“何で女性が胸を出さなきゃいけないんだ” 俳優としての憤りから性暴力問題の映画製作 監督を取材
物語の主人公は、ある映画監督から性暴力を受け、トラウマを抱えた俳優志望の若い女性。さまざまな形の性暴力や、ハラスメントに悩む人たちが集まるシェアハウスを舞台に、被害当事者たちが寄り添いながら連帯し、自分と世界を変えるために声をあげようと葛藤する姿が描かれています。
■俳優としての憤り “何で女性が胸を出さなきゃいけないんだ”
今回、初めて長編映画のメガホンをとった松林監督。なぜ、性暴力を題材に映画を製作したのか。その理由の一つに、俳優としても活動する松林監督だからこそ感じてきた、映画業界の“生きづらさ”がありました。
「何でこんなに男性本位のキャラクターが作られてしまうのかという点に憤りがありました。俳優として生きていく中で、憤りや葛藤、現状維持が良くないと思ったこともあって。一つ例を出すなら、“何で女性が胸を出さないといけないんだ”と。脱ぐことが一つのステータスみたいなところはやっぱりまだまだあって。今までの“男性目線”で作られてきたものを変えたいという思いがありました」
■被害者たちの現実を繊細に 性被害の“事後”を描く
劇中では、性行為による被害シーンをあえて描かなかったという松林監督。こだわって描いたのは性被害の“事後”。そこには自身の経験も生かされているといいます。
「どれだけ被害を受けた人たちが苦しんでいるかを中心に描くことが大事だという思いがありました。(男性から性暴力を受けたことで)男性という存在が受け入れがたい気持ちになってしまうのは、私にも経験があるし、突発的にこわばってしまうところがある。ぐっと手を握りしめてしまうところとか、無意識に起きてしまう体の異変は繊細に描きたいと思いました」