『下妻物語』『ハピネス』作者・嶽本野ばら ロリータへの愛語る 「お洋服に助けられて生きてきた人生」
映画『ハピネス』は、心臓の病気のため余命1週間を告げられた高校生・由茉(蒔田さん)と、彼女に寄り添い続ける恋人・雪夫(窪塚さん)の物語です。人目を気にしてできなかったロリータファッションをして、大好きな人と残りの人生を笑顔で幸せに過ごす姿が描かれます。
――原作者として映画を見ていかがでしたか?
(出版してから)結構長い間たっている昔の作品なので、“何で今?”という(気持ちで)完成するまであまり信じてなかったんですけど、でもあるんですね、ちゃんと公開される(笑)
――執筆したときはどんな思いだったのでしょうか?
原作自体は出したときはものすごく自信があったんですけど、思いのほか売れなかったんです。小説家デビューを2000年にしてから、自分が書かなきゃいけないと思っていたことが『ハピネス』で書き尽くした“集大成”と脱稿したときに思って、引退を決意してたんですけども、売れなかったのでこのままフェードアウトちょっと違うなと思ってズルズルとここまで。ようやく評価を受けるタイミングが来たのかな、感慨深いです。
■執筆のこだわりは「性格、人物像は全部お洋服で表現したい」
――物語をつくるときのこだわりはありましたか?
『この人はどんな服装をしている、どんな格好をしている』というところから人物を設定していくんです。今回も『Innocent World』(お嬢様スタイルのブランド)が好きな女の子というところから物語を設定していくので、お洋服ありき。作家さんだったら人物造形のときに、この人はどこの大学を出て、どこの会社にいて、交友関係はどうとか。僕の場合は性格、人物像を全部お洋服で表現したい。
■「お洋服に助けられて生きてきた人生」
『下妻物語』や『ハピネス』など、ファッションを通して物語を描き、読者を魅了してきた嶽本さん。普段、自身もフリルやリボンがついた『ロリータファッション』をすることが多く、学生時代には周りと異なる好みから、“生きにくさ”を感じてしまうこともあったといいます。
――普段、ロリータの洋服を着ることも多いそうですね?
男子だし、年も50(歳)を過ぎてるし、もう初老だし、ロリ服とか着ちゃいけないんですけど。“店員さんも嫌だろうな”と思って、(店に)入れなかった時期はあったんですけど、もう超えちゃって。お洋服に対しては含羞がないというか、ずうずうしいです。
――ロリータ服を好きになったきっかけを教えてください。
小学校の時に少女漫画に出会っちゃって、友達は男の子だから野球、サッカー、戦闘モノのアニメの話とか、“入り込めないんだよな…”と思ってて、“僕が変なのかな…”と思って、できるだけ合わそうとはしてたんですけど『キャンディ♡キャンディ』を見て、“ここに自分の好きなものが入ってる。自分はこういうものが好きなのか”ってしっくりきて。
――生きにくさを感じてしまう時期はありましたか?
中学生になると制服着せられるでしょ。学ランだったんですよ。髪の毛も耳を見せないと校則違反とか。(小学生まで)ずっとボブだったんですよ。「そんな長いの校則違反」って言われて学生時代はそれでものすごく生きにくいなと。好きなお洋服を着ているときは全然生きやすいので、お洋服に助けられて生きてきた人生でした。
――『ロリータファッション』は嶽本さんにとってどんな存在ですか?
あって当然のものですけど。自分の背筋を伸ばすというか、ちゃんと自分として恥ずかしくないようにするための『相棒』っていうか『先生』っていうか『お友達』でもあるし『恋人』でもあるし。