×

【特集】なぜ『ドラッグストア』は生鮮食品に手を出したのか?その裏側には“儲けのからくり”が…強みを活かした独自戦略で差別化を図るドラッグストアの生き残り戦略を追う!

2024年10月20日 12:00
【特集】なぜ『ドラッグストア』は生鮮食品に手を出したのか?その裏側には“儲けのからくり”が…強みを活かした独自戦略で差別化を図るドラッグストアの生き残り戦略を追う!
世は正に『ドラッグストア戦国時代』

 今、全国各地で急激に増加している『ドラッグストア』。その数、約2万店舗です。薬や日用品だけではなく、商品の種類の幅も広がっています。出店ラッシュが続く中、各ドラッグストアでは“強みを生かした戦略”で差別化を図っています。利用客の心を掴むものとは?ドラッグストアの生き残り戦略を追いました。

■ケース①プライベートブランドで客の心を鷲掴み!イオングループの『ウエルシア薬局』

 業界内で売り上げ1位を誇る『ウエルシア薬局』。数多くの薬や健康食品が販売される中、ウエルシア薬局が最もこだわっているのは、“ここでしか買えない”商品です。

(『ウエルシアホールディングス』商品企画部長・岡本貴さん)
「『からだウエルシア・暮らしウエルシア』というブランドは、中身にこだわりの詰まった商品が多くなっています」

 自社が中心となって企画・製造するプライベートブランドは、イオングループという企業規模の大きさを武器に、薬局ならではの「健康」を意識。商品数は、約300種類にのぼります。

Q.オリジナル商品を買ったことはありますか?
(来店客)
「あります。お値段もお手ごろだけど、ウエルシアだから間違いないかなというのはあります」

 また、コロナ禍で需要が高まり、激しい商品開発合戦が繰り広げられている『冷凍食品』まで、独自で開発しています。

(『ウエルシア』商品企画部長・岡本さん)
「商品名が、『あの店主がつくったメニューにはない炒飯(チャーハン)』ということで、“あの店主”とは何なのか、非常に気になるみたいです」

 “あの店主”とは、東京で有名なラーメン店の店主。人気の醬油ラーメンをベースに、オリジナル鶏油(チーユ)チャーハンを開発しました。

 さらに、この夏に人気だったのが―。

(『ウエルシア』商品企画部長・岡本さん)
「夏場限定の、『ひと口でメロメロになるクラウンメロンアイス』です。ロ(ろ)と口(くち)が多いなと、ちょっとクスッとくるような」

 果物の王様として知られるマスクメロンの中でも、最高峰といわれる『クラウンメロン』を贅沢に使用しているアイスです。

(『読売テレビ』石川千智記者)
「メロメロになるほど、甘くて濃厚です!」

 ウエルシア薬局では、プライベートブランドの強みを生かして、客の心をがっちり掴んでいます。

■ケース②大手メーカーとタッグ!男性用化粧品に力を入れる『マツモトキヨシ』

 業界売上3位の『マツモトキヨシ』通称マツキヨといえば、大きく展開されているのが化粧品コーナーです。2019年、美容や健康に関する商品の売り上げが高い『ココカラファイン』と経営統合したことで、開発に力を入れています。

 これまで、顧客データを基に様々な女性用化粧品を開発してきましたが、ここ最近力を入れているのが『男性向けの化粧品』です。

(メイクを体験した男性)
「韓流スターになった感じやわ」

Q.これからもメイクをしていきたいですか?
(メイクを体験した男性)
「していきたい。反町(隆史)になりたい」

 商品開発の担当者は…。

(『マツキヨココカラ&カンパニー』商品開発部 次長・櫻井壱典さん)
「男性化粧品カテゴリー全体の売上高は、大きく伸長しています」

 男性の美容意識の高まりを受け、男性化粧品メーカー『マンダム』と商品を共同開発。マツキヨだけでなく、マンダムにとっても、新たな顧客の開拓につながったといいます。大手企業とタッグを組むことでブランド価値を上げ、他社との熾烈な競争に挑んでいます。

■「化粧品を一個買ってくれれば、トータルの利益は取れる」ドラッグストアの“儲けのからくり”

 ドラッグストアが日本に上陸したのは、1970年代。高度経済成長期と共に、スーパーやコンビニ・ドラッグストアなど、新たな小売業が続々と上陸しました。

 当時のドラッグストアは医薬品や日用品のみを販売していましたが、なぜドラッグストアで幅広く商品が販売されることになったのでしょうか。

 詳しい専門家は―。

(『流通経済研究所』常務理事・山崎泰弘さん)
「元々ある店舗の売り上げを伸ばすためには、『客数を増やさないといけない』と、もっと高頻度で買ってもらえる商品を販売する必要が出てきました。それで、食料品を販売するチェーンが増えてきました」

 ドラッグストア全体で、売り上げに占める食品の割合は、2015~2023年の7年間で約2倍にまで成長しました。

Q.なぜ、ここまで伸びたのでしょうか?
(山崎さん)
「ドラッグストアでは、化粧品や医薬品が単価も高く、粗利利益率も高い商品です。化粧品を一個買ってくれれば、食品は値段を下げても、トータルの利益は取れるということになります」

■ケース③野菜だけでなく、総菜まで驚きの価格で…“一回の買い物で全て買い物が終わる”ことを意識『クスリのアオキ』

 この“儲けのからくり”を活かしているのが、石川県に本社を置く『クスリのアオキ』です。

(石川記者)
「店内に入ると、目の前にはキャベツが販売されていて、内装はまるでスーパーのようになっています」

 キャベツ1玉106円・きゅうり1本42円など、安い野菜がたくさん。総菜などは、その日に店舗で加工・調理したものを販売し、常に新鮮で出来たてのものをお客さんに提供。また、『ネギトロ丼』228円(税抜き)や『特製だしのロースかつ丼』299円(税抜き)など、驚きの価格で販売しています。

Q.安いと感じますか?
(来店客)
「安いですね、確かに」
「お野菜が安くて、びっくりしました」
「いつもレタスなどがすごく安くて、他のお店が高いときでも安いんです」

 関西でも出店数を増やしているクスリのアオキ。薬の“ついで”に食品を買ってもらうのではなく、2021年からは『フード&ドラッグ』を掲げ、食品の売り場面積を全体の半分にまで広げました。

 その狙いとは―。

(『クスリのアオキ』スーパーバイザー・柴田慎之介さん)
「一回の買い物で全て買い物が終わる、『ワンストップショッピング』という買い回りを意識しています」

 『ワンストップショッピング』を軸に、驚きの安さと品ぞろえで、多くの客を呼び込んでいます。

(『流通経済研究所』常務理事・山崎さん)
「食品を扱うことによって、今まではスーパー・コンビニから客を奪ってきたわけですけども、そことの競争も、今後は課題になってくるのかなと思います」

 スーパー、コンビニ、ドラッグストア…人口は減っていく一方の中で、どの業態の、どの企業が生き残るのか―戦いは、ますます激しくなっていきます。

(「かんさい情報ネットten.」2024年8月20日放送)