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総額1兆円――国民負担も? 「ゼロゼロ融資」回収困難ナゼ コロナ前から3割増…返済の見込みない“ゾンビ企業”にも貸し付け

2023年11月9日 9:35
総額1兆円――国民負担も? 「ゼロゼロ融資」回収困難ナゼ コロナ前から3割増…返済の見込みない“ゾンビ企業”にも貸し付け

コロナ禍で政府系の金融機関などが、応急措置的に実質無利子・無担保で始めた「ゼロゼロ融資」。貸し出された約19兆円のうち、約1兆円の回収が難しく、国民負担になる可能性があることが分かりました。その背景や今後の行方について考えます。

■「ゼロゼロ融資」導入時の状況は

有働由美子キャスター
「政府系の金融機関などがコロナ禍で始めた『ゼロゼロ融資』などで企業に貸したお金のうち、約1兆円の回収が難しく、我々の負担になる可能性があることが分かりました。このゼロゼロ融資が導入されたのは2020年3月で、当時は大変な時期でした」

「4月には東京都の小池知事が『ステイホーム。お家にいてください』と呼びかけました。緊急事態宣言が出され、国民には外出自粛が要請されました。その後、飲食店には酒類の提供自粛、夜8時までの時短営業なども要請されました」

「お店や中小企業をはじめ、『大変』という声が多く聞かれました」

■応急措置的に…実質無利子・無担保

小栗泉・日本テレビ解説委員長
「そうした中で導入されたゼロゼロ融資は、金融機関が経営が苦しい中小企業のために実質無利子・無担保でお金を貸すという、応急措置的に始まった制度です」

「これで多くの企業が助かりましたが、返済が本格化した今、倒産などで事実上回収できなくなっているお金が1943億円。返済が遅れていたり、倒産の可能性があったりして回収できなくなる恐れがあるのが8785億円です。合わせて約1兆円となっています」

■実質破綻状態「ゾンビ企業」にも融資

有働キャスター
「倒産してしまうから回収できない、という企業もあるということですね」

小栗委員長
「その1つが、問題になっているいわゆる『ゾンビ企業』です。普通なら融資されない、実質破綻状態だったのに、お金を借りて事業を続けている企業のことです。2021年度で約18万8000社あり、コロナ前の2019年度から約3割増えました」

「当時、ゼロゼロ融資は企業を助けるためにスピード重視、ほぼ審査なしでお金を貸していたので、返済の見込みがないゾンビ企業にも貸してしまいました。これが、回収が難しくなっている要因の1つとみられています」

■今後は…金融機関が個別に企業と交渉

有働キャスター
「当時は仕方なかったと思いますが、1兆円はどうしていくのでしょうか?」

小栗委員長
「今回はあくまでも会計検査院が現状をヒアリングした結果で、実際には今後、金融機関が貸付先の企業と個別に交渉をしていくことになります」

■辻さん「審査精度よりスピードだった」

「経済評論家の加谷珪一さんは『約19兆円を融資して 1 兆円の焦げ付きというのは、一般的な融資割合からすると多いが、緊急事態の融資としてはずさんとまでは言えない』との見方を示しています」

「その上で加谷さんは『ただ、損金が国民負担になる恐れがあるので、今後金融機関は粘り強く企業に経営を改善するよう促して、可能な限り資金を回収するべきだ』と提言しています」

辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「コロナ禍の状況を振り返ると、審査の精度を上げるよりもとにかくスピードが必要なくらい、社会全体が緊急事態だったなと思います。私自身もいち経営者として、その苦労は本当に痛感しました」

「その時期を思うと、逆に19兆円のうち 90%以上の金額がきちんと返済される見込みとも言えるので、この融資によって助かった人たちもそれだけいた、とも言えると思います」

有働キャスター
「本当に困った人や会社を助けるためのものでしたから、不正や悪用があれば徹底して正す。そして次のためにも、体力が回復した会社からは返してもらう努力を続けてほしいです」

(11月8日『news zero』より)