【特集】海外でも人気!世界を魅了する日本の“おにぎり”…世はまさに『ONIGIRI戦国時代』!“米離れ”が進む中、国内外で専門店続々オープンのワケ
アツアツの米に好みの食材を包み込む、日本の国民食―おにぎり。食の多様化で“米離れ”が進む中、コロナ禍を経て『おにぎり専門店』が続々オープン。家でにぎるか・コンビニで買うかの2択だったおにぎりが進化を遂げ、今や一大ブームに。その人気は世界にも広がり、パスタやバゲットが主流のフランス・パリでも大行列。ONIGIRIの魅力とは?専門店急増のワケは?その裏側に迫りました。
「自分で作ったのとは全然レベルが違う」食材にもこだわり、1個500円台でも納得の味とボリューム!“コロナ禍”で火がついた『ごちそう系おにぎりブーム』
滋賀・大津市の商店街にあるおにぎり専門店『野洲のおっさん おにぎり食堂』は、4年半前にオープンしたにもかかわらず、平日のお昼時は常に満席状態、休日は2時間待ちの人気ぶりです。
定番の鮭が入ったものから豪華な食材が使われた“ごちそうおにぎり”まで、約40種類のおにぎりを楽しむことができるこの店は、東京の人気店『おにぎり ぼんご』で修業した“関西唯一の弟子”がにぎる、おにぎり専門店です。
(『野洲のおっさん おにぎり食堂』にぎりて・西川雅さん)
「触る回数が増えると、どうしても空気が圧縮されるので、究極にぎりたくないぐらい(笑)なるべく少ない回数でにぎることで、“ふわふわ”につなげていきます。皆さん“ふわふわ”を求めて来てくださるので」
粒が大きい滋賀・甲賀市の鹿深米を使用し、関西風の味付けや品質にこだわった具材をふんだんに使っているのがポイントです。
お味は…。
(『読売テレビ』・秋山実紀記者)
「甘辛く煮たそぼろと卵黄が、口の中いっぱいに広がります。お米も、一粒一粒が粒だっています」
(お客さん)
「めっちゃおいしい!やわらかくて、すごい。最高です。自分で作ったのとは、全然レベルが違いますね」
「具材もお米も、すごくおいしいです。これだけボリュームがあれば、価格は気にならないかなと」
価格は360~500円台のものが主流で、おにぎりにしてはちょっとお高め。家でにぎったり、コンビニで購入したりすることが一般的だったおにぎりですが、価格が高くても人気を集める理由は―。
(一般社団法人『おにぎり協会』・中村祐介代表理事)
「コロナ禍で、夜に外食ができなくなったことで、コンビニやスーパーがこぞって“ごちそう系のおにぎり”を出しました。今まで100円台だったものが、『200円でもおいしい』『300円でもおいしい』という人が出始め、『専門店のおにぎりも食べてみようかな。おいしいじゃないか』となったことで、おにぎり専門店に対する興味が非常に増えてきました」
タピオカ・高級食パン・からあげ…近年ブームが去った飲食物にはない“おにぎりの魅力”とは?他業種の“おにぎり業界”参入で売り上げ2倍増の店も
そうした中、おにぎりで新たなビジネスを始める人が増えています。『明太クリームチーズ』や『スパムたまご』など、約20種類のおにぎりを揃える『おにぎり専門店 COROLY』は、専門店を経営するだけではなく、フランチャイズで開業する人の支援も行っています。
2024年5月、愛知県から研修に訪れていたのは、2023年12月に開業を決断したという大橋一寛さん(45)。年内に、兵庫・神戸市での出店が決まっています。
(年内に開業予定・大橋一寛さん)
「初めてなので、とても緊張しています。形をきれいにしながら“ふわっ”とするのが難しいです」
以前は、イタリア料理店や中華料理店で調理を担当していた大橋さん。なぜ”おにぎり専門店”を選んだのでしょうか―。
(大橋さん)
「今までブームになったものと違って、元々日本の食事の中心にあったものだから、ブームは短くなってしまうけど、商品としては息が長いかなとは思っているので、おにぎりは良いかなと」
『ぐるなび総研』によると、2022年1月~2023年10月間のおにぎり専門店の新規出店数は、前年の約1.5倍に急増しました。
(開業を支援『なゆた』・坂野成志営業部長)
「飲食店にはブームがあり、タピオカ・高級食パン・からあげなど、最近はこういうものがブームになっては過ぎ去っていってを繰り返すのが、飲食業でした。おにぎり店は、10~20年経っても、どんなエリア・どんな人にも愛される食べ物だと思います。そういう意味では一時のブームではなく、とても安定性・継続性があると思っています」
出店が相次ぐ専門店は新規開業だけではなく、近年では、他の業種からの参入も相次いでいます。
取材班が訪れたのは、観光客でにぎわう京都。八坂神社から徒歩数分の場所にある老舗漬物店『京つけもの もり』では、長年、京漬物といった漬物のみを販売してきました。京都に訪れる外国人に向けて、パンに漬物を挟んだり茶漬けにするなど試行錯誤を重ねましたが、売上は伸びず…。2024年3月、“おにぎり業界”への参入を決めました。
(『京つけもの もり』・森知史取締役)
「京都にインバウンドが来ていると言われながらも、全然外国人の方に漬物を買っていただけなくて。少しずつ業態を変えながら、今はおにぎりが一番ハマっている状態です」
漬物入りのおにぎりは食べ歩きができるため、少しずつ評判が広がり、売り上げも2倍ほどに伸びました。今は、客の6割ほどが外国人です。
(香港から)
「香港のおにぎりは冷たいけど、日本のは温かいです。新鮮な感じがします」
(カナダから)
「カナダには、こういうのはないですね。とてもおいしいです。塩味があるけど、しょっぱくもない。食感も良いです。おいしかったです」
人気の“パリおにぎり”は具材もオシャレ⁉世界中に広がるONIGIRIブーム 世は正に“おにぎり戦国時代”―『おにぎり専門店』は経営者にも多数のメリット
外国人観光客にも支持されるONIGIRIは、世界各国で浸透し始めています。フランス・パリでは、日本のおにぎり専門店に長い行列が…!
(パリでおにぎりを買った人)
「高菜おにぎり2個と、みそ汁を買いました。週1で通っています」
「6個買いました。明日お出かけするので、持ち運びやすいおにぎりはランチにぴったりです」
フランスではパスタやバゲットの文化が主流でしたが、“日本の米のおいしさ”が伝わり、数年前からはスーパーにもおにぎりが並ぶなど、フランスの食文化に定着しつつあります。
現地で人気の“パリおにぎり”は、『ラム肉を香草焼きにして作るおにぎり』『ツナを柑橘とバジルで和えたさっぱりとしたおにぎり』『グリルしたカリフラワーにピーナッツチリソースを絡めたおにぎり』など、フランス人に合わせて進化しています。
『グリルしたカリフラワーにピーナッツチリソースを絡めたおにぎり』を、現地特派員が実食。
(NNNパリ・宮前明雄特派員)
「あっ、おいしいですね。カリフラワーの歯ごたえがすごく良くて、ピーナッツチリソースの甘辛さと合っています」
海外で“おにぎり人気”が高まる一方、食の多様化によって、日本国内での一人当たりの米の消費量は1962年以降減少を続け、ピーク時と比べて半分以下に。米の国内市場が縮小傾向にある中、関西から新たな国へ打って出て、おにぎりで勝負をかける企業も―。
創業78年を迎える大阪のお好み焼き店『ぼてぢゅう』は、2016年から海外事業にも力を入れていて、実はフィリピンに111店舗と、日本より多くの店を構えています。
(『ぼてぢゅうグループ』・神山和則専務取締役)
「フィリピンでは、日本の4倍米を食べます。その中で、日本の本物の米を紹介することも、我々の1つのミッションとして捉えています」
“粉もん”ではなく、米。中でも、片手で食べやすいことから、おにぎりに目を付けました。
(神山専務取締役)
「日本のお米と違って、フィリピンのお米はパサパサしています。“日本のお米”という味を現地の人へ伝えることが、日本食レストランとしての使命だと思っています」
試作しているのは、2024年7月からフィリピンで販売予定のおにぎり。米は日本米から選んで輸出し、フィリピンの人に好まれる食材を選びます。馴染みのない海苔は、取り外しができるよう軽く巻くのがこだわりです。
夢は…。
(神山専務取締役)
「フィリピンのコンビニに広まっていくまで昇華できたら、と思っています」
Q.近い将来、フィリピンのコンビニに『ぼてぢゅう』のおにぎりが?
(神山専務取締役)
「夢ですね、ははは(笑)」
(一般社団法人『おにぎり協会』・中村代表理事)
「小麦の原料の問題もあって、ラーメン店やパン屋の閉業率はすごく高いです。おにぎりは、原料が安定しているので価格が安定しやすく、計算しやすい。焼き肉とかとも違って、朝・昼・夜と食べる人がいます。1日に3回も4回もニーズがあるのが、大きく違うところ。また、低価格帯も高価格帯も出せるので、お客さんの“財布事情”に合わせられます。僕は、今は“おにぎり戦国時代”だと思っています」
日本で再び注目され、海外でも認められつつある『おにぎり』―その裾野は、まだまだ広がりそうです。
(「かんさい情報ネットten.」2024年5月21日放送)