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「新500円硬貨」浸透しない理由とは? 多額のコストかけても2年後には…

2022年4月11日 20:51
「新500円硬貨」浸透しない理由とは? 多額のコストかけても2年後には…

昨年、500円玉硬貨が21年ぶりに新しいデザインに変更されました。従来の物とは構造が変わり、偽造を防ぐ加工も強化されました。流通が始まってから5か月以上がたちましたが、いまだに使えない場所が多くあるということです。なぜなのでしょうか?

     ◇

東京や神奈川を走る東急バスの運賃箱に「新500円硬貨」を入れてみると、ちゃんと認識されましたが、実は、最近まで新500円硬貨が使えないバスもありました。対応していなかった理由について、東急バスは次のように説明しました。

東急バス運輸営業グループ 石洋一課長
「比較的、車両数が多いということでは、それだけ多額のお金が、コストがかかる」

去年11月に流通が始まった新500円硬貨を使えるようにするには、数千万円の費用がかかるということです。当初、東急バスでは対応を見送りましたが、乗客が支払いに困るケースも想定されるため、「先月末までに、約900台全てのバスで、新500円硬貨を使えるようシステムを改修した」と説明しています。

東急バス運輸営業グループ 石洋一課長
「『困ってしまう』『乗れなくなってしまう』ということもありますので、公共交通機関としては、そういう状況をなるべく作りたくない」

     ◇

流通開始から5か月がたった新500円硬貨ですが、「多額のコストをかけて、対応するかどうかは難しい判断だ」といいます。

全国に店舗展開するコインランドリーでは、新500円硬貨の流通が始まった昨年11月1日には、まだ新500円硬貨を使えるようにするかどうか迷っていました。

OKULAB マーケティングマネージャー 金子創さん
「(将来的に)お客様の要望が高かったりとか、(新500円硬貨の)流通量が増えてきたのであれば、対応していかなければいけない」

11日、店の洗濯機に新しい500円硬貨を投入してみると、使えず戻ってきてしまいました。流通後にオープンした店舗以外では、まだ新500円硬貨用に切り替えていないということです。

OKULAB マーケティングマネージャー 金子創さん
「おそらく、あまり(新500円硬貨の)流通が広く出回っていないので、今のところは、なんとかやらせてもらえているかなと。(対応してほしいという)お声は何件かいただくところもあるが、変えるのもお金がかかりますので、費用とのバランスを見ながら、慎重に判断していきたい」

お客さんからは、「不便に感じる」という声も聞かれました。

利用者
「(新500円硬貨は)持ってるんですけど、できるだけコンビニとかで使わないと、こういうところで全然使えないので」

     ◇

そもそも、新500円硬貨はどれほど浸透しているのでしょうか。東京・表参道で街の人に聞きました。

20代
「2枚もってます。あんまりまだ見ないかなと思って、ちょっと記念にとっといてました」

記念に手元に持っているという声や――

母(60代)
「(見たこと)あります」

父(60代)
「1回ぐらいは(見た)」

娘(30代)
「私はないです。早く手元に来てほしい」

「見たことがない」という人もいました。

――新しくなったの知ってますか?

10代
「知りません」

中には、新500円硬貨の存在すら知らなかったという人もいました。また、新500円硬貨を持ってはいたものの、使えなかったという声もありました。

60代
「自動販売機では(新500円硬貨が)、使えないことがわかったので、別の人から(以前の)500円玉を借りて」

     ◇

なぜ、新500円硬貨はなかなか浸透しないのでしょうか。

東京・大田区で、飲食店やテーマパークなどの券売機の販売やメンテナンスを行っている「エルコム」からは、意外な話も聞かれました。約4割の顧客が「新500円硬貨への対応を考えていない」ということです。

その理由について、エルコム・川浪武盛専務取締役は、「2024年に新紙幣が発行されますので、そのときにまた別途費用がかかってしまう。今、購入しても、新紙幣に対応ができている機械ではありませんので、また、そこで機械の改造なりが必要になるので、そこで『ちょっと待つ』というお客様が一定数いらっしゃいます」

エルコムによると、費用は部品交換でも1台5万円以上、券売機を買い替えると50万円から200万円ほどかかるため、2年後に控えた新紙幣の発行を見据え、改修や買い替えを待つ傾向がみられるということです。

     ◇

東京・千代田区のそば店「肥後 一文字や」でも、新500円硬貨への対応を迫られています。

肥後一文字や 山口信雄店主
「新500円を持って、買いに来られるお客様増えましてですね、それで対応をいろいろこちらで考えております」

券売機は、部品の交換だけでは新500円硬貨は使えず、約350万円かけて新しい券売機を購入する必要があります。

肥後一文字や 山口信雄店主
「もう大変な額です。本当困ったもんです。店を閉めるか、もう本当に頭悩ませてます」

そこで、店では新しくなる前の500円硬貨を常に用意し、お客さんが持ってきた新500円硬貨と、その都度、交換して対応しているということです。