木氏)
「その通りです。認知件数は、警察に届けられたものだけです。恥ずかしくて届けていない人、もしくは騙されていることにまだ気付いていない人もいると思います」

 ナゼ騙されてしまうのか、犯罪心理学者・出口保行氏に聞きました。出口氏は、「最初は半信半疑であっても、相手の真剣さ(もちろんウソの)に徐々に引き込まれてしまい、『自分は選ばれた人間』という錯覚が起こり、相手の言うままに行動してしまう」と分析しています。

■「日本人は“良い人”が多くファクトチェックが足りない」“俳優の卵”からの間違いメールがきっかけ…約7000万円を騙し取られた74歳の女性の場合

 なりすましは、著名人だけではありません。中には、“俳優の卵”を騙る人物に騙され、約7000万円を失った人も。

 警察によると、被害に遭ったのは、福岡・北九州市に住む女性(74)。2022年5月、“男性俳優の卵”を名乗るアカウントから、芸能関係の内容の“間違いメール”が来たといいます。しかし、これをキッカケに、SNSでやり取りがスタート。

 その後、マネジャーや事務所の経理担当者を名乗るアカウントから、「今後も支援してくれるなら、後日、支援金として1000万円受け取ることができる」「今後もSNSでメッセージのやり取りを続けなければならないが、ポイントが必要」「ポイントは有料だが、最終的に返金される」といったメッセージが来ました。

 女性(74)が指定された口座にポイント代金を振り込むと、俳優としての活動報告・キャッチフレーズ・オーディションに向けての意気込み・体づくりの経過報告などのメッセージが送られてきたということです。ただ、写真や動画など、本人だとわかるものは送られていませんでした。

 2024年9月8日までの2年あまりで、約300回にわたり約7000万円を騙し取られた女性(74)は、「1年ほど前からおかしいとは思っていたが、SNSなどのやり取りで信じて、応援していた」と話しています。

Q.1回振り込んでしまうと、人間の心理として、自分は騙されていると思いたくなくなるのでしょうか?
(佐々木氏)
「以前、国際ロマンス詐欺で騙された方に取材をした際、『騙されたと気づいてしまうと、出したお金が100%戻ってこないという事実が自分に降りかかってくるのが、怖かった』と言っていました。また、長期間にわたってメッセージのやり取りをすることで、それがなくなると寂しいといった感情もあると思います」

Q.メッセージが定期的に送られてくることが嬉しい、ということですね?
(佐々木氏)
「そうです。これが負のスパイラルになってしまいます。犯罪組織にとっては、会話のやり取りをすることが一つの実績になります」

 なりすまし詐欺の疑うべきチェックポイントを、ITジャーナリスト・三上洋氏に聞きました。三上氏によると、「まず、LINEへの誘導があったら疑うべき。また、著名人などからのDMやフォローは、ほぼあり得ない。ただ、プロフィルは巧妙で見抜きにくい」ということです。

(佐々木氏)
「日本人は“良い人”が多いので、入ってくる情報を全て鵜呑みにしてしまい、その情報が正しいかどうかを確認する『ファクトチェック』が足りないといわれています。この“俳優の卵”が実際にいるのかどうか、確認しなければいけませんでした。ただ、これは最初から詐欺だと疑わなければいけない手口です」

■「本物を凍結して、私になりすましたアカウントを作る」犯罪組織の驚きの手口とは

 実は、佐々木氏もロマンス詐欺に使われている可能性があるといいます。佐々木氏がSNSに投稿した写真を流用され、『フェイスブック』になりすましアカウントがあるということです。

Q.誰かが佐々木さんになりすましているのですか?
(佐々木氏)
「私がインスタグラムに上げている写真をスクリーンショットに撮って、別人かのように名前を変えて、投稿しています。しかもカナダ人になっていますので、海外の人向けのなりすましアカウントなのだと思います。私は京都市在住なのにクリーブランド在住になっていたり、高卒なのに大卒になっていたり、全くのデタラメです。また、この当時は友達が451人なのですが、私が凍結申請を出しても対応してくれなくて、800人にまで増えていました」

Q.凍結申請ができないんですか?
(佐々木氏)
「申請しても、なりすましだと認めてくれなくて、凍結するまで時間がかかってしまいました。今は凍結されています。ただ、過去に、私の本物のアカウントが凍結されたことがあります。犯罪組織が、本物のアカウントを凍結申請したんです」

Q.佐々木さん本人のアカウントを「偽者だ」と凍結申請したんですか?
(佐々木氏)
「そうです。本物を凍結して、私になりすましたアカウントを作るというのが、犯罪組織の手口です」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年9月25日放送)