【独自取材】45mをわずか20秒で…死亡事故が相次ぐ“渡れない踏切” 市長が突如打ち出した「廃止案」に住民からは賛否両論 『利便性』か『安全性』か…意見が二分する背景にある“やむを得ない事情”とは?
2024年10月9日、『ミヤネ屋』が訪れたのは、神奈川・横浜市鶴見区の生見尾(うみお)踏切。“渡り切れない踏切”といわれ、死亡事故も相次いでいます。横浜市は安全性を重視し、踏切を廃止して新たに橋を建設することを検討していますが、住民からは賛否両論の声が。一体なぜ?現地を緊急取材しました。
■約45mを約20秒で…?“渡り切れない踏切”で相次ぐ死亡事故
生見尾踏切の利用者は、一日約4000人。東海道線・横須賀線・京浜東北線の上下6線が横並びになっている全長約45mのこの巨大な踏切では、警報機が鳴っても渡り切れない人が後を絶ちません。
踏切が開いている時間を実際に計ってみると、踏切が開いてからわずか20秒ほどで、再び警報音が…。
時間帯によっては遮断機が開いている時間が短く、渡り切れないことも。そのため、踏切内には電車の通過を待つための“待避スペース”が設けられていますが、死亡事故も発生しています。
2024年9月、ベトナム国籍のブオン・バン・ロンさんが踏切を渡ろうとしたところ、列車にはねられ死亡。警察によると、ブオンさんがスマートフォンを操作しながら踏切内に進入し、線路上で立ち止まる様子が防犯カメラに映っていて、待避スペースと勘違いしたとみられています。電車の運転士は、100mほど手前で気付きブレーキをかけたといいますが、ブオンさんは亡くなりました。
また、2013年8月、2022年11月、そして2024年4月にも、それぞれ男性が電車にはねられ、命を落としています。
■跨線人道橋はバリアフリーではなく…“安全性重視”で横浜市は「踏切廃止・橋の新設」を検討
線路の近くには、両側にエレベーターも設置された跨線(こせん)人道橋があります。
しかし、実際に橋を上ってみると―。
橋の途中に階段があり、バリアフリーではないため、車いすやベビーカーの利用者は、地上の踏切を使わざるを得ません。
これまで横浜市は、待避スペースを識別しやすくするため踏切内を色分けしたり、注意喚起の看板を設置したりと対策を講じてきましたが、危険な状況は今なお続いています。
そうした中、2024年10月2日に横浜市・山中竹春市長は、「人命という尊さを踏まえ、踏切の危険性につきまして、踏切の廃止に向けて取り組んでまいります」と発言。横浜市は、安全性を考慮し、踏切を廃止して橋を新設する計画を立てています。
地上10mの新しい橋には、自転車も入ることができる20人乗りのエレベーター2基を設置する予定です。ただ、夜間工事のため工期は5~10年かかる見込みだということです。
しかし、“踏切廃止”を巡って、近隣住民からは賛否両論が―。
■45mの道が迂回すると約3kmに…踏切廃止「反対」主な理由は『利便性』
(住民)
「私は賛成」
「ここら辺の踏切は事故が起きるので、アリだと思う」
踏切廃止について、賛成の声がある一方で―。
(住民)
「反対です」
「ここを止められると、かなり遠回りしないといけなくなるので、それは非常に困ります」
反対意見がより多く聞かれた主な理由が、車やバイクでの通行ができなくなる『利便性』の問題です。
そこで『ミヤネ屋』は、踏切を迂回した場合、実際どのぐらいの時間がかかるか計ってみました。踏切だと約45mの道ですが、迂回ルートを走行すると、その距離は約3kmとなり、車で約10分かかる結果になりました。
Q.橋を新設すると、車やバイクは通れなくなるんですね?
(元経産官僚・岸博幸氏)
「はい。それで回り道になるから、地元の人たちにとっては大変不便だということです。ただ、気持ちはわかりますが、やはり行政側からすれば、安全性を最も重視せざるを得ません」
Q.列車を高架にするのは、どうですか?
(岸氏)
「本当は列車を高架にして、人と車が通れるようにしたほうが良いんですけど、大工事になって時間がかかるのはもちろん、周りもだいぶ変えないといけませんから、現実的ではありません」
また、反対意見の一つには、近くに商店街があるため、人の流れが変わることへの懸念もあるということです。『利便性』と『安全性』の狭間で、町は今、大きく揺れています―。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年10月11日放送)