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国内メディアで批判噴出 プーチン大統領の健康不安説再燃 裏側でいま何が

2022年5月31日 11:07
国内メディアで批判噴出 プーチン大統領の健康不安説再燃 裏側でいま何が
右松健太キャスター

ウクライナ侵攻から3か月あまり。長期化の様相を呈する中、侵攻への批判がロシアの国営テレビなどで出始めました。またプーチン大統領の健康不安を指摘する声も。5月26日放送のBS日テレ「深層NEWS」では、笹川平和財団主任研究員の畔蒜泰助さん、慶応義塾大学教授の廣瀬陽子さんをゲストに侵攻への批判や健康不安説がおこる裏側に迫りました。

■ロシア外交官 異例の体制批判

右松健太キャスター
「3か月に及ぶウクライナ侵攻でロシア側は厳しい戦況への異論を情報統制や弾圧によって封じてきましたが、いよいよ国内から批判が噴出してきています」

郡司恭子アナ
「スイス・ジュネーブの国連事務所でロシア代表部に勤務するボリス・ボンダレフ参事官。5月23日、自身のSNSで辞任を表明しました。その理由として、『2月24日ほど我が国を恥じたことはない』『この血まみれで無駄で絶対に必要のない卑劣なことを共有することはできない』としています」

右松キャスター
「ロシアの外交官が直接体制批判をしましたが」

畔蒜泰助氏
「ロシアのエリート層でしかも政府機関の人ですから、この発言は決して軽いものではないと思います。おそらく彼はこのままロシアには戻らずに海外で生活をする何らかの手段を既に確保をした上でこういう発言を自らの良心に従って発言をしたと思います。ただ、こういう人たちが今後続々と現れてくるかというと、必ずしもそうではないのではないかという気はしています」

廣瀬陽子氏
「私も雪崩をうってというような形でのこのような現象が続くということはないのではないかなという気がしています。実際に匿名のインタビューなどで『やってられないが、もう既に自分が外交官なり役人なりのポストにいる以上は共犯なので、そこから逃げることはしない』というような発言をしている人もいます。やはり自分の心の良心と、自分の今後の身の上とをバランスにかけながら悩んでいる人というのは相当いると思います」

■ロシア国営テレビで異例の戦況批判

右松キャスター
「ウクライナ侵攻への批判はロシアの国営テレビでも出始めています」

郡司アナ
「ロシアの国営テレビの人気討論番組でウクライナ侵攻を批判したのは、退役大佐で軍事専門家のミハイル・ホダリョノク氏です。ホダリョノク氏は戦況について『我々は近い将来、アメリカ・ヨーロッパの先端兵器を手にした100万人のウクライナ兵を相手にしなければならなくなる』と指摘し、『耳に響きの良い情報』に惑わされないよう呼びかけました。そして『重大な問題は、我々が完全に国際的に孤立しているということだ。状況はさらに悪化するだろう』との懸念も示しました」

「しかし、CNNによりますと、ホダリョノク氏はこの発言の翌日に、ウクライナ軍が反撃に転じることが可能だとの見方は『大きな誇張』だと指摘したということです」

郡司アナ
「侵攻への批判ともとれる発言が国営テレビで放送されるというのは異例なのでしょうか?」

廣瀬氏
「かなり異例だと思います。そもそもホダリョノク氏をテレビに呼ぶ段階で、こういう発言が出るということを予測している可能性は極めて高いです。また、本当にこういう発言を阻止したいのであれば、その場で例えば音楽の番組に変えてしまうなんてことも国営テレビでしたら簡単にできることなんですが、それをあえて流したというところにちょっと国営テレビの意図も感じます」

右松キャスター
「ホダリョノク氏とはどんな人なんでしょうか?」

畔蒜氏
「元軍人で軍事に特化した新聞に定期的に寄稿している著名な軍事専門家のコラムニストです」

■国営テレビでの批判もプロパガンダ?

右松キャスター
「プーチン大統領の主張やロシア軍の軍事行動とロシア国民が気づいているいまの状況にはずいぶん乖離があるのでは。あえて国営放送にホダリョノク氏を呼ぶことによって、乖離を埋めていくという狙いもあるのでしょうか?」

畔蒜氏
「このところロシア政府の高官、ショイグ国防大臣やパトルシェフ国家安全保障会議書記も同時に『今回の軍事作戦は予定どおりには必ずしもいっていない、しかも長期化する、我々は期限を区切っていないんだ』という発言を相次いで行っているわけです。これまでロシア政府が国営放送を通じて伝えてきた情報と現実とは明らかに乖離がある。だとすると、やはりこの乖離を埋める1つのピースをつないでいく必要がある」

「もしかしたら彼のような反対派の人があえて『戦況が厳しいんだ』という情報を伝える、そういう役割をホダリョノク氏が担ったのではないかというふうな仮説がありうるのではないかと思います」

右松キャスター
「仮説ではありますが、戦況が厳しいということを専門家の口を借りて国民に浸透させるとか、今後、起きうる過酷な現実に慣れさせるためとか、そのような狙いがあるのでしょか?」

廣瀬氏
「あると思います。現実問題として政府の公的なプロパガンダや情報を見ると、軍事作戦がうまくいっているというような報道がなされているわけですが、一方、退役軍人の方などは『そんなにうまくいっているのにこんなに戦争が長引いてるのはおかしい』というようなことを言っている人というのも増えてきています」

「どこかの時点でいきなり真実が明らかになってしまうと動揺も大きいということで、少しずつ乖離を埋めていく作業というのが始まっているというふうに見ることもできると思います」

右松キャスター
「ホダリョノク氏は思いの丈を喋ったというわけではなく、これは計算された、国営テレビを巻き込んだプロパガンダの一環と見た方がいいんでしょうか?」

畔蒜氏
「ホダリョノク氏は自分の分析をそのまま話したということなのかもしれないですが、ただし彼をブッキングしたスタッフはそういう意図を持ってやった可能性はあるということだと思います」

■プーチン大統領の健康不安説…手の震えの映像がなぜ?

右松キャスター
「これまでも健康不安が報じられてきたプーチン大統領ですが、再び病気を抱えているのではとの見方が報じられています。この情報をどのように評価しますか?」

畔蒜氏
「本当になんとも言えない、判断しようがないわけですが、ただ、このような情報を一つひとつ可能な形で検証をしてみるということは大事だと思います。その意味で1つ検証の材料になりうると思うのは、プーチン大統領の手の震え。例えば、ショイグ国防相との会談の際、プーチン大統領がずっと机の脇をずっと握っていました」

郡司アナ
「先月21日、プーチン大統領がショイグ国防相から南東部マリウポリの戦況について報告を受けた際の様子です。約12分間の動画ですが、プーチン大統領は冒頭から右手でテーブルの端を強く握り、最後まで離すことはほとんどなく、さらには足を小刻みに揺らすという動作も見せていました」

右松キャスター
「こうしたプーチン大統領の様子について、ウクライナ人記者が『2月下旬と比べて明らかに体調が悪そうだ』とツイッターに書き込みました。またイギリスの元国会議員が『パーキンソン病を患っている。テーブルを握っていたのは右手の震えを抑えようとしたからだ』という見方を示しています」

右松キャスター
「先ほどの国営テレビの話もそうですが、情報に関してかなりコントロールされたものが出ているはずです。最高権力者の病というものは機密情報だと思いますが、映像が徐々に出始めていることの事実をどうみますか?」

廣瀬氏
「これも先ほどの話と共通してくると思いますが、例えば、病気が進行していて、いずれ明らかになるので少しずつ片鱗を見せているのか、それとも何かあえてこのような病気であるということを見せて、政権転覆を早めようとしている意図があるのか、その辺がちょっと分かりかねるところなんですが、以前の映像とは違うわけです」

「2月のベラルーシ・ルカシェンコ大統領との会談などでも、ギューッとイスを握っている映像が流れており、1回ではありません。他方で、そうではない映像もあると。どういう頻度でどういう時に(映像が)出てくるのかという検証はやはり必要かと思います」

右松キャスター
「病気かもしれないと憶測を呼ぶような映像をコントロールされてないまま出ているのか、コントロールした上で出しているのか」

畔蒜氏
「まさにそこが非常に疑問です。特に先ほど、ショイグ国防相との会談は明らかにいつでもリハーサルもできるでしょうし、撮り直しもできるはずです。ルカシェンコ大統領との会談時の映像もわざわざ出す必要もないんだと思うのです」

「コンロールをした上で出しているということなのだとすると、その意図は何なのかというところです。いずれにせよ、プーチン大統領の健康問題というのは今後理解すべき、非常に重要な問題であることは間違いないと思います」

■軍事侵攻決断に影響は?

右松キャスター
「ロシアの独立系メディアの『プロエクト』では、過去にさかのぼってプーチン大統領の病気治療を報じています」

右松キャスター
「『血液のがん』『パーキンソン病』『甲状腺がん』など、当然事実はわかりませんが、仮に何らかの病気を患っていたとしたら、今回のウクライナ軍事侵攻の判断に影響を与えたいうことはあり得るんでしょうか?」

畔蒜氏
「プーチン大統領の今回の判断にはやはり彼の歴史観が大きく影響を与えていると思います。ただ、もし彼が自分に残された時間は短いと思ったとしたら、それは今しかないというふうな判断を下すということはありうるのだと思うのです。ただ、これは実際どうなのかということは分からないです」

右松キャスター
「プーチン大統領の性格という点で、こういう判断をするようなことはあるんでしょうか?」

廣瀬氏
「あると思います。これはプーチン大統領に限らず、旧ソ連のリーダーに割とありがちなのですが、人命が非常に軽いですよね。人命が軽いので、自分のためにはもう国民は死んでもいいというような、なんとなくそういう基本的な考え方があるような気がします。そうなると、自分の歴史に名を残すためであれば、ある程度の人命の喪失っていうのはやむを得ないというところで軍事行動などを考えている可能性というのは極めて高いと思います」

■プーチン政権の終わりを予測

右松キャスター
「こういった健康不安説が報じられる中で、プーチン大統領のこの政権の終わりについてもイギリスの専門家が予測をしてます」

飯塚恵子 読売新聞編集委員
「全体としてやはりプーチン氏の健康については、何か問題があるという指摘はイギリスでもアメリカでも多いと思います。ただ、健康危機が政権の崩壊につながるかどうかについては、私はアメリカとイギリスでは少し意見が分かれているように思えるのです」

「イギリスの方が政権危機説みたいのが強いように思います。アメリカの報道の方が少し冷静で、そこまでプーチン氏が政権で危機に陥っているという、むしろそれを否定するような報道が多いように思います」

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