学歴より行動量、ノルマなしの組織作り 2
「エスキュービズム」社長・薮崎敬祐氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つめのキーワードは「アイデアは自分で出すのではなく人の欲しいモノを作る」。薮崎社長のモノ作りの哲学に迫る。
■ファミレスの“コールベル”をIT化
――まずは、実際に去年発売された商品を見せてください。
「ヌードー」という商品になります。これは店舗で使うもので、ファミリーレストランなんかでコールベルというのがありますが、あれをよりIT化した製品になります。普通は、お客さんが「ちょっとすいません」という形で店員さんを呼んで、その後、用件を伝えるわけですが、例えばそれが「水が欲しい」という要望であれば、一度帰ってまた水を持って行くという作業が必要になります。これでは時間がかかってしまうので、その二度手間を解決しようという商品です。
では、「ヌードー」を使えばどうなるか。例えばお水が欲しいときは、「水」のマークが入った部分を表にした状態で四角柱型の送信機を倒します。そうするとリストバンド型の受信機(店員側)に「お水」が表示されて振動します。これで、わざわざ聞きに行かなくてもお水を出せると、そんな商品です。
■数十万という低価格で開発
――手間が省けてとても便利ですよね。どういう発想で生まれた商品なんでしょう。
これは元々eコマースのシステムをやっているときに、そこにモノを売るお客さんが多かったんですけども、店舗で使える在庫を一緒にしたいので、POS(販売時点情報管理システム)が欲しいと。それでiPadを使って、インターネットのサイトと、実際の店舗のレジをくっつけたんですね。
そうすると今度はPOSを飲食店さんが欲しいというので売ったわけですね。そうして、飲食店さんの人不足などの悩みを聞いていると、そこから解決できるものはないかと、この商品の前に「おかわりコースター」というものを作って発売しました。それが「ヌードー」の前身ですね。
――この商品の開発にどのくらいの時間とコストをかけたんでしょうか。
その「おかわりコースター」が元々は、グラスを置くと「おかわり」という意味で“ピンポーン”と鳴るだけの商品を作りまして、これをちゃんと機械を開発すると数百万かかると思うんですが、3Dプリンターで簡単なものを使って、それでとりあえずお客さんに使ってもらおうというところで、本当に数十万円というレベルで商品を開発しました。
■7割できたらまず使ってもらう
――じっくり考えて作るというよりは、まず作ってみようというような勢いも感じますが。
これはITの世界では常識というか、結構みなさんがやっている手法です。ITは後からでも修正がきくんですね。ですから、まずは出してみて改善を繰り返すと言われていますけれども、このモノ作りの世界って、やっぱり出して不具合があると、リコールの問題になったりと、結構大変なので絶対ミスがないところまで作ってしまうんですね。
そうするとなかなか発売できなかったりするので、ちょうどその習慣を使って、ITの手法で、まず簡単なものを出してみると。それを改善するというような手法をとっています。
――だいたいどのくらいまでできたら商品にするんですか。
7割ぐらいができた段階で、まずお客さんに使ってもらって、意見を聞いて、そこから作るということになります。
■ニーズを積み重ねていく
――開発にかける時間も短い、コストも安いとなると、販売価格も安くできるということですか。
そうですね。なので、いちばん大きいのはやはりITですと、先に何億もかけて投資してしまうと、価格が高くなるし、商品の場合は在庫が多くなってしまうんですね。なので、うちの場合は、最初に売れない在庫を作るのではなくて、売れるものが見つかるまで在庫をあまり持たないという戦略でやっています。
――最初のキーワードで出てきた「アイデアは自分で出すのではなく人の欲しいモノを作る」がポイントでしょうか。
そうですね。ベンチャーって「目の前のお客さんに応えるという方法」と「まだないサービスを作る方法」の2つあると思っていまして、後者の方法は実はあまりとっていなくて、お客さんが欲しいと言っているものをきちんと提供して、それを積み重ねているといつのまにか、すごい商品になっていて、1番になっていたと。