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【独自解説】石破茂氏・小泉進次郎氏の国民人気が高いワケは“地方行脚”と“貸し借り文化”?自民党内からは不安の声も、『地方票』が集まる可能性 一方、“地方のドン”たちは党に対する不満も…

2024年8月31日 8:00
【独自解説】石破茂氏・小泉進次郎氏の国民人気が高いワケは“地方行脚”と“貸し借り文化”?自民党内からは不安の声も、『地方票』が集まる可能性 一方、“地方のドン”たちは党に対する不満も…
石破氏・小泉氏の国民人気が高いワケとは―

 2024年9月に控える『自民党総裁選』。立候補表明が増え、報道各社の世論調査が出てきました。結果は、全体調査も自民党支持者に絞った調査も、石破茂氏・小泉進次郎氏が頭一つ抜きん出て、次いで高市早苗氏という構図です。なぜ、石破氏・小泉氏の2人が人気なのか?キーワードとなる『暮らし』とは?10年にわたり地方政治・選挙を取材してきた『読売テレビ』高橋克哉解説デスクの解説です。

■それぞれに不安の声も…「国民的人気の高い2人は外せない」自民党議員の本音

 まず、自民党内や国会議員の中で、どういう状況になっているかを説明します。「次の総裁は、ほぼ次の総理大臣になる」ことを考えると、“総理に必要な資質”として自民党内で言われているのが、『帝王学』です。

 総理大臣には、“距離感”が求められます。外交はもちろん対霞が関・役所・野党、そして何より自民党内との距離感も重要です。いつも『倒閣運動』が始まるのは自民党内からなので、いろんなところとの距離感が必要だということです。「そういうものを身につけるには、重要閣僚や党の幹部などいろいろ経験した人でないと、総理総裁は務まらないよね」というふうに言われています。

 そんな中、石破さん・進次郎さん、それぞれに不安の声があります。進次郎さんは「そういった経験がまだない」、石破さんは一通りやっていますが、残念ながら「自民党内であまり人気がない」という課題を抱えています。

 一方で、議員たちがこの2人に注目しなければならない理由は、「選挙に勝ちたい・勝たなければならない」ということがあるからです。次の総理総裁の下ですぐに解散総選挙があることを考えると、次の総裁はやはり“選挙の顔”にならなければなりません。それを考えたときに、「国民的人気の高い2人は、どうしても外せない」というのが、自民党議員の本音です。

■地方が2人を応援する背景には、『貸し借り』を大切にする自民党の文化か

 では、なぜ石破さん・進次郎さんの国民的人気が高いのか―。キーワードは『地方』です。この2人は、とにかく地方を回って、いろんな人と会っています。

 まず石破さんは、自民党の中では割と『断らない人』と言われています。今、いろいろ問題が言われていますが、政治資金パーティーのゲストとして招かれたり、地方の講演会・若手の地方議員の結婚披露宴などに呼ばれたりすると、結構行く・断らないと言われています。

 実は私も2024年の年明けぐらいに、『読売テレビ』近くのホテルで石破さんと思われる方を見かけました。なんで石破さんがいるのかな?と思っていて、後で聞いたら、大阪の地方議員の結婚式に出ていたということでした。“神出鬼没”と言っては何ですが、いろんな所にいるというのが石破さんの特徴です。

 進次郎さんは言うまでもなく、集客力抜群の知名度を生かして、選挙の応援演説に引っ張りだこです。写真は神奈川県の市長選挙の時で、進次郎さんの横にいる方は当選されていますが、仮に厳しい選挙だったとしても応援してくれます。

 この辺りで、地方の方々から感謝されているのが、このお2人だということです。背景には、『貸し借り』をすごく大切にする、自民党の長い文化とも関わりがあります。

 もちろん石破さんも進次郎さんも、こういった“地方行脚”を「貸しを作っている」とは思っていないと思います。しかし、来てもらった地方の皆さんからすると、「あの時、石破さん来てくれたね」「進次郎さん来てくれたね」と“借り”に思っているところがあると思うので、総裁選に出てくると、「2人を応援しようか」という一つの泉源になるのだと思います。

■過去には“ハマのドン”の一声でIR計画頓挫も…キーパーソンは“地方のドン”

 なぜ「地方が大事」なのかというと、それは総裁選の仕組みにあります。1回目の投票では、『国会議員票』といわゆる『地方票』と呼ばれるものは同数です。今回は1回で決まることはなく決選投票に持ち込まれると思いますが、上位2位に食い込むためには、やはり『地方票』が重要です。

 また、地方票をまとめる度に大切になってくるのが、『地方のドン』と言われている人たちです。地方には“顔役”になる、いわゆる『ドン』と言われる人たちがたくさんいます。『経済界』『農協』『漁協』『地方議会』『建設』、場合によっては新聞社やテレビ局を経営するオーナー企業の方もいます。こういった発言力のある方々が、カギを握っています。

 一人だけ実名でご紹介します。横浜港の港湾で仕事をされている藤木幸夫氏(94)は“ハマのドン”と呼ばれ、この方が横浜のカジノに反対したら、IR計画が頓挫しました。“一声”で変わってしまう人が、地方にはいろいろいらっしゃる状況です。

 この地方のドンたち、あるいは地方の経済界の人たちが、今の自民党に100%満足しているかというと、必ずしもそうではないです。なぜかというと、若干の『温度差』を感じているようなのです。

■20~30年間の自民党政権下で地方には不満が…そこに野党が入る余地も?

 この20~30年間はほとんどが自民党政権で、いろんなことをやってきました。『TPP』で農業の輸出入を自由化しましたが、地方は疲弊。『一極集中』することで、子どもが高校を卒業したら東京に行って帰ってこず、地方の人口は減少。『公共事業削減』も進次郎さんの父・小泉純一郎さんの政権時代にやりましたし、『アベノミクス』も株価は上がったけど地域の経済にはあまり関係がないなど、いろいろと言われています。

 一方で、自民党には不満があるけど、「地方の声を聞いてくれる政党が自民党以外にない」というのも現実です。なんとなく、仕方なく、自民党に頼っている…という現状もあるということです。

 ただ、この話は自民党総裁選に限ったことかというと、必ずしもそうではないと思います。同じタイミングで立憲民主党も代表選を行っていますが、地方に不満があるということは、逆に言えば「野党が入る余地もある」「受け皿になれる可能性がある」ということです。これをどこまで出してこられるかどうかは、一つのポイントになってくるかなと思います。

 地方の課題・一次産業の課題というのは、都市に住んでいる人とも関係のないものではないと思います。農林水産業などは私たちの『暮らし』に関わってくる話ですし、自民党員あるいは立憲党員ではなくても、総裁選・代表選に出ていらっしゃる方々がどんなことを話しているのか、今回『政策の話』を見ていく必要があると思います。(『読売テレビ』高橋克哉解説デスク)

(「かんさい情報ネットten.」2024年8月27日放送)