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年金支給額「2.7%」UPも──“実質目減り”のワケ 6月から森林環境税…都市部でも?配分と使い道は【#みんなのギモン】

2024年6月1日 12:51
年金支給額「2.7%」UPも──“実質目減り”のワケ 6月から森林環境税…都市部でも?配分と使い道は【#みんなのギモン】
定額減税が始まり、病院の診察料や電気料金といった負担が増えるなど、6月からはさまざまな変化があります。その1つが年金で、支給額は昨年度より増えますが、手放しで喜べるわけではなさそうです。「森林環境税」として1人1000円の徴収も始まります。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「6月から変わる 新たな負担も」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●年金の支給額 実質目減り?
●森林のため新たな税金

■定額減税の一方で…負担増も続々

近野宏明・日本テレビ解説委員

「もう今年の折り返し点も近づいてきて、あっという間で驚きです。6月からはいろいろ変わります。定額減税で1人4万円減税される一方で、負担が増えるものもあります」

「一部の病院などでは初診料や再診料が変わります。40歳未満の勤務医や事務職員らの賃上げに伴うもので、賃上げをした医療機関では3割負担の人で初診料が27円、再診料が12円、引き上げとなります」

「電気料金は、6月に使用した7月請求分で大手電力会社の10社全てで値上がりします(『規制料金』メニュー)。東京電力の場合、標準的な使用量の家庭で前の月から392円上がります」

鈴江奈々アナウンサー

「これから本格的に暑くなってくるとエアコンを使う頻度が増えますし、電気代が上がった分、ちょっと他のところで節約しなきゃと思うんですが、他も値上がりしてますからね」

■年金額が改定、初支給は6月14日

近野解説委員

「まずは年金の話からです。今年度の年金の支給額は、昨年度と比べ2.7%引き上げとなります。これは1992年以来、最も大きい引き上げ幅です。国民年金では68歳以下の人が月1750円増えて6万8000円に。69歳以上の人は、月1758円増えて6万7808円となります」

「厚生年金では、元会社員と専業主婦の夫婦2人分のモデル世帯では月6001円増えて23万483円となります。この改定が反映され、初めて支給されるのは6月14日です」

■年金の支給額が決まる仕組みは?

近野解説委員

「額面では増えていますが、もろ手を挙げて喜んでいいかというと、少し微妙なところです。年金の額は、前の年の物価や賃金に連動して決められています。そのため物価が上がれば年金も前年度より増えるという仕組みになっています」

「ただし、その伸び率は物価や賃金の伸び率よりも多少低く設定されます。これは現役世代の保険料の負担がどんどん増えるのを抑制するための措置です」

「つまり、年金の額としては増えてはいるものの、物価の上昇よりは低い。昨今の物価上昇と照らし合わせて考えると、実質的には目減りしている状況と言えます」

森圭介アナウンサー

「賃金についても、賃上げに成功している企業もありますけど、物価高のペースの方が速いので実質賃金が下がっている。それにも近いようなケースですね」

近野解説委員

「同じような構図です。制度上そうなっているので、仕方がないと言えば仕方がないんですが…」

■住民税と合わせ年間1000円徴収

近野解説委員

「新たに税の負担も増えます。6月から1人あたり年間1000円、住民税と合わせて徴収されるのが『森林環境税』です。使い道は、その名の通り国内にある森林の整備です」

「日本は国土の約7割を森林が占める森林大国ですが、それゆえにさまざまな問題があります。所有者や境界が分からない森林が増えていること、林業の担い手が不足して森林が荒れてしまっていることなどです」

「こういうことを背景に、きちんと森林を整備できない課題を抱える自治体は非常に多いです。それを、国民から徴収した税金も使ってなんとかしようというわけです」

■国が集め、各自治体に見合った額を分配

刈川くるみキャスター

「森林を守るのは大事だなと思います。これは住んでいる場所などは関係なしに、みんな徴収されるものなんですか?」

近野解説委員

「みんな住民税を納める人は徴収されます。対象は約6200万人で、×1000円で約620億円の税収が見込まれます。昨年度まで1000円徴収されていた復興特別税がちょうど終わる時期だったので、継ぎ目なくぬるっと森林環境税に変わったのではと指摘する声もあります」

森アナウンサー

「手取りが変わっていないから気付かれづらいけれども、名目は全く違うものになっていたということなんですね?」

近野解説委員

「住民税と合わせて徴収されますが、集めたその自治体で直接使うわけではなく、いったん国が全部集約して各自治体に見合った金額を分配していく形になります」

■「森林環境譲与税」の使い道は?

近野解説委員

「森林整備のための交付金はこれまでもあり、『森林環境譲与税』として2019年度に始まり、国庫から自治体に既に配布されています」

「静岡・浜松市へは2022年度に約3億2500万円が交付されました。使い道は森林保全の他、森の中での作業がしやすいように道を作ったり、地元の木材を使った住宅を建てる時に助成金を出したりとさまざま。市は同年度までの国の交付金を全て使い切ったそうです」

忽滑谷こころアナウンサー

「浜松市は森林が多いということで分かりますが、東京など都市部にも交付されるということなんですよね?」

■渋谷区は交付額の約1割のみ使用

近野解説委員

「なんとなく森林保全というとそういうイメージですが、ほとんど森のない都会にも交付されます。東京・渋谷区に聞きました。5年間で総額約9900万円が交付されましたが、そのうち使ったのは約900万円。ただ都市部はもともと保全すべき森林は少ないです」

「そのため渋谷区では公共施設を建て替える際に国産の木材を使い、その費用に充てられたそうです。残ったお金は、今後老朽化した建物を建て替える際に国産木材を使用するため、今は貯めているとのことです」

「実際、国内では昔より木材が売れないため林業の担い手が減り、その結果森林が荒れるという問題もあります。自治体であれば、まとまった量の木材を買って使ってくれるというメリットはあるようです」

森アナウンサー

「ちょっと納得いかない部分もありますけど、必要だから集めるんじゃなくて、集めてから必要なものを無理くりひねり出しているようにも聞こえちゃうんですけど…」

■森林が多い地域への配分を手厚く

近野解説委員

「どの市町村にどれぐらい交付するか。その配分は森林の面積や人口規模などを基準に計算されています。ただ今年度からは、森林が多く、もっと必要としている地域があるので、そこにより多く交付してくれないかという声がありました」

「私の知り合いの市長に聞きましたが、林野庁などに働きかけた結果、今年度からはより配分が手厚くなる、森が多いところに多少手厚くなるように見直されたそうです」

鈴江アナウンサー

「知り合いに林業をやっている人がいて、切り出しから大きな建物を建てるまで一気通貫でやることで収益性が上がったという話を聞いたことがあります。こういった新しい税が林業そのものの収益性を上げて競争力を高めることにもつながるといいなと思いました」

近野解説委員

「直接的な保全だけではなく、めぐりめぐってということですね。この制度は使い道は公表しなければならないとされています。税なので、徴収する以上は配り方と使い方を絶えず検証して、納税者にとってより納得のいく仕組みに高めてほしいものです」

(2024年5月31日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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