『リトル・マーメイド』実写化で何が変わったのか 映画評論家が語る“ディズニーの強い意志”
■日本で2週連続1位 “細かくアップデート”された実写版
『リトル・マーメイド』は美しい歌声を持つ人魚・アリエルが人間のエリック王子と出会うことで新しい世界に思いを募らせ、夢に向かってひたむきに歩む物語。6月9日に日本公開されると、動員ランキングで2週連続の1位(6/9-11、6/16-18)を獲得し、興行収入は14億6700万円を突破しています。(興行通信社調べ)
1989年のアニメ版を実写映画化し、主人公・アリエル役のハリー・ベイリーさんを始め多様な人種を起用したことでも話題となった本作。「アニメ版からかなり細かくアップデートされている」と児玉さんは話します。
■アリエルがエリックを好きになる理由 “ひとめぼれ”から“共感性”へ
児玉さんが最初に違いとして挙げたのは、アリエルとエリック王子の関係性です。
児玉:アニメ版ではアリエルがエリックを見たときに「ハンサム」と言って、見た目に惹かれているように見えますが、実写版では容姿についての言及はありません。家柄に縛られているエリックの姿と、人間の世界に行くことを禁じられているアリエル自身の境遇が重ねられていて、そうした共感性によってエリックに関心を抱く描写になっています。
またアリエルは人間界のものを洞窟に集めていますが、実写版ではエリックにも世界中のコレクションを集めた部屋があり、コレクションを共有しながら仲を深めていく描写になっています。見た目が重要視されるルッキズム要素を少なくしていて現代版にアップデートされています。
■アリエルをより“自立した女性像”に
アニメ版では声を失った代わりに人間の姿になったアリエルが、間違った使い方でフォークやたばこのパイプを扱うなど、無知で未熟な姿が描かれていました。そんなアリエルのキャラクター像にも変化は表れていると言います。
児玉:アニメ版の声を失ってからのアリエルに比べて、実写版では知的に感じられる描写が増えていると感じました。序盤にサメと格闘するシーンでは、鏡に自分の姿を映してそこにサメを誘導する戦略で倒しています。さらに中盤では、エリックのコレクション部屋で、アリエルが石を叩き割って中から綺麗な宝石を取り出してみせたり、貝殻を吹いて音を出してみせたりする場面があり、エリックに対してアリエルが自分の知恵を授けるという描写になっていて、お互いに知性のある対等な関係になっています。
また、アニメ版では悪役・アースラがエリックと結婚しようとするときに生き物たちによって阻止されたのが、実写版ではアリエルが自分で止めていたり、アニメ版で最後に巨大化したアースラを倒すのはエリックだったのが、実写版ではアリエルが自分の手で倒しています。
元々アニメ版でもアリエルは男性から守られるのではなくて男性を助ける女性として出てきたキャラクター。その部分が実写版ではより強化されていてアリエルの主体性が高まっていると思いました。