【解説】プーチン大統領“重病説” 元妻・恋人も制裁対象 英メディア報道
ロシア軍によるウクライナ侵攻に終わりが見えない中、今、ロシアのプーチン大統領には、“3つの不安“がささやかれています。「ロシア軍 戦力3分の1失う」、「元妻や恋人も制裁対象に」、「自身も重病?」、この3つの不安について、詳しく解説します。
■長期化…ウクライナ侵攻 ロシア軍の攻撃“失速”?
ウクライナ侵攻の長期化により、ロシア軍に変化が出てきています。
イギリス国防省は、「ロシアのドンバス攻撃は勢いを失い、予定より大幅に遅れている」との分析を明らかにしました。
さらに、「ロシアは2月に投入した地上戦力の3分の1を失った可能性がある」として、「今後30日以内に、進軍速度を劇的に加速させることはないだろう」とみています。
そして、2つ目の不安は、各国がロシアへの制裁を強化していることです。イギリス政府は、「ロシアに対し、追加制裁を科した」と発表しました。
イギリスでは1000人以上をロシアへの制裁リストに載せていますが、新たに追加された人の中に、プーチン大統領の元妻(64)と、現在の恋人で事実上の妻とも言われている女性(39)も含まれていると、イギリス・BBCは伝えました。この2人は、イギリスへの渡航禁止や資産凍結など制裁対象となるとみられています。
この2人とプーチン大統領の関係を詳しく見ていきます。元妻は、2014年までプーチン大統領と結婚していました。
一方、現在の恋人とされるアリーナ・カバエワさん(39)は、日本でもおなじみです。2004年・アテネオリンピックの新体操個人総合で金メダルを獲得した輝かしい経歴を持ち、「妖精」と呼ばれました。カバエワさんは、プーチン大統領とは30歳の年の差です。
イギリス・タイムズ紙は、「2007年から2014年までロシア下院の国会議員を務めるカバエワさんが、2008年からプーチン大統領とロマンチックな関係を持った」と伝えています。
そして、プーチン大統領との間には少なくとも3人の子どもがいると言われていて、現在は子どもと一緒にスイスに住んでいると報じられています。メディアで報じられることもある元妻との「2人の娘」とは別に、この3人の子供がいるということです。
ただ、スイスでは「妄想癖のある独裁者の妻」などと批判を受け、「カバエワさんの国外追放を求める嘆願書に何万人もの署名が集まっている」とタイムズ紙は伝えています。
なぜ、カバエワさんを含む側近も制裁対象にしたのでしょうか。BBCによると、イギリスのトラス外相は「プーチン氏の贅沢なライフスタイルを支える陰のネットワークを暴露し、標的にしている」、「ウクライナが勝利するまで、プーチン氏の侵略を援助する全ての人々への制裁を続けるだろう」と強調しました。
こうした状況を専門家はどうみているのでしょうか。元妻や恋人への制裁について、防衛研究所の山添博史氏は「『プーチン氏について行っても、ロクなことがない』と感じさせるようなメッセージになる」と述べました。親族・側近にまで制裁対象が広がるとすれば、プーチン氏の周辺、ロシア国民においても不安が出てくるだろうと分析しています。
一方、プーチン大統領については、自身の体調を巡り、新しい情報が伝えられています。
これまでは、「プーチン大統領は、甲状腺がんで医師の診察を受けている」などと報じられてきましたが、イギリス・タイムズ紙は「『血液のがん』にかかっている可能性がある」と報じました。
ウクライナ侵攻後の3月中旬、プーチン大統領に近いロシアの新興財閥「オリガルヒ」のロシア人男性が西側の投資家に対して、プーチン大統領の健康状態について話しました。録音されていると知らない状況で男性が話した録音ファイルをアメリカメディアが入手し、タイムズ紙が引用しました。
ウクライナ侵攻を指示する4か月ほど前の2021年10月、プーチン大統領は「血液のがんに関連する背中の手術を受けた」と証言しました。そして、「血液のがんで重病」と表現しています。さらに、「がん治療に詳しい専門家を含む3人の医師が常に同行している」と伝えています。
こうした事柄を話したというオリガルヒの男性は、「プーチン氏が、がんで死ぬか、クーデターなどでこれ以上の不幸から免れることをみんな願っている」と述べたということです。
当然、こうした“健康不安説”は、情報戦の一環である可能性もあり、真偽は定かではありません。ただ、続々と情報が出てくることについて、防衛研究所の山添博史氏は「『プーチン氏は、健康で強い指導者』だということが大前提となっているため、重病説が出てくると、ロシア国民の不安・混乱につながるのでは」とみています。
また、心配なのは、プーチン大統領の実質的な後継者が私たちにもわからないことです。仮に、プーチン大統領が急に倒れ、職務を続けられなくなった場合、さらなる混乱の心配も出てきます。
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あらゆる不安がエスカレートしていく場合、暴力的な手段につながる可能性も強まるということで、どちらに転んでも懸念が晴れないのが現状です。