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性被害にあった子供や男性の服も “服装”に着目した展示がスタート 携わった学生の気付きとは

2023年11月25日 22:15
性被害にあった子供や男性の服も “服装”に着目した展示がスタート 携わった学生の気付きとは
展示『そのとき、あなたは、何を着てた?(What Were You Wearing?)』
上智大学で25日、性暴力被害と服装について考える展示『そのとき、あなたは、何を着てた?(What Were You Wearing?)』がスタートしました。

『そのとき、あなたは、何を着てた?(What Were You Wearing?)』は、2014年にアメリカのアルカンザス大学でスタートした展示です。性暴力の被害に遭った時に着ていた服を展示することで、挑発的な服装をした人が性暴力被害に遭うという先入観をなくし、性暴力とその二次被害を防ぎ、『あなたは悪くない』というメッセージを届けることが目的だといいます。

過去には、全米の大学やヨーロッパなどで実施されてきたこの展示、日本では今回が初めての開催となります。今回の展示を決めた、ジェンダー論などを専門とする上智大学の田中雅子教授は「昨年、私がニューヨークでこの展示を見た時に、特に子供服とか男性の服も展示されていることに衝撃を受けて、ぜひ日本で開催したいと思いました。私はジェンダー論を教えてるんですけれども、遠い、よその国で暴力が起きているというような関心で受講する学生が多い。痴漢とか盗撮の被害に遭っても、それを誰かに相談したり、被害を届けたことがあるっていう人も極めて少ないので、今回このイベントを通じてそういうメッセージを伝えたいと思いました」と語ります。

■実際の体験談とともに当時の服装を再現

準備には半年以上の時間を要したといい、展示されている内容は、SNSやホームページで募ったといいます。

高校時代に、通りすがりの男性から被害を受けたという40代の女性
「駅のホームで電車を待つ間、通りすがりの男性から精液をかけられました」

5歳くらいの時に、警官から被害を受けたという50代(性別非公開)
「警官が私のワンピースの胸当ての脇から指を突っ込んで、ニヤニヤしながら『かわいいね』『お母さんが作ったの?』とか言いつつ乳首を弄んだ」

さらに、同じ大学の女性からストーカー行為を受けた男性など、様々な体験が展示されています。中には、“痴漢”に遭った際の服が多く見られます。田中教授は「痴漢という言葉が、津波と並んで外国でも知られている日本語だということが象徴していると思います」とし「体験を寄せてくださった方のほとんどが、誰にも今まで相談したことがないと回答していらっしゃって、やはりやり場のない思い。また、自分が悪かったって思っている方が非常に多かったと思います」と分析しました。

■兄から被害を受けた被害者の声「誰でも被害者になることを知ってほしい」

さらに田中教授が印象的だったと語るのが、肉親から受けた被害です。

7~8歳の時、兄から被害を受けたという20代(性別非公開)
「3歳上の兄に、おもちゃの手錠で遊ぼうと言われた。両親が夜に出かけると、裸にされ、赤いバンダナで目を塞がれ、手錠を両手や両足につけられた」

中学1年生の時、兄から被害を受けたという50代女性
「2歳離れた兄からでした。家族にも相談しました。しかし、加害者が実兄であることが誰にも信じてもらえず、家が安全なところではなくなりました。誰でも被害者になることを知ってほしいです」

警察庁の調査によると、性犯罪・性暴力の被害者のうち、約2割が親、その他家族・親族からの被害だといいます。田中教授は「自分だけじゃないんだとか、私は悪くなかったってことを感じてほしいですし、あなたが着てたものが理由だっていうような、服のせいにしないってことは当然ですし、やはり被害を受けた人に、あなたは悪くないということは一番伝えたいことです」と語りました。

■携わった学生の気付き…被害にあった後も「ずっと続いていく問題なんだな」

さらに、展示に携わった田中教授のゼミ生は「性被害ってのは女性だけに起こることではなくて、特に若い女性とかに限られた問題ではなくて、どのセクシュアリティー、どの年代の方でも起こる問題だということがまず気付きだった。性被害にあった時の体験ももちろんつらいけど、それと同時に、そのあとに相談した友達とか、(性被害を支援している)センターの方々とかのお話の中でも、また心に傷を負ってしまうということが(展示の)キャプションを読むとよくわかるので、性被害っていうのは起きた時だけが事件なんじゃなくて、その後もずっと続いていく問題なんだなと気付かされます」と語りました。

上智大学での展示は、12月8日まで行われる予定です。

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