「明日がどうなるかわからない」ウクライナに住む絵本作家の夫婦 戦渦でも笑顔でいる理由
日本で去年6月に出版された絵本『戦争が町にやってくる』(ブロンズ新社)は、“ロンド”と呼ばれる美しい町に、ある日「戦争」が突然やってくる恐ろしさを描いた物語。2人はこの作品の制作過程や、戦時下での暮らしなどを子どもたちに伝えるため先月22日、東京・調布市にある桐朋小学校を訪れました。
2人が授業で見せたのは、現在のウクライナの街の写真。毎日のように攻撃を受ける戦渦の中、教会はステンドグラスを守るためにホイルのようなもので覆ったり、オブジェがバラバラに破壊されないよう毛布で包んだりする対策がなされているといいます。
また、200年近い歴史があるという学校のドアを“砂を入れた袋”で防いでいる写真も。ここは、生徒や近所に住む人が避難できるシェルターの役割を果たしていて、土台が崩れないよう対策しているということです。
■笑顔でアイスも 心がけている“日常生活”
そして、小学生たちに特に強い印象を残したのが、ロマナさんとアンドリーさんが写った1枚の写真。住んでいるアパートのバルコニーでアイスを片手に、笑顔を見せる2人の姿がありました。
アンドリーさんは、「戦争の時にもたくさんの花を育てたり、暑くなったらバルコニーでアイスを食べたり、なるべく普通の日常生活を送ることを心がけています。この写真を見ると、本当に戦争中に撮った写真だとは思えない。不思議に思うのですが、笑顔で頑張っていくしかない」と写真について説明すると、ロマナさんは「こういった平和的な日常の大切さが、戦争が始まってから初めてわかりました。大切な静かな時間を自分で作らないと、次に警報が鳴ったら楽しめなくなる。そういうふうに、毎日大切な時間を作っているんです」と、笑顔でいる理由を明かしました。
授業では児童の1人が、「戦争の中でも自分たちの楽しみを見つけたり、いつも通りに過ごすことを心がける。その(戦渦の)中でも笑顔でいるのがステキだなと思った」と、他の児童に感想を伝える姿が。別の児童は「戦争は遠い存在だったから、急に戦争が来てビックリしたと思うし、戦渦でも本当の笑顔が作れてすごい。僕はこんなことはできない」と感想を語ると、ロマナさんは「今の笑顔が私たちにとっては力になる。ちょっとしたセラピーです。明日どうなるかわからないので、なるべく親や久しぶりに会っていない友達に連絡をとったり、日常の中で短くても充実できる時間を楽しんでいます」と、返答しました。
小学生たちの話を直接聞いたロマナさんは、授業を終えて「私たちにとってすごく大切なのは、子供たちが毎日の平和な生活のもろさを感じてくれたこと。当たり前すぎて常に手の中にあると勘違いしてしまうのですが、実際平和というものはもろく、簡単に失われてしまいます。それを感じ取ってくれた子供たちにすごく感心しています」と、笑顔を見せました。