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服装から「みんなが生きやすい世の中に」 “自分らしい”成人式に込めた思い 

2023年1月9日 20:40
服装から「みんなが生きやすい世の中に」 “自分らしい”成人式に込めた思い 
『SEIJIN-SHIKI』参加者

女性体型用のメンズスーツを手がけるKeuzesの代表・田中史緒里さん(28)が、東京・渋谷区で、新成人のためのイベント『SEIJIN-SHIKI』を開催しました。“自分らしい服装で大切な節目の日を楽しんでほしい”との思いで行われ、2021年から23年に新成人を迎えた約120人が集まりました。参加者のほとんどは、LGBTQなど性的マイノリティーの方だといいます。田中さん自身も、戸籍上の性別は女性ですが、自身を特定の性別だと自認していない“FtX”です。

■「周りの人の目が…」買いに行けなかったメンズスーツ

田中さんにお話を聞くと、イベント開催の背景には“着たい服が着られない”という経験があったといいます。

「当時、かっこいいメンズスーツが着たいと思った時に、地元・茨城の家の近くのお店に行こうと思ったのですが、そこには知り合いのお父さんが働いているとか、絶対知り合いの人がいると思ったら、女の子である私が“メンズスーツ欲しい”と言った時の周りの人の目とか、店員さんがどういう対応してくるか、そういう想像をしただけで(嫌になり)買いに行けなかった」

結局、田中さんは成人式を欠席。当時は“着たい服さえ手に入れば成人式には行けたのに”と思っていましたが、会社を立ち上げ、お客さんと会話を重ねるうちに気付きがあったそうです。

「成人式に着ていきたいからスーツを作りに来てくれるお客さんが多いんです。話していると、服装はスーツ作ったら解決して、自分らしい服装で成人式は出られる、だけど当日周りにどう思われるかわからないから不安だし、自分らしくいられるかというと別の問題。スーツを買ったけど勇気が出ず、成人式に出られなかったという方も何人か見てきました。自分は着たい服装があれば出られたなって当時は思っていたけれど、当日その場に立った時に違う不安みたいなのがきっと出てきてたんだろうなって気付いた部分があって。服装だけではなく、人や雰囲気含めて成人式って大事なんだろうなと思ったので、そういう場所をつくれたらいいなと思いました」

■自分らしさの縁をずっとつなげて…「忘れられない日」にしてほしい

イベント開催にあたり特に大事にしたというのが“雰囲気作り”です。参加者同士の歓談の時間が多く設けられ、ポートレート撮影のコーナーや、1年後の自分やパートナーなどへ手紙を書くコーナーなどが設置されました。

「結局、当日自分らしく成人を迎えられるのかどうかに行き着くので、イベント会場の雰囲気はすごく気にしました。全国から、きょうという日がなければ出会うはずのない、いろんな同世代の人が集まってきているから、きょうだけではなくずっとつながるご縁にしたいなというのは、すごく考えて交流の時間をすごく設けました。根本では成人式に対する不安がある人が参加してくれていたので、いかに忘れられない日にするかは、本当にみんなで考えました」

その甲斐もあって、当日会場では、その場で交流を深め一緒にイベントを楽しむ方が多く見られました。

■自分らしい格好で過ごすことが、誰かの“知るきっかけ”に

一方で、一般社会では当事者に対してどんな声をかけていいのか、戸惑う人も少なくないといいます。

「当事者より、当事者じゃない人の方が考えてくれているなと思います。私の友達は当事者じゃない人の方が多いのですが“これ言ったら傷つく?”とか“なんて言ったら喜ぶかな?”とか言われるんですけど、私としては気をつかっている感じが見えなければいいって思っています。性別どうこう以前に友達間にいじりってあるし、当事者かそうじゃないかでかける言葉ってあまり違わなくていいんじゃないかと思います」

自身の経験や当事者の声から生まれた『SEIJIN-SHIKI』を成功させた田中さん。みんなが生きやすい世の中に変えていくためには“知ってもらうこと”が大切だといいます。

「ブランドを始めたからといって、世の中の考え方を変えられるのかと言ったらまだまだ変えられない。みんながちょっとずつ自分らしい格好で外歩いたりとか、その外歩いたところを知らない人が見て、こういう人がいるんだって知る機会が増える。ちょっとずつちょっとずつ日常の生活を自分らしくすることで、周りの知らない人の知るきっかけになる。みんなで世の中を生きやすい方向に変えていけたらいいねって伝えたいです」