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“振り袖は着たくない” 固定観念にとらわれない新成人イベントを取材

2023年1月9日 15:45
“振り袖は着たくない” 固定観念にとらわれない新成人イベントを取材
固定観念にとらわれない『SEIJIN-SHIKI』
一生に一度しかない成人式。そんな特別な節目を、固定観念にとらわれず自分らしい服を着て過ごそうというイベント『SEIJIN-SHIKI』が、東京・渋谷で開催されました。

会場には、2021年から23年に新成人を迎えた約120人が集まり、インフルエンサーとの交流や、ポートレート撮影などを楽しむ様子が見られました。

また、“今後につながるご縁にしてほしい”という主催者の思いから、参加者同士の歓談の時間が多く設けられました。

■“女性”は振り袖、“男性”はスーツという固定観念にとらわれず笑顔に

1年後の自分に宛てて手紙を書いていたのは、性自認が男性にも女性にもあてはまらない“Xジェンダー”の香瑠さん(21)。振り袖は着たくないという理由で地元の成人式は欠席しましたが、このイベントには絶対に参加したいと、北海道から駆けつけました。イベントについて「普段出会えないようないろんな人たちもいて、来てよかった。ありのままの自分でいられる空間だし、白い目で見てくる人が誰もいない。(地元の)成人式に参加しなかったのは自分だけど、節目は大事にしたかったから参加できてうれしいです」と語ります。

ポートレート撮影を楽しんでいたのは20歳の3人組。あやのさん(写真左)、まいさん(写真中)の2人とタカハシさん(写真右)は、会場で知り合い、仲良くなったといいます。

性的感情を抱かない“アセクシュアル”のタカハシさんは「地元にはセクシュアリティーについてオープンにしている友達があまりいないので、楽しめたらいいなと思って来ました。自分らしくいられて気が楽ですし、みなさんキラキラしていて、こういう場を開催してくれてありがたいです」と笑顔をみせました。

■“本当は着たくないけど…” 地元の成人式には「最後の我慢」で参加も

「女性らしくしなければいけないと思って育ってきたので、自分みたいな人がこんなにいるんだって実感できてうれしいです」と話すのは、スーツで参加したまいさん。地元の成人式については「親にとって“振り袖を着る”というのが当たり前で、本当は着たくないんですけど、親不孝になっちゃったらダメなので、着て参加しようと思います」と話します。

一際目を引くピンク色の華やかな振り袖で参加したのは、性別の自認がないというしょーちゃんさん(20)。この翌日、地元・群馬の成人式に参加するといい「あしたは普通にメンズスーツを着ます。本当は行きたくないと思っていたんですが、親の要望があったので最後の我慢かなと思って出席します」と語りました。

■“着たい服が着られない”自身の経験からイベント開催を決意

こうした“親からの期待”に苦しむ人は多いと話すのは、イベントの主催者・田中史緒里さん(28)。女性体型用のメンズスーツを手がけるKeuzesの代表です。戸籍上の性別は女性ですが、自身を特定の性別だと自認していない“FtX”であり、当時は“着たい服が着られない”という理由で成人式を欠席しました。

「(成人式に)女性は絶対振り袖を着るものと思っている人が親世代にも多い。おじいちゃん、おばあちゃんもそれを期待しているからというので、スーツが着たくても言えないという相談も多いです。服装だけではなく、人や雰囲気含めて成人式って大事なんだろうなと思ったので、そういう場所をつくれたらいいなと思いました」

自身の経験や当事者の声から生まれた『SEIJIN-SHIKI』。みんなが生きやすい世の中に変えていくためには“知ってもらうこと”が大切だといいます。

「成人式という日本の文化は大事にしていきたいし、みんなが一生思い出に残るようなイベントであるべきと思います。今までの成人式とちょっと違うという部分を、“これがいまどきなのかな?”って上の世代の方々に知ってもらえるだけでも全然違うかなと。ちょっとずつ考え方から変わっていってくれたらうれしいなと思います」